2015年 12月 28日
2015年12月28日 JWAVE Jam the World 日韓慰安婦問題合意について浅羽祐樹教授に聞く |
ナビゲーター:高瀬毅
ニュースルームアナウンサー:木次真紀
ゲスト:新潟県立大学 大学院 国際地域学研究科 浅羽祐樹教授
高瀬 それでは今日のニュースをチェックします。Today’s Headline. ニュースルームの木次真紀さんとお伝えします。
木次 はい、それではお伝えします。岸田外務大臣と韓国の尹炳世外相は、きょう午後ソウルで会談し、従軍慰安婦問題の決着で合意したと明らかにしました。会談後の共同記者発表で、岸田大臣は、「軍の関与で多数の女性の名誉を傷つけ、日本の責任を痛感している」とし、「安倍総理大臣が心からのお詫びと反省を表明する」と述べました。また、元慰安婦への支援として、韓国政府が財団を設立し、日本政府が10億円を拠出して日韓両政府が協力して事業を行うとしました。両外相は、こうした措置が着実に実施されることを前提に、慰安婦問題が最終的・不可逆的に解決されることを確認すると述べました。
高瀬 いや、これは驚きましたね。色々な動きがあって日韓がこの問題に関して妥結を図ろうと言う動きがあったことはもう伝えられていたんですね。しかし、かなり内容的には、今まで安倍総理大臣が言っていた慰安婦問題についてのコメントよりもかなり突っ込んだというか、日本側が相当にこの問題に関して反省をし、そして謝罪をするという、そういったところまで踏み込んだ内容になっている。それによって韓国側もこれをきちんと受け止めて、これ以上この問題に関して韓国側から色々な批判を出さないようにしていこうという、そういった趣旨の内容にどうやらなったということなんですよね。
で、これまでは産経新聞の前ソウル支局長の無罪が決まりました。それから日韓の協定の問題がありましたけれどもね、請求権協定、これも違憲訴訟、韓国の裁判所が却下しているということで、何か大きく動いているなという印象はありましたけどね、これだけのものが本当に妥結するということは、これは日本と韓国だけの問題ではないという感じがしますね。どうも後ろにやはりアメリカの影がちらついているわけですよね。
何日か前の読売新聞が書いているんですけれども、アメリカ政府が日韓の妥結を評価する声明を出すなどして、国際的に決着したことを確認する案が出ているということなんですよね。こういうことを考えると、これ本来二国間の問題なのでアメリカが本来タッチする話ではないんですが、この問題に関してアメリカが声明を出す方向だということは、つまり今回の妥結はアメリカと日本と韓国、この三者の合作ではないかというような印象があります。
ではなぜそんなことをするのかというのは、もうすでに色々なところから意見も見方も出ていまして、やはり中国が台頭してきている、その対中関係をアメリカが非常に意識していて、そんな中で日韓関係がゴタゴタすると、対中の、中国に対してのアメリカのスタンスが非常に難しくなってくると。しかも今、貿易で韓国は非常に中国側と接近しているということもあったわけですね。そういった外交的な様々な背景もあるんだろうという気がしますが、もっと何か大きなものがあるのかもしれない。その辺はこれから色々と出てくるんだろうと思いますが、この問題に関しては、このあと、cutting edge で詳しくお伝えしたいと思います。
(他のニュース省略)
高瀬 高瀬毅がナビゲートしています、JWAVE Jam the World。続いては cutting edge のコーナーです。Today’s headline でもお伝えいたしましたとおり、今日、韓国ソウルで岸田外務大臣と韓国の尹炳世外相が会談しまして……失礼しました。久しぶりにやるとこういうことが起きるんですよね。もう一度行きましょうね。
高瀬毅がナビゲートします、JWAVE Jam the World、このあとは cutting edge です。歴史的な合意となりました日韓外相会談のポイントについて、新潟県立大学大学院 国際地域学研究科教授の浅羽祐樹さんにお話をお聞きします。
高瀬 高瀬毅がナビゲートしています、JWAVE Jam the World, 続いては cutting edge のコーナーです。Today’s headline でもお伝えいたしましたとおり、今日、韓国ソウルで岸田外務大臣と韓国の尹炳世外相が会談しまして、いわゆる従軍慰安婦問題で最終妥結しました。日本と韓国の歴史において大きな意味を持つ日になりましたが、これですべてが解決したと思っていいのでしょうか。
今夜は日韓関係に詳しい、新潟県立大学大学院 国際地域学研究科教授の浅羽祐樹さんに電話をつないでお話をお聞きします。浅羽さん、こんばんは。
浅羽 こんばんは、リスナーの皆さん、こんばんは。
高瀬 どうぞよろしくお願いいたします。
浅羽 こちらこそよろしくお願いしまーす。
高瀬 今、浅羽さんはソウルにいらっしゃるということなんですが。
浅羽 そうなんです。たまたまなんですけど、偶然、現場にいます。
高瀬 ああ、そうですか。早速お聞きしたいんですがね、これは本当に非常に大きな日韓関係の進展につながるニュースだと思いますが、そちらの韓国での反応はいかがでしょうか?
浅羽 非常に大きな関心を持ってニュースで、最初のニュースからずっと続けて報じられてますね。
高瀬 そうですか。
浅羽 そうですね。
高瀬 どんな感じですか、これは。好意的でしょうか。
浅羽 トーンはですね、満足100%の満足、満額回答ではないんだけれども、まあ納得できるというのが大部分だと思います。ただですね、当事者である慰安婦の方々の反応は分かれていまして、一部、満足はできないけれども、まあ一所懸命韓国政府がやってくれたので受け入れると、従うという方もいますし、法的責任の部分が認められなかったので、そんなものは受け入れれないという方もいますね。ですので、当事者の反応が割れています。
高瀬 なるほど。まあ、ここまでずっと色々この問題で揉めてきましたから、そう簡単には全部納得ということにはならないんだと思いますが、しかし、今回かなり日本側も踏み込んだ内容の話を出しましたですね。これはこちらのほうのニュースでは、おおまかなところ伝わってきていますが、ちょっと改めてお聞きしたいんですが、これは日韓外相会談で、どんな内容で合意したというふうなことなんでしょうか。
浅羽 双方、政治的なリスクを取って、最終決着をしたということを国内外に広く宣言したということですね。で、合意の内容ですけれども、日本側がまず法的責任ということは認めなかったんですが、政府として責任を痛感すると。で、安倍総理が内閣総理大臣として反省とお詫びを表明すると。で、韓国政府が設立する財団基金に日本政府の公金で10億円ほど支出するということです。で、それを受けて韓国政府がこの問題が最終的かつ不可逆的に、もう後戻りできない形で解決されたということを確認するということを宣言しました。
高瀬 なるほど。これは安倍さんというか、まあ、安倍政権と言っていいと思いますけどね、ここまでの内容を出してきたというのはどういうことが考えられますか。
浅羽 日本側とすれば譲歩は譲歩なんですけれども、法的責任という部分は呑んでいないと。政府として責任を痛感という形で、1965年で法的には決着、解決済みだという立場には何もゆらぎがないんですね。ですので、日本側としてはそこの部分は守っているということです。
高瀬 なるほど。これは日韓請求協定ですね。
浅羽 そうですね。65年の日韓請求権協定で、個人請求権も含めてすべて終わっているというのがこれまでの日本政府の一貫した立場で、今回もその点は貫徹したということです。
高瀬 なるほど、なるほど。しかし、やはりここまで韓国側も今回の内容についてかなり前向きに捉えているということなので、これは大きな進展と見ていいんでしょうかね。
浅羽 いや、大きな進展ですね。日韓関係で誰にとっても最大のしこりと思われたのが慰安婦問題で、これがこうした形で最終的かつもうもどれない形での解決ということを広く宣言したわけですから、これでこの問題が再論される、蒸し返されるという可能性は、防ぐことができたということだと思います。
高瀬 なるほど。日本としては、これ、最終決着をさせるということだったと思いますが、その担保は取れたというふうに見ていいんでしょうかね。
浅羽 そうですね。まず岸田外相と韓国の尹外相がともに同じ言葉で、最終的かつ不可逆的な解決でこの問題が終結したということを宣言していますし、韓国側が設立する基金に日本側がお金を出すということなので、韓国側は言ってみれば試合のジャッジとか観客ではなくて一緒にプレーヤーで、この問題が最後、当事者も納得行く形で終えることができるということにコミットさせるわけですよね。この二点が、今日会談で発表されましたし、おそらくもうまもなくアメリカ政府が今回の合意、英語ですぐ出たんですけれども、歓迎する声明を出すんだと思います。駐日イギリス大使は早速、暖かく歓迎するということをツィートしましたね。
高瀬 そうですか。
浅羽 もっとオフィシャルな形でアメリカ政府が声明を出すんだと思います。それで、国内外でコミットメントを確証して、最終的に決着だということを担保するということだろうと思います。
高瀬 なるほど。今、アメリカの話が出ましたが、これ、数日前も読売新聞が1面にちょっと書いたんですが、アメリカが今回の日韓の妥結を受けてそれを評価する声明を出していくという、これはやっぱりアメリカの、まあ、何というか、色々働きかけがあったというふうに見たほうがいいんでしょうか。
浅羽 まあ、そうですね。間違いなくそのアジアへの回帰の中で同盟国である日韓、アメリカにとっての同盟国である日韓が連携して米日韓という形で連合して動くことを期待しているわけですから、日韓関係がこの問題でうまく進まなかったのはアメリカからすると台頭する中国に対して米日韓で連携して対処できないということで、中国から付け入る隙を与えてしまうことになるので、そうした戦略的な弱みというのがこれで相当程度修復されたというふうに見るんだと思いますよ。
高瀬 相当色々強い働きかけがあったというふうに考えていいんでしょうかね。
浅羽 考えていいと思いますね。何度も骨折りをして、実際、去年は米日韓の形での首脳会談も斡旋するわけですから、水面下で働きかけていたのは間違いない。で、もうまもなく歓迎の声明が出るんだと思います。
高瀬 なるほど。さきほど、いわゆるこれは、法的な責任は日本側としては認めてないという、そういう意味では従来から言ってきたことは変わっていないということだったんですが、ただ、その文言を見ると、かつて河野談話というのが出ましたが、この時、当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題だと、従軍慰安婦として幾多の苦痛を経験され、心身に渡り癒しがたい傷を負われたすべての方々に対応し、心からお詫びと反省の気持ちを申し上げるというふうに言っているんですね。で、今回日本側が出してきたこの文言ですね、ほとんどここと同じように見受けられるんですが、これはかなり、安倍さんが今まで言ってきたことをだいぶ変えたのかなという印象もあるんですが、そのへんはどんなふうに……
浅羽 河野談話の文言をそのまま踏まえているところあるんですね。河野談話を継承するという、歴代内閣の談話は継承すると言ってましたけど、河野談話は総理談話ではないですから、その文言が今回入って、軍の関与を明記して、で、「強制的に」という言葉も入ってますので、まあ、韓国側はその部分をもって事実上強制連行の部分が認められたというふうにみなして、で、政府の責任を痛感ということでお詫びをして公金を支出するということなので、併せてパッケージで見ると、事実上の法的責任だというふうに韓国国内では説明すると。で、まあ、ただ日本側からすると、法的責任というワーディングにはなっていませんので、従来の立場は何も崩れていないということで、それぞれ都合よく、「創造的曖昧さ」というふうに韓国メディアでは昨日から下地作業が進んでましたけれども、それぞれが都合よく解釈して、国内で説明して、同意を得るということなんだろうと思います。
高瀬 これ、「創造的曖昧さ」って、いわゆるクリエイティブの創造という意味ですか。
浅羽 そうですね、はい。
高瀬 となると……
浅羽 100%、満額で満足するということになると、取れないわけですよ。韓国側の法的責任ということであれば日本側はそもそも飲めないですし、何もしないというふうになると韓国側も折り合いをつけることができないので、まあ、双方曖昧さを残しつつ、従前の立場よりかは進んだとか守ったというふうに言える余地をお互いに認め合ったということですね。
高瀬 なるほどね。それから、先ほど、元慰安婦の方たちの反応も分かれているということなんですが、これはどういうふうに考えればよろしいんでしょうか。
浅羽 ここはなかなか難しいんですけれども、何をもって解決、決着かというので、これはやはり政治的な政府間での決着で、それを国内外で合意を取っていくということで、大半の国民からすると、もうこの問題でこれ以上という部分はあるんだと思いますが、慰安婦のそのひとりひとりにとってみれば、完全に満足できなければ認められないという人もいるでしょうし、やむを得ないという人もいるので、で、政治的には国民世論がこれで決着したというふうにみなすかどうかだと思いますね。
今日のこれまでの韓国メディアの流れからすると、まあ、満足はできないけれども、不十分ではあるけれども、まあ納得できる水準であるというふうな論調ですので、そういう論調が明日、新聞の社説なんかでこぞって出ると、当事者からすると納得してなくても、まあ、外堀、内堀が埋められる形で、決着というふうに広くみなされることになるんだろうと思います。不本意な方は当然残るとは思いますが。
高瀬 なるほど。これ、朴大統領はなかなか色々政権の支持率も上がらないとか、色々なことで苦しんできたと思いますが、今回のことで韓国の統治というか、政治のほうもうまい具合に流れていくというような感じなんでしょうかね。
浅羽 これは岸田外相を韓国にやる前に、安倍総理が責任はすべて私がとるというふうに述べていましたけれども、安倍総理以上のリスクがあったのは朴大統領で、国内から反発も十分予想される中で、この線で踏み切ったわけですよね。当事者の中からも反対の声がありますし、最大野党は法的責任を認めなかったので受け入れることはできないという声明を早速出していますけれども、それでも朴大統領は踏み込んで国内を抑えることができるか。で、安倍総理としては、あとは韓国国内の調整問題であって、政府間の手打ちはもう終わったということはもう第三国も認めているという形にするんだろうと思います。
高瀬 なるほど。この慰安婦問題、ひとつの大きな山を越えていくという、そういうふうに見てもいいような感じを受けましたけれども、しかし、これでじゃあ全部いいのかと。何か色々他にも問題というのは出てこないんでしょうか。
浅羽 あとはディテールの詰めがあるので。基金を設けて、どのように運営していくのか。10億円出資して、具体的な尊厳を回復する措置を一緒に取っていくということなんですけど、お金を配る時にそのお金の性格をどのように名前をつけて手渡すのかという時に、贖罪金なのか、お詫び、償い金なのか、はてまて賠償金なのかということで、それは如何なる責任を認めてその責任に基づくお金ということに連動するので、政府として責任を痛感するというのが合意されたワーディングなので、それでどこまでの表現を、日本語と韓国語と英語で出せるのか、というそのディテールの詰めはまだ残っていると思います。
高瀬 なるほど。これ、歴史認識の問題のひとつの象徴的な問題だったと思うんですけどね、慰安婦問題というのは。
浅羽 そうですね。
高瀬 他にもしかし、慰安婦問題以外に、植民地支配の問題とか色々あるわけですが、この辺のところにも影響を与えていくんでしょうか。
浅羽 まあ、慰安婦問題に限ってもうひとつあって、少女像の行方がどうなるのかというので、直ちに撤去はされないんだと思いますが、日本がその財団に対する出資をしたぐらいの時点で韓国側は適切に措置すると、国内の挺対協という団体が作ったので、説得作業に当たるということを表明していますので、日本側も直ちにというふうに過度に期待はせずに、適切な時期が経てば自然と少女像は、主体的に移転したという形で韓国国内的には説得するんだと思いますね。日本側としては撤去なんでしょうけど、それぞれそのぐらいのワーディングの差はあるんだというふうにあらかじめ理解しておくのがいいと思います。
高瀬 なるほどね、わかりました。浅羽さん、どうもお疲れのところありがとうございました。
浅羽 ありがとうございました。
高瀬 どうも失礼致します。
今夜は、今日行われました歴史的な日韓外相会談について、新潟県立大学大学院国際地域学研究科教授の浅羽祐樹さんにお話を伺いました。以上、cutting edge でした。
ニュースルームアナウンサー:木次真紀
ゲスト:新潟県立大学 大学院 国際地域学研究科 浅羽祐樹教授
高瀬 それでは今日のニュースをチェックします。Today’s Headline. ニュースルームの木次真紀さんとお伝えします。
木次 はい、それではお伝えします。岸田外務大臣と韓国の尹炳世外相は、きょう午後ソウルで会談し、従軍慰安婦問題の決着で合意したと明らかにしました。会談後の共同記者発表で、岸田大臣は、「軍の関与で多数の女性の名誉を傷つけ、日本の責任を痛感している」とし、「安倍総理大臣が心からのお詫びと反省を表明する」と述べました。また、元慰安婦への支援として、韓国政府が財団を設立し、日本政府が10億円を拠出して日韓両政府が協力して事業を行うとしました。両外相は、こうした措置が着実に実施されることを前提に、慰安婦問題が最終的・不可逆的に解決されることを確認すると述べました。
高瀬 いや、これは驚きましたね。色々な動きがあって日韓がこの問題に関して妥結を図ろうと言う動きがあったことはもう伝えられていたんですね。しかし、かなり内容的には、今まで安倍総理大臣が言っていた慰安婦問題についてのコメントよりもかなり突っ込んだというか、日本側が相当にこの問題に関して反省をし、そして謝罪をするという、そういったところまで踏み込んだ内容になっている。それによって韓国側もこれをきちんと受け止めて、これ以上この問題に関して韓国側から色々な批判を出さないようにしていこうという、そういった趣旨の内容にどうやらなったということなんですよね。
で、これまでは産経新聞の前ソウル支局長の無罪が決まりました。それから日韓の協定の問題がありましたけれどもね、請求権協定、これも違憲訴訟、韓国の裁判所が却下しているということで、何か大きく動いているなという印象はありましたけどね、これだけのものが本当に妥結するということは、これは日本と韓国だけの問題ではないという感じがしますね。どうも後ろにやはりアメリカの影がちらついているわけですよね。
何日か前の読売新聞が書いているんですけれども、アメリカ政府が日韓の妥結を評価する声明を出すなどして、国際的に決着したことを確認する案が出ているということなんですよね。こういうことを考えると、これ本来二国間の問題なのでアメリカが本来タッチする話ではないんですが、この問題に関してアメリカが声明を出す方向だということは、つまり今回の妥結はアメリカと日本と韓国、この三者の合作ではないかというような印象があります。
ではなぜそんなことをするのかというのは、もうすでに色々なところから意見も見方も出ていまして、やはり中国が台頭してきている、その対中関係をアメリカが非常に意識していて、そんな中で日韓関係がゴタゴタすると、対中の、中国に対してのアメリカのスタンスが非常に難しくなってくると。しかも今、貿易で韓国は非常に中国側と接近しているということもあったわけですね。そういった外交的な様々な背景もあるんだろうという気がしますが、もっと何か大きなものがあるのかもしれない。その辺はこれから色々と出てくるんだろうと思いますが、この問題に関しては、このあと、cutting edge で詳しくお伝えしたいと思います。
(他のニュース省略)
高瀬 高瀬毅がナビゲートしています、JWAVE Jam the World。続いては cutting edge のコーナーです。Today’s headline でもお伝えいたしましたとおり、今日、韓国ソウルで岸田外務大臣と韓国の尹炳世外相が会談しまして……失礼しました。久しぶりにやるとこういうことが起きるんですよね。もう一度行きましょうね。
高瀬毅がナビゲートします、JWAVE Jam the World、このあとは cutting edge です。歴史的な合意となりました日韓外相会談のポイントについて、新潟県立大学大学院 国際地域学研究科教授の浅羽祐樹さんにお話をお聞きします。
高瀬 高瀬毅がナビゲートしています、JWAVE Jam the World, 続いては cutting edge のコーナーです。Today’s headline でもお伝えいたしましたとおり、今日、韓国ソウルで岸田外務大臣と韓国の尹炳世外相が会談しまして、いわゆる従軍慰安婦問題で最終妥結しました。日本と韓国の歴史において大きな意味を持つ日になりましたが、これですべてが解決したと思っていいのでしょうか。
今夜は日韓関係に詳しい、新潟県立大学大学院 国際地域学研究科教授の浅羽祐樹さんに電話をつないでお話をお聞きします。浅羽さん、こんばんは。
浅羽 こんばんは、リスナーの皆さん、こんばんは。
高瀬 どうぞよろしくお願いいたします。
浅羽 こちらこそよろしくお願いしまーす。
高瀬 今、浅羽さんはソウルにいらっしゃるということなんですが。
浅羽 そうなんです。たまたまなんですけど、偶然、現場にいます。
高瀬 ああ、そうですか。早速お聞きしたいんですがね、これは本当に非常に大きな日韓関係の進展につながるニュースだと思いますが、そちらの韓国での反応はいかがでしょうか?
浅羽 非常に大きな関心を持ってニュースで、最初のニュースからずっと続けて報じられてますね。
高瀬 そうですか。
浅羽 そうですね。
高瀬 どんな感じですか、これは。好意的でしょうか。
浅羽 トーンはですね、満足100%の満足、満額回答ではないんだけれども、まあ納得できるというのが大部分だと思います。ただですね、当事者である慰安婦の方々の反応は分かれていまして、一部、満足はできないけれども、まあ一所懸命韓国政府がやってくれたので受け入れると、従うという方もいますし、法的責任の部分が認められなかったので、そんなものは受け入れれないという方もいますね。ですので、当事者の反応が割れています。
高瀬 なるほど。まあ、ここまでずっと色々この問題で揉めてきましたから、そう簡単には全部納得ということにはならないんだと思いますが、しかし、今回かなり日本側も踏み込んだ内容の話を出しましたですね。これはこちらのほうのニュースでは、おおまかなところ伝わってきていますが、ちょっと改めてお聞きしたいんですが、これは日韓外相会談で、どんな内容で合意したというふうなことなんでしょうか。
浅羽 双方、政治的なリスクを取って、最終決着をしたということを国内外に広く宣言したということですね。で、合意の内容ですけれども、日本側がまず法的責任ということは認めなかったんですが、政府として責任を痛感すると。で、安倍総理が内閣総理大臣として反省とお詫びを表明すると。で、韓国政府が設立する財団基金に日本政府の公金で10億円ほど支出するということです。で、それを受けて韓国政府がこの問題が最終的かつ不可逆的に、もう後戻りできない形で解決されたということを確認するということを宣言しました。
高瀬 なるほど。これは安倍さんというか、まあ、安倍政権と言っていいと思いますけどね、ここまでの内容を出してきたというのはどういうことが考えられますか。
浅羽 日本側とすれば譲歩は譲歩なんですけれども、法的責任という部分は呑んでいないと。政府として責任を痛感という形で、1965年で法的には決着、解決済みだという立場には何もゆらぎがないんですね。ですので、日本側としてはそこの部分は守っているということです。
高瀬 なるほど。これは日韓請求協定ですね。
浅羽 そうですね。65年の日韓請求権協定で、個人請求権も含めてすべて終わっているというのがこれまでの日本政府の一貫した立場で、今回もその点は貫徹したということです。
高瀬 なるほど、なるほど。しかし、やはりここまで韓国側も今回の内容についてかなり前向きに捉えているということなので、これは大きな進展と見ていいんでしょうかね。
浅羽 いや、大きな進展ですね。日韓関係で誰にとっても最大のしこりと思われたのが慰安婦問題で、これがこうした形で最終的かつもうもどれない形での解決ということを広く宣言したわけですから、これでこの問題が再論される、蒸し返されるという可能性は、防ぐことができたということだと思います。
高瀬 なるほど。日本としては、これ、最終決着をさせるということだったと思いますが、その担保は取れたというふうに見ていいんでしょうかね。
浅羽 そうですね。まず岸田外相と韓国の尹外相がともに同じ言葉で、最終的かつ不可逆的な解決でこの問題が終結したということを宣言していますし、韓国側が設立する基金に日本側がお金を出すということなので、韓国側は言ってみれば試合のジャッジとか観客ではなくて一緒にプレーヤーで、この問題が最後、当事者も納得行く形で終えることができるということにコミットさせるわけですよね。この二点が、今日会談で発表されましたし、おそらくもうまもなくアメリカ政府が今回の合意、英語ですぐ出たんですけれども、歓迎する声明を出すんだと思います。駐日イギリス大使は早速、暖かく歓迎するということをツィートしましたね。
高瀬 そうですか。
浅羽 もっとオフィシャルな形でアメリカ政府が声明を出すんだと思います。それで、国内外でコミットメントを確証して、最終的に決着だということを担保するということだろうと思います。
高瀬 なるほど。今、アメリカの話が出ましたが、これ、数日前も読売新聞が1面にちょっと書いたんですが、アメリカが今回の日韓の妥結を受けてそれを評価する声明を出していくという、これはやっぱりアメリカの、まあ、何というか、色々働きかけがあったというふうに見たほうがいいんでしょうか。
浅羽 まあ、そうですね。間違いなくそのアジアへの回帰の中で同盟国である日韓、アメリカにとっての同盟国である日韓が連携して米日韓という形で連合して動くことを期待しているわけですから、日韓関係がこの問題でうまく進まなかったのはアメリカからすると台頭する中国に対して米日韓で連携して対処できないということで、中国から付け入る隙を与えてしまうことになるので、そうした戦略的な弱みというのがこれで相当程度修復されたというふうに見るんだと思いますよ。
高瀬 相当色々強い働きかけがあったというふうに考えていいんでしょうかね。
浅羽 考えていいと思いますね。何度も骨折りをして、実際、去年は米日韓の形での首脳会談も斡旋するわけですから、水面下で働きかけていたのは間違いない。で、もうまもなく歓迎の声明が出るんだと思います。
高瀬 なるほど。さきほど、いわゆるこれは、法的な責任は日本側としては認めてないという、そういう意味では従来から言ってきたことは変わっていないということだったんですが、ただ、その文言を見ると、かつて河野談話というのが出ましたが、この時、当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題だと、従軍慰安婦として幾多の苦痛を経験され、心身に渡り癒しがたい傷を負われたすべての方々に対応し、心からお詫びと反省の気持ちを申し上げるというふうに言っているんですね。で、今回日本側が出してきたこの文言ですね、ほとんどここと同じように見受けられるんですが、これはかなり、安倍さんが今まで言ってきたことをだいぶ変えたのかなという印象もあるんですが、そのへんはどんなふうに……
浅羽 河野談話の文言をそのまま踏まえているところあるんですね。河野談話を継承するという、歴代内閣の談話は継承すると言ってましたけど、河野談話は総理談話ではないですから、その文言が今回入って、軍の関与を明記して、で、「強制的に」という言葉も入ってますので、まあ、韓国側はその部分をもって事実上強制連行の部分が認められたというふうにみなして、で、政府の責任を痛感ということでお詫びをして公金を支出するということなので、併せてパッケージで見ると、事実上の法的責任だというふうに韓国国内では説明すると。で、まあ、ただ日本側からすると、法的責任というワーディングにはなっていませんので、従来の立場は何も崩れていないということで、それぞれ都合よく、「創造的曖昧さ」というふうに韓国メディアでは昨日から下地作業が進んでましたけれども、それぞれが都合よく解釈して、国内で説明して、同意を得るということなんだろうと思います。
高瀬 これ、「創造的曖昧さ」って、いわゆるクリエイティブの創造という意味ですか。
浅羽 そうですね、はい。
高瀬 となると……
浅羽 100%、満額で満足するということになると、取れないわけですよ。韓国側の法的責任ということであれば日本側はそもそも飲めないですし、何もしないというふうになると韓国側も折り合いをつけることができないので、まあ、双方曖昧さを残しつつ、従前の立場よりかは進んだとか守ったというふうに言える余地をお互いに認め合ったということですね。
高瀬 なるほどね。それから、先ほど、元慰安婦の方たちの反応も分かれているということなんですが、これはどういうふうに考えればよろしいんでしょうか。
浅羽 ここはなかなか難しいんですけれども、何をもって解決、決着かというので、これはやはり政治的な政府間での決着で、それを国内外で合意を取っていくということで、大半の国民からすると、もうこの問題でこれ以上という部分はあるんだと思いますが、慰安婦のそのひとりひとりにとってみれば、完全に満足できなければ認められないという人もいるでしょうし、やむを得ないという人もいるので、で、政治的には国民世論がこれで決着したというふうにみなすかどうかだと思いますね。
今日のこれまでの韓国メディアの流れからすると、まあ、満足はできないけれども、不十分ではあるけれども、まあ納得できる水準であるというふうな論調ですので、そういう論調が明日、新聞の社説なんかでこぞって出ると、当事者からすると納得してなくても、まあ、外堀、内堀が埋められる形で、決着というふうに広くみなされることになるんだろうと思います。不本意な方は当然残るとは思いますが。
高瀬 なるほど。これ、朴大統領はなかなか色々政権の支持率も上がらないとか、色々なことで苦しんできたと思いますが、今回のことで韓国の統治というか、政治のほうもうまい具合に流れていくというような感じなんでしょうかね。
浅羽 これは岸田外相を韓国にやる前に、安倍総理が責任はすべて私がとるというふうに述べていましたけれども、安倍総理以上のリスクがあったのは朴大統領で、国内から反発も十分予想される中で、この線で踏み切ったわけですよね。当事者の中からも反対の声がありますし、最大野党は法的責任を認めなかったので受け入れることはできないという声明を早速出していますけれども、それでも朴大統領は踏み込んで国内を抑えることができるか。で、安倍総理としては、あとは韓国国内の調整問題であって、政府間の手打ちはもう終わったということはもう第三国も認めているという形にするんだろうと思います。
高瀬 なるほど。この慰安婦問題、ひとつの大きな山を越えていくという、そういうふうに見てもいいような感じを受けましたけれども、しかし、これでじゃあ全部いいのかと。何か色々他にも問題というのは出てこないんでしょうか。
浅羽 あとはディテールの詰めがあるので。基金を設けて、どのように運営していくのか。10億円出資して、具体的な尊厳を回復する措置を一緒に取っていくということなんですけど、お金を配る時にそのお金の性格をどのように名前をつけて手渡すのかという時に、贖罪金なのか、お詫び、償い金なのか、はてまて賠償金なのかということで、それは如何なる責任を認めてその責任に基づくお金ということに連動するので、政府として責任を痛感するというのが合意されたワーディングなので、それでどこまでの表現を、日本語と韓国語と英語で出せるのか、というそのディテールの詰めはまだ残っていると思います。
高瀬 なるほど。これ、歴史認識の問題のひとつの象徴的な問題だったと思うんですけどね、慰安婦問題というのは。
浅羽 そうですね。
高瀬 他にもしかし、慰安婦問題以外に、植民地支配の問題とか色々あるわけですが、この辺のところにも影響を与えていくんでしょうか。
浅羽 まあ、慰安婦問題に限ってもうひとつあって、少女像の行方がどうなるのかというので、直ちに撤去はされないんだと思いますが、日本がその財団に対する出資をしたぐらいの時点で韓国側は適切に措置すると、国内の挺対協という団体が作ったので、説得作業に当たるということを表明していますので、日本側も直ちにというふうに過度に期待はせずに、適切な時期が経てば自然と少女像は、主体的に移転したという形で韓国国内的には説得するんだと思いますね。日本側としては撤去なんでしょうけど、それぞれそのぐらいのワーディングの差はあるんだというふうにあらかじめ理解しておくのがいいと思います。
高瀬 なるほどね、わかりました。浅羽さん、どうもお疲れのところありがとうございました。
浅羽 ありがとうございました。
高瀬 どうも失礼致します。
今夜は、今日行われました歴史的な日韓外相会談について、新潟県立大学大学院国際地域学研究科教授の浅羽祐樹さんにお話を伺いました。以上、cutting edge でした。
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by kokkai-sokuhou
| 2015-12-28 22:25