「あなたはどこの国の外務大臣ですか?」 平成23年7月29日 衆院外務委員会 小野寺五典氏(自民) |
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http://www.youtube.com/watch?v=7F3v2zGv0b8
(開始から19:03まで)
小野寺 自由民主党の小野寺五典です。今日は桜井副大臣ありがとうございます。篠原副大臣ありがとうございます。
冒頭少しIMFのことについてお伺いをしたいと思います。その前に財務省にまずお伺いしたいのは、最近、はい、財務省、あの、今1ドル77円、大変進んだ円高という状況になっています。で、そして日本の各種企業がどんどん海外に展開をする、国内の産業の空洞化、このことが叫ばれております。ここまで日本の円が高くなる、そして、それほど国内の経済・景気がいいわけではないのに、ここまで強い厳しい円高を強いられてしまう。ところが、ふとアジアの諸国を見ますと、中国の元あるいは韓国のウォン、ウォン安も含めて現在も続いております。このような、たとえば中国の元あるいは韓国のウォン、そして日本の円、この現在の為替レート、この状況をどのようにお考えでしょうか?
桜井財務副大臣 小野寺委員にご答弁させていただきたいと思いますが、すみません、通告がありませんでしたので、すみません、答えられる範囲で、それから為替のことについては財務省として基本的に大臣の専権事項になっておりまして、私のほうからですね、あまり答弁しないようにと言われておりますので、差し控え、あの申し訳ありませんが不十分な答弁になるかもしれませんが、その点はお許しいただきたいと思います。
私も小野寺委員と問題意識は全く共有しておりまして、現在の日本経済のことを考えてくればですね、円高がいいとは全く思っておりません。ただしこれが世界の全体の流れになっておりますから、世界の中で日本も問題を抱えておりますけれども、アメリカそれからならびにヨーロッパも様々な問題を抱えていて、そこの中でバランスとしてどうなってくるのかということになってくるんだと思ってます。ただし、だからと言って何もしないというわけではありませんで、日本政府としてもですね、円高の是正のために各国と協調してですね、取り組んでいかなければいけない、協調介入したときがありましたが、そういったことをきちんとやっていかなければいけないと思っています。
それから私なりにですね、ウォンに対して介入できないのかどうかということについても検討させていただきましたが、現状なかなか難しいようでございまして、もしそういったようなところを是正する手立てがあるんであれば、逆に言えばご指導いただければありがたいなあと。いずれにしてもここはですね、政府とか与党とかの問題ではなくて、日本国全体の問題であって、与野党ともにですね、今の円高問題に取り組んでいくということが極めて大切なことなんではないのかというふうに考えております。以上です。
小野寺 あの、その通りなんです。今の日本の産業空洞化、この国の根幹の様々なところが揺らいでいるのは、これは日本から見れば行き過ぎた円高、そして今様々、今日も報道がございましたが、日本の電機メーカーの白物家電が中国の企業に買収されるということ、今サッカーの試合を見ると、広告、かつては日本の弱電メーカーが出していた広告欄に今韓国の弱電メーカーが広告を出している、このような日本の産業の問題というのが今直面をしており、そして国内では空洞化が起きつつあり、そしてこの由来、原因というのは円高であり、そして私どもが日々感じているのは、どうしてこういう状況でもウォン安というのが行われるんだろう、どうして元というのは日本と同じような変動相場にならないんだろう、このような様々な矛盾を感じながら、実はこの国際競争社会の中で頑張っているわけです。
ところが今日、外務大臣にお伺いしますが、IMF、この目的というのは、世界貿易の均衡の取れた発展、通貨の切下げ競争の防止、こういうことが目的としてあります。明確に通貨の切下げ競争の防止ということが現実にあるんですが、このIMFの目的からして、私は現在の日本の円が置かれた状況、そして日本のライバルとなっている中国・韓国のこの通貨、元・ウォンの問題、ここに本来はIMFがもっと厳しく踏み込んで、先ほど中林委員のお話がありましたが、日本の職員が、あるいは日本の国益を背負って本来この場でこの通貨切り下げ、あるいは現在の日本の円高の問題に関して対抗すべきだと思いますが、今どのような機能が果たされているかお答えください。
松本外務大臣 お話がありましたように、IMFの目的として為替の安定を促進をするということがあることはご指摘の通りであります。その目的を果たすためにIMFとして加盟国に対してマクロ経済政策や為替相場制度、金融市場、資本移動といった分野、それを中心にマルチ・地域別・バイのサーベイランスを実施をしているわけであります。ご(数文字分聞き取り不能)困難に陥ったときの対応については、重ねて申し上げて申し訳ありませんけれども、その上で、また、さらに、加盟国の今申し上げたようなマクロ経済政策、金融や為替相場制度に資する政策の推進、サーベイランスで示された提言の実施をすることを支援するために、専門性を有する分野については技術支援などを実施をしている、ということで、IMFは活動しているというふうに私どもとしては理解しております。
小野寺 本来、日本は出資比率第2位です。そして今までも支えてまいりました。このIMFの果たすべき役割、ここにありますように、これは桜井副大臣がおっしゃったように、日本としてオール与野党問わず対応しなきゃいけない、そのような内容だと思いますが、その目的にですね、通貨の切下げ競争の防止ということが明確に書かれています。本来であれば、日本政府が現在のこの行き過ぎた円高について、このIMFの場でしっかり機能をさせる、それが大切だと思います。
では改めてお伺いしますが、日本が本来国益を担って行うべき改正に向けて、今回の改定はどのように役に立つのか教えてください。
松本 改正の意義については先ほど中林委員とのご質疑でも話をさせていただきましたので、簡潔に申し上げて参れば、世界の経済の現況に鑑みて、新興国・途上国にも関与、(の中にも?)積極的な関与を求めていくことによって、IMFそのものの正当性であるとか立場を高める、その中で将来に向けて我が国もしっかりと発言をしていくことで我が国の国益にも資するという意義で今回の改正にも意義があるというふうに理解しております。
小野寺 それでは易しく言いますと、今回の改正をすることによって、日本のこの行き過ぎた円高、そしてまた元・ウォン、私どもから見れば円は、すみません、元はどうして日本と同じような変動相場にならないのか、あるいはウォンはどうして今のようなウォン安の状況になっているのか、今回の改定によってこれが改善されると、そう大臣はお思いでしょうか?
松本 ひとつは、現在の為替相場について私どもが言及をする立場にありませんけれども、基本的には市場による取引によって現在の円の価値というのが、取引額というのが決定をされているというふうに理解をしております。その上で、必ずしも市場による決定によっていない通貨制度を採っている国もあるわけでありますけれども、こういった国々について、市場制度を採っている国も含めてということになろうかと思いますけれども、先ほどお話させていただいたように、為替相場制度について、マルチ・地域別・バイのサーベイランスをIMFとしては実施をして、必要であればそのサーベイランスに示された提言に基づく政策の実施を支援するために、専門性を有する分野については技術支援などを実施をする、そういった中で、やはり最終的には市場の評価に適切にかなった形での通貨の取引が行われることが適切だろうと思います。
もちろん市場も万能ではなくて、その時々によっては、行き過ぎた取引になることについては、かつては、先ほどの桜井副大臣からもありましたように、各国が協調して介入をしたことというのも何度もあるわけでありますけれども、IMFとして今具体的に市場の制度についてどのようなサーベイランスを出して提言をしているか、ちょっと今手元にすべてありませんけれども、将来に向けてそのような形になる、望ましい形を目指してIMFも活動されるものと、そして我々もそれをまたしっかりと支えていくものだというふうに理解しております。
小野寺 私どもは日本の国会議員ですから、日本の政府ですから、日本の国益を増大すること、これをまず目的に、世界の平和に貢献することが大事だと思っております。まず日本の国益、日本人の経済、これをしっかりするということが本来の目的であります。さてもう一度お伺いいたしますが、実は今回のこの改定、一番大きな改定というのは、理事、今までは出資上位5カ国、日本は出資上位5カ国のうちの2番目ですから、実は理事のこの選挙、これ選挙しなくても、無投票で理事に選ばれると。選挙活動というのは私も外務省にいたとき経験しましたが、他の国の様々な支援を受けるというのは大変な努力が必要になります。実はそれをしなくても日本は自動的に理事になれる、そういう安定したシートを今まではずっと持っていたわけです。
ところが今回の改定では、このシートを手放すということになります。日本も同じように選挙を受けるということになります。そうすると、この理事の選出のことだけに限れば、決して日本にとってはハッピーな話ではない。ですが、それを放棄しても有り余る何か日本の国益のプラスになる、そのようなことがあるから、おそらくこの改定ということをお話されたんじゃないかと思います。そして、本来の目的で言えば、中国の元、韓国のウォンを含めて、(私ども?)についてこれはどうも不公平ではないかという考えを持つ、こういう通貨について、本来のこのIMFの目的、通貨の切下げ競争の防止、この観点から見れば、当然これが是正される、そういう目的を持って今回のこのような日本が譲歩するような改定になるというふうに理解できると思いますが、この交渉の過程で、この改定によってですね、中国がたとえば日本と同じような変動相場になる、あるいは現在のウォンという政策的にウォン安に誘導されているところの是正ができる、このような約束をこれらの国と取り付けたんでしょうか?
松本 あの、G20においても国際機関の意志決定のあり方ということが議論されたことを踏まえて今回のIMFの改定にもつながっているというふうに理解をしておりまして、今回のIMFの理事国の選出を含む組織のあり方の議論ということは、広く国際機関における意志決定のあり方であるとか、世界の経済を含めた政治経済の現状に合わせた国際機関のあり方といった視点から議論をされてるというふうに理解をいたしておりまして、個別の通貨の、についての現在の市場ないしは取引の評価ということについて今私が評価についてコメントをすることは差し控えたいと思いますが、加えてそういった評価そのものをIMFの制度を作るにあたっての交渉において議論をされたというふうには私自身は承知をいたしておりません。
小野寺 松本外務大臣にお伺いします。あなたはどこの国の外務大臣ですか? お答えください。
松本 日本でございます。
小野寺 日本の外務大臣が日本の国益のことを全く話さずに、国際社会国際機関のあり方がG20でこっちの方に行きそうだから、そのまま日本は乗っていきますと、そんな答弁で外交してるから、こんなに日本の外交がぼろぼろになってるんですよ。何でこの時に、この日本がここまで譲る、まあ言ってみれば国連常任理事国で言えば、常任理事国のシートを譲る、今回のそういう改定をする、そこまで譲っておきながら何かを得るのが、本来は外交というものじゃないですか。そして今日本が今日も、この現在も困っている円高、その是正の本体がIMFでしょう。そこの中の改革も全然提案せずに、全体の流れの中で、あ、そうなるから仕方がない、そんな答弁許せません。もう一度お答えください。
松本 総合的に現在ないしは将来の国益も考えて、しっかりと議論を進めてきているというふうに考えております。なお、今お話がありました円高について私どもが、私も内閣の一員として、我が国において大変重要な問題であるという認識は共有をさせていただいているというふうに思っております。
小野寺 これは委員の皆様にも是非共有していただきたいんですが、今回この日本がずっと無投票で得る理事のシートということ、これをまあこの改革の中で手放すということになります。これからは日本は選挙を経てこの理事のシートを得るということになります。これは日本からすれば、ある面からすれば譲歩ということに当然なります。そうなれば、国際交渉の場です。日本が出資国第2位の立場にあります。何か逆にこのIMFの中で、日本が本来勝ち得るもの、勝ち取れるもの、それがあって初めてこういうディールが成り立つのが、私は外交だと思っています。
そして私たちが今このIMFに一番求めているのは、今本当に地方経済、もう悲鳴を上げています。これだけ産業空洞化して、また1ドル77円で、そして日本は中国の元と韓国のウォン安と、これと戦って日本の企業が頑張っているわけです。でもどうしても抗し切れなくなって、今日の報道にも出ておりましたが、日本の白物家電の企業が中国の企業に売却をされる、逆に言えば、中国にどんどん買収されている、韓国の企業がどんどん日本に入ってきている、こういう中で何も手を打たないというのは、しかもIMFを使って何もしないということ、譲歩だけを重ねる、これは私はオールジャパンとして決して許してはいけない、そうだと思っています。是非この産業政策、IMFを使って、この日本が今厳しい立場に置かれているところを少しでも改善するような努力をしていただきたいと思いますが、財務大臣に改めて決意をお伺い、あ、外務大臣に改めて決意をお伺いいたします。
松本 今の円高が我が国経済に与えている甚大な影響ということに十分心して、政府全体としてもよくその認識の下にあらゆる政策手段を動員することが必要だということについては、私もそのように是非勤めてまいりたいと思います。
小野寺 所掌であります財務省からもお伺いしたいと思います。
桜井 今の議論をお伺いしておりまして、小野寺委員の提案というのは私は本当に素晴らしい内容だと、そう思います。その意味でもう一度省に持ち帰らせていただきたいと思いますが、今IMFでどういう議論を我が省の出身の委員の、職員の人たちが議論をしているのかとか、そういったことについてですね、改めて検討をさせていただきたい。そしてその上で、ここにまさしく委員がご懸念の点をですね、是正する機能を本来持ち合わせているわけですから、本来の機能が発揮できるように、我が省としてもですね、全力を挙げていきたいと、そう思っております。
小野寺 今回の改定について、是非あの、大きな流れということなんでしょうが、当然、日本が譲っているということがあるんであれば、やはり、勝ち得るところをたくさんすべき、そして、もうひとつ心配なのは、これによってまた新興国の増資が増えるということになります。今回大口の多分増資として第3位にあがってくるのは中国だと思いますし、また韓国もかなり増資をしてくると思います。そうするとこのIMF自身が、たとえば中国が国際的な役割を果たして、元についてももうそこまでの理事国になるんだからこれは変動相場制に移りましょうとか、韓国についても公正な競争をしましょうとか、そういうふうにこの国の政策が変わるんであればいいんですが、そうでなければ逆に日本の近隣の、日本がライバルとする国がますます有利になるようなIMFの改革をされたんでは、これは日本が本当に干上がってしまう、そのような重要な役割があると思います。
今回この出資比率、新興国が高まるということは二つの側面があるということ、ひとつは新興国の発言がますます強まるということ、もうひとつは新興国の責任が重くなるということ、是非この重くなるという立場で、政府としてしっかり対応することを改めて確認したいと思います。
松本 この改革の議論そのものは昨年来から、根っこはもっと前からでありますけれども、行われてきた中での議論だということを是非ご理解をいただきたいと思います。今お話がありましたように、このIMFに留まらず、私どもとしてはあらゆる面で新興国については、国際社会に対しては建設的な役割を果たし、責任を持った対応をしてもらうことが、我が国にとっても必要であり国際社会にとっても必要であるというのが基本的な立場でありますので、そのことに向けてはしっかり努力をしたいとこのように思います。
小野寺 是非あのこれから新興国、おそらく責任も重くなるという中で、国際社会の中で、国際経済の中で、しっかりとした責任、公平さ、公正さ、透明さ、それを推進していただくように、この場でさらに進めていただければと思っております。
桜井大臣、どうもありがとうございました。