再生エネルギー法案 7月14日衆院本会議 稲津久氏(公明党)の質問 |
公明党の稲津久です。
私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案及び電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案に関し、関係大臣に質問をいたします。
質問に入ります前に、総理の政治姿勢について一言申し上げたいと思います。
総理は、本法案について、原発事故で再生可能エネルギー促進は急務との姿勢を示しておりますが、法案成立に意欲を見せたのは、6月2日のいわゆる退陣表明後です。3月11日の発災から3カ月も経過をした時点での表明は、どう見ても、政治的意図によるものと言わざるを得ません。
加えて、その政治的意図の核心部分は、総理の、歴史に名を残したいとの強いこだわりであると申し上げます。
これまでも何度か、歴史を強く意識した発言が総理の態度表明にあります。例えば、本年1月の、社会保障と税の一体改革の協議を野党に求めたときの、歴史に対する反逆行為発言、また、5月13日、中部電力浜岡原発停止決定での、評価は歴史の中で判断してほしい、さらに、5月25日、G8サミット演説で、原発事故の教訓を世界に伝えることが歴史的責務など、あらゆるところで歴史にこだわった発言を繰り返してきました。そして、昨日夕刻の突然の記者会見。席上、脱原発がその時代の総理の責務と、ここでもまた歴史を意識した発言でした。
しかし、歴史に名を残すことに執着する余り、手順の無視、議論抜き、突然のトップダウン手法、常に後出しの説明。このことで、どれだけ多くの方々が迷惑を受けたか。結果、自治体との関係悪化、国民の広い理解も得られず、さらには閣内不一致。こうした状況を繰り返し、直近の世論調査では、内閣支持率は2割を大きく割り込み、過去最低を更新しています。
ここまで来れば、重ねた失態による結果から、菅総理、もう十分に歴史に名は残しておりますよと申し上げますとともに、一刻も早く退陣されることが、その呪縛から解放される最善の方法であると訴えさせていただきます。
それでは、本法案の質問に入らせていただきます。
まず、我が党の、原子力発電と再生可能エネルギーについての基本的な考え方を申し上げます。
公明党は、これまで、過渡的エネルギーとして原子力発電を容認してまいりました。しかし、今回の東京電力福島第一発電所事故により、原子力への依存を徐々に減らしていかなければならない、そして、それを電力の安定供給を確保しながら達成するためには、省エネルギーと再生可能エネルギーの拡大に最大限の努力をしていかなければならない、このように考えております。
再生可能エネルギーは、その名のとおり、枯渇せず、国産であり、燃料費がかからないという特徴から、我が国のエネルギー安全保障にふさわしいエネルギー源です。
我が国は、2008年には、化石燃料の輸入のためにGDPの5%、23兆円を費やしています。これを減らし、再生可能エネルギーを拡大することが、経済的にも安全保障上も有益であることは言うまでもありません。
また、再生可能エネルギーは、環境保全型社会の基盤となります。同時に、再生可能エネルギーは、エネルギー利用時点でのCO2を発生せず、低炭素社会に ふさわしいエネルギー源です。また、化石燃料やウラン燃料と比べて、採取に当たっての環境負荷が小さく、利用の際に廃棄物をほとんど発生させないなど、環境においてすぐれております。
再生可能エネルギーの拡大は、日本経済の発展にも貢献します。その世界市場は、現在の22兆円から、200兆円にも達すると言われており、日本経済の今後に大きな可能性を秘めた分野です。
また、再生可能エネルギーは、地域密着型のエネルギーでもあり、地域の活性化と雇用の確保、中でも、被災地の復興に資すると期待するものであります。
こうした再生可能エネルギーの可能性に着目し、公明党は、自公政権下の2009年に固定買い取り制度の導入を提唱して、現在の太陽光発電の余剰買い取り制度の導入を構築いたしました。そして、2010年参議院選挙のマニフェストにおいては、2030年に電力の30%を自然エネルギーで賄う自然エネルギー大国を目指すことを公約いたしました。さらに、公明党として本院に提出している気候変動対策推進基本法にも、本年中の同制度の創設を盛り込んでおります。
その意味で申し上げるならば、提出の本法案は、公明党が構築した制度の拡充法であるということを明確に申し上げます。
Q1 エネルギー政策を中長期的に原子力・化石燃料から再生可能エネルギーに転換するべきではないか
従来、エネルギーについては、ベストミックスということが言われてきました。しかし、この言葉は、あいまいな政策表明に終わってしまうおそれがあります。
政府においては、原子力や化石燃料中心の政策を明確に転換して、中長期的に再生可能エネルギーを一つの柱とする社会を目指すことを決定すべきと考えますが、国家戦略担当大臣、経済産業大臣、環境大臣の見解を伺います。
さて、再生可能エネルギーを普及させるために世界的に成功している政策が、再生可能エネルギー電力の固定価格買い取り制度です。1990年代以降、再生 可能エネルギー電力の爆発的普及に成功したドイツやデンマーク、スペインで共通して採用している支援政策が、固定価格買い取り制度です。
再生可能エネルギーを普及させるための社会的制約の第一は、現段階では再生可能エネルギーが市場競争力を持っていない、つまり、発電単価が他の電源と比べて高く、商業的に大規模に利用されていないという点にあります。しかし、既に世界的な化石燃料の価格高騰の状況や原子力発電のコストの問題、また、再生可能エネルギー技術が進展していくことを考えれば、この点は解消されていく可能性があります。
その上で、地球温暖化等を考慮すれば、比較的短期間のうちに再生可能エネルギー設備を普及する必要があり、そのために、再生可能エネルギーに短期間で競争力を獲得させるための政策が必要です。それこそが固定価格買い取り制度であり、それを具体化する本法案の必要性について、我々も認識を共有するものであります。
その観点から、本特別措置法案の具体的な内容についてお伺いをいたします。
Q2 事業成立性を持たせるため、買取価格をコストベースにするべきではないか
本法案では、再生可能エネルギー電気の買い取り価格及び買い取り期間は、経済産業大臣が定めることとなっております。固定価格買い取り制度の本質が再生可能エネルギー技術に市場競争力を与えることにあるならば、その買い取り価格は、一定の事業成立性のある価格であることが求められます。これまでの検討では太陽光以外は一律価格とする方針のようですが、事業成立性を考慮するならばコストベースが望ましいのではないかと考えますが、経済産業大臣の見解を伺います。
Q3 過重な負担の回避、電気料金抑制策の方針
一方、本法案では、買い取り価格の設定に当たっては、電気使用者が支払う賦課金、いわゆるサーチャージの負担が過重なものにならないよう配慮しなければ ならないとも定めております。事業成立性が必要といっても、電気は国民生活、国民経済の重要な基盤ですから、過重な負担にならないよう配慮することは当然必要であると考えます。
また、我が国の電気料金は、もともと、アメリカ、韓国などと比べて二倍程度の価格水準にあります。しかも、今後、原子力発電の停止で、代替する化石燃料の高騰などにより、電気料金が上昇していくことが懸念されています。
これに関しては、世界一高い燃料を買わされているなどとの指摘もある電気事業の高コスト体質をどう改革するか、そのためには電力自由化のさらなる推進が必要なのではないかといった重要な課題があります。
経済産業大臣は、本法案による過重な負担の回避、今後の電気料金の抑制策についてどのような方針か、お伺いをいたします。
Q4 全量でなく余剰分のみの買取にした理由
次に、本法案では、住宅用の太陽光発電からの買い取りは、余剰分のみとなっています。
しかし、余剰分に限らず、家庭で消費される太陽光発電による電気も、同じく環境価値を有しております。家庭ごとに電力の余剰率には10から90%程度と 大きな差があり、同じ投資に対して、家庭によって不公平を生じることになります。これを全量買い取りにすれば、余剰のみと比べて飛躍的な太陽光発電の普及が可能となり、導入量の拡大による技術学習効果によってコスト低下も早まり、長期的に、制度の目的に資するのではないか。他方、現行制度の連続性や、節電効果がより大きくなるという観点から、余剰買い取りの方がよいという説もあります。
余剰分に限定する理由を経済産業大臣に伺います。
Q5 接続拒否の規定は「正当な理由があるときには接続が拒否できる」で十分
さて、再生可能エネルギーの普及に対する社会的制約としては、系統連系に関する障害が大きな要因と指摘をされております。そのため、再生可能エネルギーの普及には、再生可能エネルギー設備に関する優先接続の原則を確保することが不可欠です。
本法案では、電気事業者は、再生可能エネルギー発電設備と変電・送電・配電用設備との電気的接続を拒んではならないとされていますが、電気事業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるときは接続を拒否できるとされています。
しかし、本法案の所期の目的を達成するためには、電気事業者の接続義務は最も重要な規定の一つであり、恣意的に再生可能エネルギー設備との接続が拒否されることがあってはなりません。本法案には、経済産業省令で定める正当な理由があるときには接続が拒否できるとの規定があり、この規定で十分であると考えますが、経済産業大臣の見解を伺います。
Q6 北海道、東北、首都圏を結ぶ幹線敷設への見解
なお、送電網整備のためには、国は、必要に応じて、現在の電力会社間連系を含む系統の増強への支援を積極的に行うべきであると考えます。
特に風力発電については、地域ごとの分布に偏りが大きく、適地に大量導入するためには送電網の整備が必要です。例えば、風力発電の大きなポテンシャルがある北海道の電力を津軽海峡を越えて首都圏に送電できるようになれば、地域経済の活性化にも大きく資するものと考えます。
首都圏の電力安定供給、再生可能エネルギー電力の大幅導入のために、北海道、東北、首都圏を結ぶ高圧直流大容量幹線を敷設してはどうかと考えますが、経済産業大臣の見解を伺います。
Q7 大規模な自然エネルギー事業の促進策
次に、大規模な自然エネルギー事業の進め方について伺います。
太陽光発電のメガ事業を進めれば、住宅用と比べて買い取り価格が比較的低くなるため、需要家の負担を比較的小さくできる可能性があります。そこで、太陽光発電のメガ事業を促進するために、事業成立性を考慮した買い取り期間、買い取り価格の設定や、土地利用などに対する社会的な合意をスムーズに進めるための制度づくりが必要になります。
また、風力発電については、既に大規模のファームが主流となっており、優先接続制度や送電網の整備、土地利用に対する社会的合意をスムーズに進めるための制度づくりが必須です。
そこで、大規模な自然エネルギー事業を促進するために、具体的には、紛争予防的な土地利用のゾーニングを行うとともに、地域のオーナーシップ、意思決定 プロセスへの参加、事業利益の地域還元などを確保していくことが重要と考えますが、経済産業大臣、そして国土交通大臣の見解を伺います。
Q8 エネルギー政策の非核化による平和的貢献
最後に、近年高まるエネルギー需要や地球温暖化防止などの観点から、原子力発電の施設を増設したり、新たに導入を検討する国がふえるという、原子力ルネサンスの動きがあります。そうした中で、核兵器の拡散や核テロの脅威が高まることが懸念され、国連の潘基文事務総長も、原子力ルネサンスが世界の新たな不安材料となることへの憂慮を示しています。
こうした懸念に対処するために、国際原子力機関による監視体制の強化はもちろんながら、再生可能エネルギーや省エネ技術の普及といった、エネルギー政策における国際協調によって核拡散防止の環境づくりを進めるというアプローチが考えられます。
東日本大震災の復旧復興に当たるこのとき、日本は、省エネルギー、再生可能エネルギーによる新しいエネルギー社会のモデルをつくり上げ、こうした面で世界に貢献していくこともできるのではないでしょうか。
今、被災地の人々を初め国民は、日本の前途に明るい希望をなかなか持てない状況にあります。我々政治家は、国政を預かる者として国民に希望の光を送りたい。その意味で、再生可能エネルギー、自然エネルギーによる環境保全型社会の構築を高々と掲げ、世界に貢献しようではないかと訴え、私の質問といたします。