安全保障と抑止力2 平成22年2月5日 衆議院予算委員会 石破茂氏の質問 |
(長さ12分38秒)
石破 これをどこに置くかということですがね、アメリカ海兵隊をどこに置くか。この図をごらんくださいな。お手元にお配りをしております。円が書いてある資料ですね。総理、お持ちですか。
これは、沖縄と、グアムに移した場合に、例えば朝鮮半島、例えば台湾海峡、これにどれだけの日数を要するかということを書いたものでございます。
沖縄であれば、朝鮮半島であれ台湾海峡であれ、そして今外務大臣がおっしゃったかもしれないけれども、我が国自衛隊は海兵隊というものを持っていませんのでね、島嶼防衛に対して真っ先に合衆国と協力しながらやっていかないと、我が国の島嶼防衛というものは極めて困難ですね。そうすると、西日本の島嶼部も含めて一日以内に到達できるのが沖縄。これは高速輸送艦を使った話をしているのですよ、佐世保から船が出るという話をしているのではありませんよ。グアムからだと二日ないし三日。そして、一日のおくれがとんでもないことを招きかねない、だから地理的な条件が大事なのだということが防衛白書にも書いてある。このことについての御認識はいかがですか。
北澤 総理の答弁の前にちょっと申し上げますが、もう釈迦に説法だろうと思いますけれども、基盤的防衛力というのは五十一年大綱から我が国の防衛の基本になっておるわけでありまして、今言われたことは、日米の共同の中で対応をしていくと、こういうことでありますから、もう御案内のことと思いますが、五十一年大綱で基盤的防衛力構想というものがうたわれておりまして、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、(石破「いいよもう」)みずからが力の空白となって我が国周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有する、これにより、日米安全保障体制と相まって、侵略を未然に防ぐと。そういうことで、今委員が言われたようなことに対応すると。
岡田 委員のおっしゃること、私もわからないわけではありません。ですから、沖縄とは言いませんが、日本に海兵隊は必要であるということは国会で既に答弁申し上げているところであります。
石破 私はね、名護がこれを受け入れてくれたというのは奇跡に近いことだと思っているんです。県外であれば、国外であればどんなにいいかということは、私も当然思います。そして、基地があるから沖縄は豊かじゃないか、そんなことは間違っても言ってはいけません。基地がなくても豊かな沖縄であるべきなんです。基地がなくても、ほかの県と同じように幸せが共有できる沖縄であるべきなんです。だれも、基地を受け入れたいところなんかどこにもないんです。
しかしながら、この状況を考えたときに、基盤的防衛力整備計画の構想の説明なんかいいですよ。私はあなたより何倍も知っているから、そのような説明をしていただかなくて結構です。(会場から野次が続く)そういう話ではなくて、力の空白を埋めるためにどうすればいいのだというお話をしているのですね。そうなったときにどのように考えるかということを申し上げているわけですよ。
で、ベスト、ベストを追い求める余りワーストが残ったということは避けなければいけません。ベストを追い求める余りワーストが残った、そういうことは絶対にあってはならないと思っているんです。
私たちは、この十数年間、先ほど環境影響評価における評価もいただきました、一つ一つやってきて、この二〇一四年ということができる、その直前まで来てたんです。それを、もう一度、県外、国外、はっきりした当てがあったわけではないが、沖縄の方々の気持ちを考えれば、国外、最低でも県外とおっしゃいました。私は、ベストを追い求める余りワーストになるということを恐れているのです。
そして、北朝鮮のお話をもう少し続けましょう。防衛大臣、お答えいただいて結構ですよ。
北朝鮮の認識についてですが、今、合衆国、この間、オバマ大統領が日本そして韓国、中国を歴訪されましたね。そのときに、李明博大統領とオバマ大統領の間で、この北朝鮮に対しては一括解決方式、いわゆるグランドバーゲンと言われるものです、これを全く正しいというふうにオバマ大統領はおっしゃいました。 北が完全に放棄をする、それに対して対応する、こういうものです。
このグランドバーゲンのやり方で本当に正しいんだろうか。このしばらくの期間といいますかね、ここ数年間、それは我々の政権の責任でもございましょう、北朝鮮の核能力てのは格段に向上したんです。ノドンミサイルは完成の域に達している、そして爆縮技術も小型化技術も昨年の実験によって相当に高まったと見るべきだろう。我が国にとって問題なのは、テポドンではありません、ノドンのお話なのです。そうすると、北朝鮮は、大変な力を持った、という、そういう自信を持っているはずですね。
では、これに対してどう対応すべきなのか。対話と圧力って言います。だけれども、この圧力がきちんと効くということがあって初めて対話はあるのですが、中国としては、北朝鮮が暴発されてはたまらん、難民が押し寄せられてはたまらん、米軍が中朝国境まで来ることもたまらん、そういうことがあって、突然崩壊するということが起こらないために援助を行っているのだと私は思うのですね。そうすると、日本と中国と韓国とアメリカの間で、どうすればそういう懸念が払拭をされるのかということをきちんと押さえておかないと、今の状況には対応できないのではないかと私は思うんです。
対話と圧力、それはだれも否定しません。だけれども、対話を有効あらしむるのは何か、圧力を有効あらしむるのは何か。我が国として、グランドバーゲン方式のままで、それでいいか。そして、日米の安全保障体制というのは本当に有事に機能するものであるのかということをきちんと確認しておかねばなりません。何せ指揮権が別なんですからね。指揮権が一本じゃないんですからね。調整して行うということになっている。
アメリカと韓国の間には、どのようにして戦うかという計画があります。日本の場合には、もちろん集団的自衛権は行使できませんから、ともに戦うということはあり得ません。しかしながら、その前に、どのようにして日米協力を行うか、周辺事態法をどのように適用するか、そのことも含めて北朝鮮に対応するためには、日、米、韓、中、このことの認識をきちんとしておくことが必要ではないかと思いますが、総理、いかがですか。
岡田 現在の北朝鮮の状況は憂慮すべき状況だと思いますが、日本とアメリカと韓国、この三カ国の北朝鮮に対する対応は現在きちんとそろっております。過去においては、それがばらばらな時代も残念ながらありました。しかし、現時点においては三カ国の方向はそろい、そして、きちんと今の国連で決められた制裁をやっていく中で、個別の取引には応じない、まず六カ国協議の場にしっかり戻す、それまでは我々は、忍耐を持って、そして現在の制裁を続けていく、その方針で完全に一致しているわけでございます。
石破 あえて中国を外されましたね。この中国との間で、つまり、総理が、この十年間、何回アメリカを訪問されたか私は存じません。ある方は、ワシントンには一回も来たことないよとおっしゃっていたけれども、まさか本当じゃないと思います。まさかそんなことはありますまい。中国に何回行かれたか、それも存じません。
ですけどね、私は、中国との対話は重要だと思っているのです。この北朝鮮に対してどう対応するか、中国の懸念をどう払拭していくかというために、今、外務大臣がおっしゃった中に中国も入れて、きちんと話をすべきではないのですか。
岡田国務大臣 六カ国協議への復帰まで、まず復帰を求めるということについて、日中韓とアメリカ、四カ国の間で、その意思の違いといいますか、考え方の違いはございません。
石破 私はね、もういいです。
中国と本当の関係を結んでいこう、この地域で北朝鮮のこういう状況を何とか打開しよう、中国と特別な関係を結んでいかねばならない、その議論はきょうはしませんがね、その思いをお持ちの総理です。だとするならば、この問題についてもきちんとした議論をしていかねばならない。
そして、韓国で、あるいは台湾で、この普天間基地の移設問題というのが大きな不安を招いているということも御存じだと思います。この議論を進める上において、前回も申し上げましたが、日米安全保障条約は日米間だけのものではありません。極東の平和と安定、これも日米安全保障条約の目的なのです。韓国がどう考えているか、あるいは、これは政府としては聞けないのかもしれないが、台湾がどう考えているかというのも、非公式ルートで幾らでも聞けるでしょう。
この問題、すべてよく議論を詰めていただいて、もう政権をおとりになって四カ月なんです。五月の末まで、二、三、四、五、あと四カ月です。私たちはどんな議論をしてきたか、そのことがもし必要であれば、幾らでもお話をいたします。なぜこうなったかもお話をいたします。まだ政権をとって日が浅い、そういうことではないと思っております。ぜひ、この点はよろしくお願いを申し上げます。
次に……(鳩山「委員長」)あ、総理どうぞ、何かあれば。
鳩山 先ほど中国の話がありました。中国に対しては、様々、我々としては、軍事的な意味での注視をしなきゃならない一方で、北朝鮮の問題の解決のためには大変重要な国だという認識は持っております。
先般も、参りましたときに、温家宝総理が、北朝鮮に行かれて、さまざまな情報を私どもに提供された。そういう情報というものが大変大きな意味を持ちますから、私は、今、石破委員がお話しされた、日米はもとより韓国そして中国、この四カ国というものの、北朝鮮の、例えば核、ミサイル、そして、我々、拉致の問題がありますけれども、この問題を解決するために、大変連携をしっかりとらなきゃならない、その認識は持たせていただきながら、だからこそ、その日米の安全保障のところに揺らぎがあってはなりませんから、普天間の問題に関してしっかりと対処していくということでございます。