自民党谷垣禎一氏の代表質問 1 平成23年9月14日 衆議院本会議 |
動画:http://www.youtube.com/watch?v=u3-Xoc23Z4E
(長さ15分)
横路議長 これより会議を開きます。国務大臣の演説に対する質疑に入ります。谷垣禎一君。(拍手)
谷垣 私は自由民主党・無所属の会を代表して、昨日の野田総理の所信表明演説について質問致します。先般の民主党代表選では、当初の劣勢を覆すための多数派工作を優先し、かつ、代表・総理就任後は党内融和の人事に努めたためか、総理ご自身の持論はいまだはっきりとしません。本日は総理としての経綸を堂々と語っていただきたいと存じます。
台風被害に速やかな激甚災害の指定を
まず、今般の台風12号に伴う豪雨被害について、亡くなられた方に深く哀悼の意を表すとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。私も現地に伺いましたが、記録的な集中豪雨によって甚大な被害が生じています。地域の孤立あるいは土砂ダムの崩壊のおそれといった住民の方々の不安を払拭するため、迅速な激甚災害の指定と予算措置等による十分な対応を強く求めます。
また、東日本大震災についても、仮設住宅におられる方を含め、いまだ8万人を超える方々が不便な避難生活を余儀なくされております。こうした災害について、 被災地・被災者に寄り添いながら、一人一人にきめ細かな生活支援の手を差し伸べるとともに、被災地全体としての復旧・復興を早期になし遂げることは、党派を超えた責務であります。
3月11日以来、わが党は長らく政権を担ってきたことで培った知識と経験、草の根のネットワークなど持てる力を総動員し、その対応にあたってまいりました。初期段階における緊急物資の支援や政府への申し入れに始まり、政策提言においても3次にわたって577項目を挙げ、精力的に働きかけました。これらの提言に基づき、政府は十数本の法案を提出・成立させる運びとなり、それで足らざる部分についても、わが党主導の議員提出法案により、復興基本法や津波対策推進法などをはじめ、多々成立に至っております。一日も早い復旧・復興を成し遂げるべく、腰の重い政権、行政府を日々督励することで、野党としての責務を果たしてまいったわけであります。
さらには、発災直後は政府が全力で人命救助や原発の鎮静化等にあたるべく、国会審議を一時取り止め、その後は各党・政府との協議会を設置するなど、国会運営においても十分に協力してまいりました。震災に関わる政府提出法案についても、合意を得るべく修正案を提示することをもって与野党協議に積極的に応じ、成立に至っております。
与党は早急に復旧・復興対策を示せ
わが党は、この復旧・復興について、政権に全面的に協力するとともに、自民党こそが、これらを成し遂げ、その任を担うにふさわしい政党だとの気概を持って、今後とも総力を挙げてまいることを国民の皆様にお約束いたします。(拍手)野田総理におかれても、こうしたわが党の決意を真摯に受け止め、政府・与党として十分な内容の復旧・復興対策を早急にとりまとめ、我が党にお示しください。その際は、胸襟を開いて協議に応じたいと存じます。
復旧・復興のための与野党合意を速やかに履行せよ
なお、わが党は今後編成される第3次補正予算については、復旧・復興施策や経済対策を盛り込んだ17兆円に及ぶ原案を、7月上旬には作成済みです。これは既に先の政権にも提案してありますので、十分に今後の予算に反映していただくとともに、既に自民党が提出している3法案、すなわち二重ローン救済法案、私学復旧助成法案、原発事故調査委員会法案についても、臨時国会において早急に結論を得るとの合意が与野党間でなされております。政府・与党は復旧・復興を促進するため、その合意を迅速に履行されることを強く求めます。
綱領を定めるつもりはあるか?
さて、このたび野田政権は、総理の醸し出す雰囲気が、上滑りな発言・行動を繰り返した鳩山元総理大臣や菅前総理大臣とは好対照をなしているとの受け止めもあり、ひとまず高い支持率でスタートしましたが、替わったのは民主党政権の表紙に過ぎなかったことが早くも露呈しつつございます。
すなわち、一川防衛大臣の「安全保障の素人」発言、小宮山厚生労働大臣の唐突なたばこ一箱700円への増税発言などが相次いだかと思うと、鉢呂経済産業大臣が失言と福島県民を冒涜する子供じみた振舞いを繰り返した末、辞任するという事態に陥りました。重厚に見える表紙を1枚めくった途端、浅薄な思いつきと不用意な失言・行動のオンパレードという民主党おなじみのドタバタストーリーが繰り広げられおり、所詮中身は変わっていないのだなという思いを強くせざるを得ません。
私は、党の綱領すらいまだ定まっていないという事実が、民主党のこうした体質の根源と考えます。政党は、本来、共通の政治理念をもつ政治家の集まりであり、政党には、その政治理念を実現するための政治目標を示した綱領があるのは当然です。わが自由民主党は、自助・共助・公助の理念に基づく綱領を定めております。ところが、民主党は、単に政権交代だけを目的とした寄せ集め的な選挙互助会に過ぎないために、綱領がないという国際的にも稀な政党となっています。 社会党の綱領の下にいた方々、国家より市民という市民運動家、我が党から出ていかれた方や既存政党の壁に阻まれ、やむを得ず新党に身を寄せた方、空いている選挙区から当選した方々もおられます。このように野田総理という表紙の下には、綴じられてすらいない薄っぺらな紙がただバラバラ積み重なっているだけです。このような成立からして無原則、無責任、無秩序な民主党が、思いつきから来る不用意な発言・行動を繰り返す閣僚を輩出し、国家の大事にどのように臨むかについて無定見なまま、右顧左眄し、ときには児戯に類した振る舞いを繰り返すのは、ある意味当然の帰結とも言えます。
野田総理は、民主党代表選の過程で、わが党や公明党との大連立を「101回プロポーズしてでもなし遂げたい」とおっしゃいました。しかし、綱領すらない政党は、政党としての基礎的な要件を欠いており、野田総理ご自身は「民主党が大好き」とおっしゃいましたが、われわれから見れば婚姻年齢にすら達しておりません。先程来申し述べた通り、東日本大震災からの復旧・復興には党を挙げて協力してまいりますが、それ以上の課題を共に解決していこうという思いがおありになるのであれば、今の鵺のような状態から脱して、民主党とは何者なのかというアイデンティティをはっきりさせていただくため、綱領をしっかり作っていただきたいと存じます。(拍手)民主党代表として綱領をお定めになる気があるかどうかお答えください。
三党合意を守るか
復旧・復興についてのわが党の協力姿勢は先ほど述べたとおりでありますが、政府・与党に構造的な問題があれば、野党がいくら協力したところで事を成すことはできません。そこで、国政の基本方針について、その方向を大きく左右する民主党のマニフェストについての取扱いについて伺います。過去の過ちに対する真摯な反省、謙虚な姿勢を欠いていては、そこに何ら進歩はありません。
先般、わが党と民主党、公明党は民主党マニフェストの見直しについて合意いたしました。野田総理は、内閣発足に際してわれわれに対し、「約束したことだから信頼してください」と述べられました。その遵守を確約されたわけでありますが、公党間の合意は守られるのが当然であって、そもそも民主党代表選でこれを白紙に戻すかのような主張をする候補がいたこと自体が異常であります。しかも、その候補が相当数の得票を稼ぎ、かつ党内融和の掛け声の下でその多くの支持者が政権入りしたのを目の当たりにすれば、幾ら野田総理ご自身は誠実そうに見えても、果たして本当に三党合意が守られるかについては、大きな危惧を抱かざるを得ません。
さらに申し上げれば、その野田総理からして、代表選で示した自らの政権構想の中では「今こそ、マニフェストを含め政権交代の原点に立ち戻る時」と明言されており、一体どちらが本心なのか測りかねます。まず伺いますが、この代表選での政権構想は三党合意とは明確に矛盾しており、悪く言えば野田総理は二枚舌をお使いになっているのではないかと考えますが、どのように理解したらよいか、総理の見解を伺います。(拍手)
子ども手当は廃止、児童手当復活と認識しているか
本当の誠意というものは態度に表れるものと考えますが、三党合意の直後に、民主党が組織を挙げて「『子ども手当』存続します」という題名で、三党合意で子ども手当の恒久制度化が決まったかのようなビラを35万枚も用意・配布し、党の機関誌にも同様の記事を掲載させたことは唖然とさせられました。
三党合意では、24年度以降の制度について「児童手当法に所要の改正を行うことを基本とする」と明確に記載されており、報道各紙の受け止めも「子ども手当廃止、児童手当復活」というものであったのに対し、舌の根も乾かぬうちに何を根拠にこのような荒唐無稽な解釈を持ち出せるのか、理解しかねるものでした。 最終的にわが党の抗議で撤回されたとは言え、一向に過ちを認めようとせず、自己弁護に終始し、公党間の信義どころか国民をも欺き続ける民主党の体質をまざまざと見せつけられたと感じたものでありました。
改めて、新たに民主党代表になられた野田総理にこの事件に対するご見解を伺うとともに、三党合意を踏みにじった行為に対し、明確な謝罪を求めます。その上で、三党合意の解釈として、戻るべき原点は民主党マニフェストの子ども手当ではなく、自公政権時代の児童手当であることを改めて明言していただきたいと存じます。わが党では、今回の三党合意について、子ども手当については撤回され、児童手当を復活させるととともに、その内容を拡充することが合意されたと 支持者に説明していますが、野田総理の認識も同様であるかどうか念のため確認いたします。
マニフェスト未達成の要因をごまかしてはならない
子ども手当ビラに表れた民主党の体質は、8月26日に公表された「マニフェストの中間検証」にも如実に表れております。そこでは、既に国民の大多数が出鱈目であったと認識している民主党マニフェストが実行できていない要因について、想定外の税収減、ねじれ国会、更には東日本大震災といった外的要因のせいであるというこじつけを行うことに終始しています。マニフェスト策定時の財源面の検討・検証が不十分であったという点については、あくまで二の次という取扱いにされていますが、こうした順序でマニフェスト未達成の要因が語られることについて総理は適切とお考えでしょうか。真摯な反省が足りないと考えますが、お考えをお聞かせください。
具体的に申し上げれば、マニフェストで9.1兆円行うこととされていた歳出削減が2年間で2.6兆円にとどまったということについて、税収が減ったから、 あるいはねじれ国会があったから、財務副大臣や財務大臣であった野田総理や行政刷新担当大臣であった蓮舫大臣が大鉈を振るえなかったとするのは苦し過ぎる言い訳であります。さらには、この2年間の予算は(続く)