自民党谷垣禎一氏の代表質問 2 平成23年9月14日 衆議院本会議 |
(長さ15分1秒)
(承前)震災前に編成されており、財源が捻出できなかったこととは全く無関係であります。従って、マニフェストの目標削減額が所詮絵空事であったか、野田総理や総理(ママ。自民党HPでは蓮舫と表記)大臣が十分な仕事をなされなかったかのいずれかでしか説明できないはずですが、そのいずれとお考えか、総理の見解を求めます。
マニフェストの構造的問題点への理解は?
なお、これらマニフェストの構造的な問題点については、民主党政権発足以来、鳩山元総理、菅前総理を通じて再三再四私から指摘してきた事柄でありますが、耳を覆って一顧だにされませんでした。野田総理は、これらを理解していただけるかと期待しておりますが如何でございますか。
朝鮮学校授業料無償化を撤回するか
マニフェストの個別政策についてさらに申し上げます。高校授業料無償化については、菅前総理が退任間際のどさくさ紛れに朝鮮学校の無償化手続の再開を高木前文部科学大臣に指示しましたが、これは国民不在の許しがたい暴挙です。朝鮮総連の傘下にあり、その思想教育の是正も行わず、「国際的・国内的な状況を砲撃事件以前に戻ること」とされた手続き再開の条件も満たされておりません。三党合意との関係でも、高校授業料無償化について見直しを行うこととなっている以上、朝鮮学校を無償化の対象とする是非についても、当然見直しの俎上に載せて然るべきであります。にもかかわらず、民主党政権が勝手に無償化手続の再開を決定し、野田内閣になってもなおこれを撤回しないことは、重大な背信行為と考えます。(拍手)直ちに撤回を求めますが、お考えを伺います。
来年度予算概算要求での高校授業料無償化と農家の戸別所得補償の取り扱い
さらには、三党合意においては、「高校無償化及び農業戸別所得補償の平成24年度以降の制度のあり方については、政策効果の検証をもとに、必要な見直しを検討する」とされ、これらを含めて24年度予算の編成プロセスなどにあたり、誠実に対処する」こととされております。これに対し、野田総理が8月23日に財務大臣として策定された「平成24年度予算の概算要求作業について」には、「『高校の実質無償化』及び『農業の戸別所得補償』については、所要の額を要求する」とされており、東日本大震災からの復旧・復興対策に係る経費と同様の表現とされていることは問題と考えます。こうした表現は、あたかも制度の維持に必要な金額は幾らでも要求できるかのような表現と言わざるを得ず、これに沿って概算要求がなされるとすれば、予算編成プロセスにおける誠実な見直しを求めた三党合意に明確に違背することになると考えますが、いかがでしょうか。野田総理自らが策定された文書に関わる問題であります。ご見解をお聞かせください。
この朝鮮学校の高校授業料無償化審査手続の再開撤回と9月末の概算要求段階におけるマニフェスト施策の見直しは、野田政権の三党合意遵守に向けた試金石であります。わが党としてその動向を注視し、その実現を徹底的に求めていきたいと考えております。
閣僚人事に際してマニフェスト策定の責任と真摯な反省を確認したか
民主党マニフェストは、結局、内実はバラバラで政党の体をなしていない民主党ゆえに編み出された欠陥商品です。すなわち、本来、限られた財源の使途については、侃々諤々の党内議論を調整する必要があるはずですが、そうした総合的な調整が図られることなく、子ども手当に関しては小宮山議員、高校無償化については鈴木議員、高速無料化は馬淵議員、年金改革については古川議員といった、分野ごとに最も大きな夢、つまり空論を語った議員の意見が悉く採用され、いわば「最大公倍数」のような安易な積上げで作られたのでありまして、そんなものが実現可能性に乏しいのは当然のことであります。
今回の組閣では、閣内に小宮山厚生労働大臣、古川国家戦略担当大臣といった、マニフェストを巡る混乱のそもそもの原因を作った方々が顔を揃えており、これではマニフェスト見直しがきちんと進むかについて率直に懸念を感じます。各大臣の任命に当たってマニフェスト策定に対する責任をきちんと考慮に入れ、それに対する真摯な反省を確認した上で任命を行われたのかどうか、総理に伺います。
マニフェスト全体を撤回して国民に信を問え
改めて振り返れば、マニフェストは、バラマキ4K政策や年金制度改革のみならず、後期高齢者医療制度の改革、自動車関連諸税の暫定税率の廃止、温室効果ガスの25%削減をはじめとした産業空洞化政策など、絵空事とも言うべき空論のオンパレードであり、政策効果や実現可能性の検証も十分になされておらず、また実際に殆ど実現していません。また、「コンクリートから人へ」というスローガンも、この相次ぐ大規模災害を経験してみると、被災地の不安を煽るものとしかなっておりません。はたしてその総括はなされたのでしょうか。さらに、野田政権は、東アジア共同体構想の否定、政調会への法案事前審査制の導入、事務次官会議及び自公政権下の経済財政諮問会議の事実上の復活など、マニフェストからの逆走を加速化させており、もはやマニフェストは、やるべき政策のポジティブリストではなく、やらない政策のリストか、やってはいけない政策のネガティブリストではなかったのかと思わせるほどであります。(拍手)
これでは、この民主党マニフェストの上に成り立っている民主党の現在の多数の議席、ひいては民主党政権の正統性は、完全に崩壊したと言わざるを得ません。(拍手)黒を白と言い続ける苦しい言い訳に終始するのではなく、潔くマニフェスト全体を撤回し、有権者にお詫びをしたうえで信を問い直すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。(拍手)
次に、野田総理ご本人の宰相としての資質に関して伺います。
過去2年間の総括、反省、責任についてどう考えるか
総理は過去2代の民主党政権において財務大臣をはじめとした要職、最重要閣僚のポストにありました。いわばその失政に関して連帯責任を負うてしかるべき立場です。その総理から過去の反省について何ら聞こえてこないことは無責任の誹りを免れません。この政権を担うことの責任感も所信表明演説からは感じられませんでしたが、まずはこの2年間の政権の総括・反省、自らの責任について、総理の基本的な考えをお聞かせ下さい。
鉢呂経産大臣の任命責任
また、無反省なのは民主党政権のお家芸の感があり、新政権発足直後から、党役員や閣僚の無責任な放言がやまないところです。その中でも、被災者の心を踏みにじる鉢呂前経済産業大臣の振る舞いは、とりわけ看過できません。この件は、泥にまみれて仕事をするための適材適所ではなく、党内融和ばかりに心を砕いた不完全な組閣の結果であり、総理の任命責任についても厳しく問わざるを得ません。復旧・復興の妨げとなる大臣を閣僚に任命したことに対して総理はどのような責任をとられるのか、誠意ある回答を求めます。
保守の理念と行動の齟齬
資質に関して、野田総理の政治家としての理念について伺います。総理は「保守」の政治家を標榜されているようですが、その実態は極めて疑わしいものがあります。先ほど述べた綱領なき政党に所属していることはもちろん、総理は「国民の生活が第一、マニフェストの理念は堅持する、中間層を厚くする」との姿勢です。しかし、マニフェストに掲げられたバラマキ施策が中間層を厚くするのではありません。中間層とは自助努力による安定的な経済成長に支えられた、安定的な雇用とそれによって得られる所得によって作られ、維持されていくものであります。経済政策の基本はもとより、バラマキを排し、あくまで自助を重んじる保守の理念をまったくもって理解されていないのか、あるいは党内向けにあえて詭弁を弄しているのか、総理の見解を求めます。それに加え、日教組のドンたる輿石参議院議員を幹事長に据えて党運営や政策について重責を担わせたこと、子どもは家庭ではなく社会で育てるという理念に基づく子ども手当を創出した小宮山厚生労働大臣など、総理の保守哲学に相反する人事についても、保守政治家としての矜持を失い党内の声に抗しきれなかった結果とも思えますが、総理の認識をお聞かせ下さい。
政治資金問題への説明責任と小沢元代表党員資格停止処分の取り扱い
一向にやまない民主党の政治資金問題について伺います。鳩山元総理の「子ども手当」問題、小沢元代表の陸山会事件、前原政調会長の外国人や脱税関係企業からの献金問題、同じく蓮舫行政刷新担当大臣の脱税関係企業からの献金問題、そして野田総理ご自身も外国人及び脱税関係企業からの献金問題を抱えておられます。 クリーンな政治を掲げる民主党内に蔓延するこの風土病について、誰からも十分な説明はなされてきませんでした。総理は国会においても説明責任を果たすべきでありますが、この場においてもその経緯と責任について、誠実な答弁を求めます。これに関して、小沢元代表の党員資格停止処分の取扱いについても、今後どのような方針で臨まれるのか、併せてお答えください。
その他、内政・外交に関わる政策の各論について伺います。
復興財源について統一方針を示せ
現在政府・与党において検討されている第3次補正予算について、その財源が大きく取り沙汰されております。先の民主党代表選において、野田総理とその他4人の候補者の間で、最も大きな見解の相違が見受けられました。しかし、財源なくして責任ある政治は行えません。第3次補正予算の復興財源は、財政規律に対する揺るぎない決意を内外に示し、国債市場への信認をも高めるべく、増税により償還を明確に担保された復興債によって全て賄うのか、建設国債を発行することもありうるのか、総理は明確にお答えください。また、日本郵政の株式の売却益を充てることも検討されているようですが、問題点も多々指摘されており、政府・与党の統一された方針としての答弁を願います。
党内意見集約への決意を問う
こうした中、政府の税制調査会の議論は混沌としているようですが、復興基本法、復興の基本方針、さらには野田総理が代表選を通じて主張した方針と齟齬を来すような意見が政府内部から平然と聞こえてくるところに、民主党政権特有のガバナンスの欠如を感じます。野田政権の一員である各府省の政務三役がこのような主張を繰り返すようでは、政権の体をなしません。意見集約への総理の決意をお聞かせください。そのうえで、党内融和を掲げる総理におかれては、是非挙党一致での覚悟を伴った具体的な成案を我々にしていただき、また、国民に問いかけていただくことを期待しますが如何でしょうか。
事業仕分けの実態をいかに認識しているか
歳出削減については、捗々しい実績が見られないことは先程申し上げた通りでありますが、こうした状況を見るにつけ、一世を風靡した「事業仕分け」とは一体何だったのかという思いを強くせざるを得ません。昨年の仕分けに至っては、民主党政権の下で閣議決定に盛り込まれた施策や、政治主導の名の下に各府省政務三役が概算要求に盛り込んだ施策、さらには一昨年の仕分けで一旦廃止とされたはずの施策までが仕分けの対象とされており、マッチポンプショーもいいところでした。また、最も仕分けの対象としてふさわしい民主党のマニフェスト自体が対象となってこなかったことは不当と言わざるを得ません。(拍手)公開の場の議論をあえて避け、身内の検証に委ねてきた結果が先程の客観性を欠いた「マニフェストの中間検証」だった訳です。野田総理はその担当者であった蓮舫大臣を改めて行政刷新担当大臣に任命しましたが、馬脚を表したと言える行政刷新会議にこれ以上何を期待しているのか、蓮舫大臣も目的は財源確保のためではないと予防線を張られているようですが、総理の考えを伺います。
法にのっとり今年度中に税制改革法案を提出するか
消費税を含む税制抜本改革については、平成21年度税制改正法附則第104条において、23年度中にその法制上の措置を講ずることとされており、次期通常国会にはいよいよ消費税率引き上げの幅と時期を含む具体的な税制改革の内容を盛り込んだ法案が提出されることとなります。まずは法案をスケジュール通りに提出するのかどうか、総理の強い意志を再確認するとともに、これに向けてどのような準備を進めていくおつもりか、お答えいただきたいと存じます。
6月の「社会保障・税(続く)