自民党谷垣禎一氏の代表質問 3 平成23年9月14日 衆議院本会議 |
(長さ8分32秒)
(承前)どのような準備を進めていくおつもりか、お答えいただきたいと存じます。
消費税率引き上げと解散
6月の「社会保障・税一体改革成案」策定の過程では、民主党内では、経済状況の好転を実施の条件にすべきなどといった意見が強く、消費税率が10%に引き上がる時期も「2010年代半ば」などと曖昧になりましたが、消費税率の引上げ時期については、徒な先送りにつながらないよう、その考え方を整理する必要があると考えます。その際、民主党は消費税率引上げについて国民に信を問うこととしているものの、あくまで引き上げ時期は、政治的な解散時期との関係ではなく、経済情勢との関係で決せられるべきであり、民主党の自己都合の結果として、経済との関係で不適切な時期に消費税率が上がることになっては本末転倒であります。
具体的には、任期満了まで引上げ時期を先送れば、施行までに法案提出後1年半以上という長い期間を空けることになり、タイミングを逸することとなりかねません。むしろ、施行を前倒しし、その前に信を問うという判断も必要になるかと思いますが、いかがでしょうか。お答えください。
いずれにしても、消費税を含む税制の抜本的改革については、先程申し述べた東日本大震災からの復旧・復興対策経費に係る税制措置の動向なども踏まえつつ、総合的に具体的な設計を図る必要があります。まずは民主党内でお家芸の百家争鳴の状態を乗り越え、政府・与党一体の揺るぎないご提案として具体案をお示しいただいたうえで、われわれも協議に応じるのが政党政治の王道ではないでしょうか。
普天間問題解決への具体的方針
歴代の民主党政権の泣き所でもある外交・安全保障について伺います。鳩山元総理は、普天間基地移設問題で迷走を重ね、沖縄県からの信頼関係も大きく損ねたうえに、日米同盟にも大きな傷跡を残しました。野田総理は日米同盟重視を掲げておられますが、この沖縄県との基本的な信頼関係が欠如したままで、今後普天間問題をどのように解決に導くのか、具体的な答弁を求めます。
外交・安保の基本方針は?
また、総理は、「東アジア共同体などといった大ビジョンを打ち出す必要はない」と考えておられるようですが、これは鳩山政策(ママ)の外交政策・理念を否定するものなのでしょうか。外交・安全保障政策については、一川防衛大臣の「素人発言」に端無くもあらわれたように、当該分野についての経験不足の感は否めず、野党としても非常に心配するところであります。総理の基本的なお考えをお答えください。
前政権の原発事故対応とエネルギー政策を引き継ぐのか、変えるのか
福島原発事故の収束に向けた対応とエネルギー政策について、総理の所信表明演説を伺う限り、今後の方向性はいまだ曖昧模糊として不透明との感が否めません。先の見通しが立たないままでは、被災者の生活不安と企業の電力不足への懸念を払拭することも覚束ないわけであります。今後の経済成長にも重大な影響を与えるこれらの問題について、菅前総理は「脱原発」を華々しく掲げました。野田総理はその内閣において重要閣僚の座にあったことに加え、中心となって原発対応にあたった枝野前官房長官を経済産業大臣に任命されましたが、この路線を引き継ぐのか転換するのか明確にお答えください。
なぜ4日で国会を閉じるのか
本日は野田政権の基本姿勢等について伺いましたが、予算委員会も開催せず、僅か4日で臨時国会を打ち切るなど、これは国民に対して説明責任をまったく果たさない暴挙であると言わざるをえません。(拍手)この「与党の審議拒否」に断固抗議いたします。大震災からの復旧・復興や円高対策等、国会で議論すべきことは山積しております。場外の与野党協議ばかりを求めながらも国会審議を行わないとは本末転倒、国会軽視も甚だしい限りであり、これでは容易に協議に応じるわけにもまいりません。なぜ早々に閉じるのか。本件は与野党の信頼関係を大きく損ねることでもあり、国民に対して納得のいく説明を総理に強く求めます。(拍手)
野田総理は、国民から見放された鳩山元総理・菅前総理とは異なり、一見ポピュリズムや思いつきを排除した路線でスタートされましたが、民主党の体質そのものが変わらない限り、早晩行き詰まることは必定であります。本来は民主党の党内改革こそが必要なのでしょうが、党内融和を強調する総理には、早くからその選択肢を放棄してしまったようであります。このままでは国民のために泥臭く働く前に、民主党の泥沼、泥縄体質にからめ捕られて、鳩山政権、菅政権同様に奥底に沈んでいくだけに終わりかねません。
また、信なくば立たず、政権の正統性が無ければ、結局は国民の支持は得られず、立ちゆかなることは必至であります。マニフェストの見直しや、かつてはあれほどわれわれを非難した信を受けないままの総理たらい回し、貴方の著書によりますと、与党のトップが交代する際には、民意を問うべきであるとまで言われているわけでありまして、政権の正統性はもはや崩壊しているのは明らかであります。
野田政権や民主党政権の本質はどこにあるのか、今後とも明らかにしていく必要がありますが、今般こうした不都合な真実を覆い隠すべく、予算委員会も開かずに済ませようとしたことには、民主党の構造的な隠蔽体質が改善されていないことを示します。(拍手)
今や民主党は、自民党を否定することによってのみまとまりを維持し、政権の座に居続けることだけがその存在目的となったことは、先般の不信任案の際の菅前総理と鳩山元総理の合意によって明らかとなりました。その民主党から協力をと呼び掛けられたところで、単に国会運営を円滑にするための多数派工作に堕してしまいかねません。
この正統性なき政権が居座る理由に、震災復興を挙げています。しかしながら、マニフェストを見直したことで、虚偽で政権を簒奪したまま、被災地も含めた全ての国民との契約違反の状態がこれ以上続くことに対して、どう弁明なさるのか。これには正心誠意の真心ならぬ下心を感じざるをえません。
野田政権の政権運営は、本当に真心からのものなのか、党内をまとめ、国民を欺くための中庸の殻をかぶった妥協の産物、二枚舌に過ぎないものなのか、われわれは国民とともに、厳しく見極めなければなりません。野田総理の人物が「本物」であれば、現下の政治的・政策的矛盾を解消し、被災地のみならずわが国が復興するための方法は一つしかないことを、その真心から理解されることを期待し、私の質問を終わります。