自民党古川禎久氏の代表質問 1 平成23年9月14日 衆議院本会議 |
(長さ15分0秒)
衛藤征士郎衆議院副議長 古川禎久君。(拍手)
古川 自由民主党の古川禎久です。私は自由民主党・無所属の会を代表し、野田総理の所信に対して質問を行います。
質問に先立ち、改めまして、東日本大震災、そして台風12号によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族および被災地の皆様に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
16年前の阪神淡路大震災で当時震災対策担当大臣を務められた小里貞利元衆議院議員から先日お話を伺う機会がございました。小里先生はこうおっしゃいました。震災という非常時において、部下である官僚の諸君が「大臣、現行法ではここまでしかできません」と言ってくることがよくある。私が「かまいません、そのまま進めてください。君たちを信頼しています。何かあったら責任は私が取ります」こう申しましたら、官僚の諸君は喜んで仕事をしてくれて、3日後にはこれ、2週間後にはここまでという具合に作業がはかどったのです、とおっしゃいました。
私はここにリーダーの本質を見ます。それは、リーダー自身が決断をすることであります。そして、指示を下し、その結果について責任を取る覚悟を持つことであります。決断し、責任を取る覚悟、これすなわち勇気と言っていいかもしれません。
未曾有の大震災が我が国を襲った時、あるいは無法なる外国が我が領土領海で攻撃的不法行為に及んだ際、あるいは我が同胞が異国の地において正当な理由なく拘束された場合において、国を預かる最高指導者は本来この勇気をもってことにあたらなければならなかったのであります。(「そうだ」などの声。拍手)
今般新たに首班指名を受けられた野田新総理には、何よりもまず、一国の指導者として、この勇気と品格をもって国の大事に当たっていただきますことを、強く、強く、望むものであります。(拍手)
「ノーサイドにしましょう、もう」の「もう」は、少なからず国民の心に響きました。私を含めてであります。(拍手)そのひと言に新総理の誠実なお人柄を見たからこそ、国民は新鮮さを感じ、期待をし、高い支持率を与えたのだろうと思います。
しかし、あえて苦言を呈します。国民の潜在意識にあったのは、政府は、国会は、一体何をやってるんだ、いいかげんにしてくれ、もう、の「もう」なのであります。民主党の党内抗争をどう収めるかは、ひとえに民主党自身の問題であって、国民はそのツケを払わされる立場にはないということを忘れないでいただきたい。(拍手)
一川防衛大臣の適格性を問う
実際、総理が民主党の党内融和を最優先にされて徹底した派閥人事をなさった結果、できあがった内閣は果たして適材適所と言えるものでしたか? 閣僚一丸となって職責を果たすべしとの総理所信とは裏腹に、新閣僚による不適切・不見識な言動が後を絶たず、既にひとりの閣僚が辞任を致しました。9月2日には一川防衛大臣も、「安全保障に関しては素人だがこれが本当のシビリアンコントロール」などと発言をしております。中国の領海侵犯、ロシア艦船の海峡通過、あるいはロシア爆撃機の飛来。近隣諸国が我が国の姿勢を瀬踏みするかの行動を続けている中で、使命感も知識も持たない人物を防衛大臣に任命したことの責任を総理はどのように感じていらっしゃいますか。一川氏をこのまま防衛大臣として持ち続けることは、安全保障に関する我が国の基本姿勢について外国に誤ったメッセージを送り続けることになるのではありませんか。総理の答弁を求めます。(拍手)
総理は所信表明演説の中で、内閣が取り組むべき最優先課題として、東日本大震災からの復旧・復興と世界的な経済危機への対応を掲げられました。国家が直面するこれらの重要課題を乗り越えるために、我々自由民主党も引き続き、持てる知見、経験の全てを捧げ、事にあたってまいります。多くの国民の皆様は、与野党は政争に明け暮れていると言って憤っておられます。しかし実際には、先の通常回におきましても、たとえば野党である我が党議員の法案作成から成立までを指導する場面が少なからずあったこともまた事実です。官僚主導ではなく、議員自ら昼夜なく法案作成にあたる様子を、私はこの目でたくさん見てまいりました。志高き有能な同僚議員諸兄を、私は誇りに思います。野田内閣下の国会におきましても、自由民主党は、協力すべきは全力で協力し、努力を惜しまないことを、改めて国民の皆様の前で申し上げておきます。(拍手)
さらに、改めて今国会をわずか4日で閉じようとされることには抗議を申します。先の国会で我が党が提出した二重ローン救済法案、そして原発事故調査委員会設置法案、これについてはこの臨時国会で成立を見るという約束をいただいているはずでございます。4日で閉じるということは不誠実であります。
さて、民主党は綱領を持ちません。政権獲得の原動力となったマニフェストも今は紙切れとなりました。野田新総理が一体日本国をどこへ導こうとされるのか、野田総理の国家観は一体どのようなものなのか、国民は未だ知りません。そこで私は、谷垣総裁から質問のあったテーマを除き、国家主権に関わる課題を中心に総理のお考えをお聞きしてまいります。(会場「がんばれ」など)
靖国参拝についてなぜ姿勢を変えたのか
8月15日、私は谷垣総裁と靖国神社を参拝いたしました。モーニングを着て昇殿参拝し、英霊に感謝の誠を捧げ、国を守るという決意を新たにいたしました。私は4月28日にも可能な限り参拝をいたしております。この日はサンフランシスコ講和条約発効の日であり、我が国にとって主権回復の日でもあります。現在は過去の延長上にあります。先人の努力に対する感謝の念なくして輝かしい未来など期待すべくもありません。およそ国に殉じた方々に対して最大限の礼を尽くすことは、国家として最低限の責務であります。(拍手)
にも関わらず、野田総理は就任後、靖国神社に参拝しないと明言されております。普段は何の躊躇もなく素直に靖国神社にお参りなさる総理が、なぜ考えを変えられたのでしょうか。菅内閣では、昨年も、そして一昨年も、ひとりの閣僚の参拝もありませんでした。そしてまた、野田新内閣総理大臣も、国のために殉じた方々に感謝と敬意を表することをしないという。そんなことで本当に日本の危機を克服できるのでしょうか。答弁を求めます。
A級戦犯分祀論への見解は?
いわゆるA級戦犯の分祀論というものがございます。中国や韓国もこのような主張をしているようでございますが、そもそもかの国々と我が国の間では死に関する文化が全く異なります。日本では、どのような方であろうと、亡くなれば神になり、仏になるのであって、その御霊をお慰めするというのが日本人の素直な宗教観であり、死生観であります。日本国は日本人の死生観に従って静かに殉国者を慰霊するべきである、いかなる内政干渉も排するべきだと考えますが、総理はどのようにお考えでしょうか。(拍手)
また、A級戦犯とはまさに東京裁判によって貼られたレッテルであります。総理は所信の中で「日本人の誇り」という言葉を使われましたが、その誇りの源泉が祖国の歴史や伝統にあることは、野田総理も重々ご承知のところと拝察いたします。
ところで、民主党代表でもいらっしゃる総理は、東京裁判史観を浸透させるのに主導的役割を果たした日教組の輿石参議院議員を党幹事長に任命されました。輿石氏はかつて、「教育の政治的中立などあり得ない」と、憲法26条国民の教育を受ける権利を侵害するがごとき発言をした人物でもあります。一国の歴史には、輝かしい側面もあるでしょう。恥ずべき側面もあるでしょう。しかし、歴史教育は、いずれかに偏ったものであってはなりません。占領政策の軛から脱し、日本が真の自由主義国家として生きていくためにも、野田総理はこれまで通り素直な気持ちで靖国神社を参拝されるべきであります。
外国人地方参政権付与への見解は?
次に、外国人地方参政権について伺います。鳩山元総理はかつて「日本列島は日本人だけのものではない」と驚愕すべき珍説を披瀝して、外国人への地方参政権の付与を強行しようとしましたし、菅前総理もまた同様でした。しかし、日本国憲法15条は、参政権を国民固有の権利と規定し、外国人への付与を認めてはおりません。また、基地問題、領土問題など、我が国の安全保障上も大いに懸念があるところであり、到底供与できるものではありません。我が国の主権を直接毀損するこの問題について、野田総理はどのようなお考えをお持ちでしょうか。ご所見をお伺いいたします。
菅前総理の外国人献金問題にどのようなけじめをつけるつもりか
総理のみならず、菅前総理、前原元外相への外国人献金が明らかになっています。外国人献金が禁じられるのは、単に政治資金規正法の要請だからというよりも、祖国に報じる政治家としての最低限の良心だからであります。野田総理は、菅前総理の外国人違法献金問題についてどのようなけじめをつけるお考えでしょうか。総理のご答弁を求めます。
外国人献金と外国人参政権付与の動きとの関係
また、党の最高幹部が献金を受けていることと外国人への参政権付与の動きが活発であることが全く無関係なのかどうか、心ある国民は疑っております。その点総理のご説明を求めます。
朝鮮学校授業料無償化を撤回するか
北朝鮮による拉致問題に関連してお尋ねいたします。去る8月29日、退任直前の菅前総理は、突如として朝鮮学校の高校授業料無償化の対象とするよう指示しました。これはいわゆる三党合意に対する重大な背信行為ですが、それ以上に、重大な外交上の失態であります。昨年11月の北朝鮮による韓国延坪島砲撃以降未だ安定しない半島情勢であるにも関わらず、菅氏は韓国および米国との事前調整もなく、外務大臣と意見調整することもなく、全くの独断で退任直前の一瞬の隙を狙ったのでした。これは北朝鮮に対し拉致問題について我が国が軟化したとの誤ったメッセージ(続く)