地盤の復旧と企業の再生 7ヶ月目の現状 平成23年10月5日 衆院復興特 小野寺五典氏 1 |
動画:http://www.youtube.com/watch?v=t4FCWvbuhBU
(冒頭から21分38秒ごろまで。全長は45分31秒。動画のアップロード主handykateさんの完全字幕つき!)
委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。この際、小野寺五則君から関連質疑の申し出がありました。額賀君の持ち時間の範囲内でこれを許します。
小野寺 委員長。
委員長 小野寺五典君。
小野寺 自由民主党の小野寺五典です。よろしくお願いいたします。まず野田総理には先日、総理御就任直後、今回の津波被災地の一番はじめに私どもの地元気仙沼を選んでいただきまして、たいへんありがとうございます。私どもも地元の代表として、現地の譲許をしっかり説明をさせていただきました。また、7ヶ月が既に経ちます。私もこの7ヶ月間やはり振り返ってみると様々な思いがあります。発災直後は、家族を探して、真っ暗な中、避難所をずっと歩き回りました。そのあとは消防団の皆さんと一緒に、瓦礫の中を歩いて、生存者の少しでも救出に役立つように仕事をさせていただいたことが、ついこの間のように思えております。
また、全国から様々な物資が来ました。当初は車が使えなかったので、リヤカーとそれから徒歩で、この物資を避難所や様々な孤立しているところに運んでいった。ヘリコプターを使わせていただいてお医者さんを派遣したことも記憶として生々しいことであります。
また、気仙沼には大島という島がありまして、ここは全部が孤立をしてしまいました。約4000人の島民がおりますが、そこの復旧のために、船がないということでNGO団体にお願いをしましたら、広島県の江田島からフェリーを借りてきていただいて、そしてそれで復旧復興にあたった。そういう思いもあります。
今での多くの支援の方々が、この被災地に足を運んで、お金を出していただいて、物を送っていただいて、支援をいただいております。私どもの現地事務所にも、毎日このようなお申し出が今でも来ております。心から感謝を申し上げたいと思っています。
その中で、残念ながらやはり見えてこないのが、国の復興の姿、国のあり方だと思います。ちょっとパネルをお願いいたします。
皆様のお手元にも写真をちょっとお配りしていると思いますが、これはちょっと恥ずかしいんですが、気仙沼の私の家の前の風景になります。つい数日前の風景です。大潮になりますと、土台が残っている建物のところまで実はこのような水が浸水してきまして、魚が泳いでおります。ですから、当然これから復旧・復興のためには、まず初めにここをかさ上げしないと、何も前に進まない。これが現地の姿です。
総理にまずお伺いしたいのですが、このかさ上げ、私ども被災地のこういうかさ上げの予算、これ5月の時点から、政府に、「早くつけてくれ、早くつけてくれ」とお願いしていますが、このかさ上げの予算というのは、一次二次補正、現在まで予算がついているものでしょうか。教えてください
平野復興担当大臣 こうしたかさ上げ予算、たとえば集団防災移転事業等の中でもできますし、これは三次補正で対応が可能でございます。三次補正が成立すれば可能でございます。なお、ここをですね、たとえば、全面的かさ上げをするのがいいのか、あるいはまた応急処置として大潮のときに水が入ってこないように、ある程度先に低い堤防を造ってしまうほうがいいのか、そういった工法の選択の問題もある、余地もあろうかというふうに思います。
小野寺 今のお話でお分かりの通り、実は、まだこのかさ上げの予算というのは、一円も、予算としてついていないんです。ですから被災地は、今でも何も、実は復興のために前に踏み出していない、そういう状況にあります。まずこのかさ上げの予算、これは今までの政権がおそらく手当てをしてこなかったということだと思います。
野田総理に代わられました。十分な予算をつけていただけるか、まず確認をしたいと思います。
野田 あの、御答弁させていただく前に、先般9月10日、気仙沼を視察した際には、道の駅や市場等々、小野寺議員には御案内と御説明をいただいたことを感謝申し上げたいと思います。
今大臣が答弁しましたとおり、かさ上げについては、第三次補正で実行できるように、実施できるように対応していきたいというふうに思います。
小野寺 かさ上げの予算がついていないので、実は復興の手がまだついていない、まずこれが一番最初だと思います。そして次にちょっと御指摘をさせていただきたいのは、今平野大臣からもお話がありましたが、集団防災移転、私ども高台移転という事業、これは、被災直後から、地域住民からたいへんな要請・要望がございました。ちょっとお伺いをしたいんですが、この高台移転事業、今まで採択を、この震災によって採択された例というのはあるのでしょうか?
平野 手元に個別の地区のリストは持ってきておりませんが、ございます。
小野寺 昨日宮城県に確認をしました。先ほども宮城県知事に直接確認をいたしました。宮城県では、この高台移転事業は一件も採択をされておりません。はい。今回の震災に応じて一件も採択をされておりませんが、いかがでしょうか?
平野 今回の災害についてはまだでございます。
小野寺 政府の様々な審議会でも、あるいは菅総理も高台移転のことに言及して「これをどんどんすべきだ」とお話をされています。ですが実は、事業がありながら、まだ一件も実は採択されていない。ひとつもこの事業が動いていない。実はその理由を是非今日は知っていただきたい。そう思っております。
これは宮城県の南三陸町、この地元でお話を伺ってまとめた、実は数字です。高台移転事業にかかる予算、事業費、これは南三陸町というひとつの町です。そこの総事業費が1395億円。これ、宮城県と町が中心でまとめた数字です。で、この予算で復興するんですが、国が出す予算、これが636億円、そして、県、宮城県が出すお金が113億円、何と南三陸町が出さなければいけないお金が590億円、そしてJRが56億円。この南三陸町が出さなきゃいけない590億円というのは、南三陸町の一年間の総予算が74億円なんです。町長に聞くと、「1億円か2億円出せて限界だ」と。
そうするとですね、590億円出せと言われたら、町の600年分の予算が約必要になってしまう。こういう町と県の負担が過重にあるから、実は事業があってもどこの自治体も手を挙げて、「うちのほうで高台移転してくれ、やりたい」住民はこういう声があっても、自治体はこれを受け取ることができない。これが実は実態なんです。
改めてお伺いをしたいと思います。この実態、今日、総理、前から御存知だったでしょうか。そしてもし、今回この、実際の積み上げの数字が「これはやはりおかしい」とお考えであれば、この町と県の負担を国がしっかり対応する、そのようなお考えを示していただけないでしょうか。
野田 一般的に高台移転についてはコストがかかるというお話は聞いておりましたが、南三陸町の個別のケースは今日初めてこの資料で拝見をいたしました。いずれにしても、被災地の地方公共団体の御要望なども踏まえながら、どうやって現実的に対応できるかということが大事だと思いますので、その点については担当大臣にお答えをさせていただきたいというふうに思います。
小野寺 平野大臣はよくおわかりなので改めてお答えいただきますが、総理に知っていただきたいのは、総理は前財務大臣でいらっしゃいました。ですから、当然この高台移転の予算、事業費のことも知っていて、なぜ、こんなに地元から要望があるのに、高台移転がひとつも採択されないのだろう、なぜ町や県が「高台移転したいので」という申し出がないのだろう、普通は不自然に感じるのが、私は政治家の役割あるいは閣僚の役割だと思います。
異常ですよ。事業があって、住民が「これは大事だ」何度も何度も期待しているのに、一件も事業が採択されない。実はこの地元負担、これを軽減していただきたいという声は、地方自治体から何度も何度も政府に上がっています。ぜひこの認識をしっかり受け止めていただいて、平野大臣にお伺いしますが、是非ですね、この町と県の負担、これはこの際国が全部見ると、本来総理が言うべきだと思いますが、平野大臣に改めてお伺いしたいと思います。
平野 あのう、その前に若干御説明をさせていただきたいと思いますが、集団防災移転事業は確かに採択がございません。ひとつは制度に最終的な詰めをしているということもございますが、それ以上に大事なことは、たとえば先ほどの写真のかさ上げですけども、本当に全面的なかさ上げが必要かどうか。たとえばかさ上げが必要だと言われる地域には、たとえば加工施設と住宅が一緒に混じっています。住宅は多分そこには私はできないと思います。そうしますと、住宅がどこかに移転をしなくちゃならない。結果として空き地が出ますから、同じかさ上げをするにしても、残った施設の集約が必要だと思います。こういった計画作りにはですね、これは何回も申し上げてますけれども、合意作りに時間がかかります。
それから、集団防災移転事業についても、もうこれは小野寺先生が一番お分かりだと思いますが、ここに移転してくださいという総論はOKになったとしても、その地域住民の合意を取るのにまた時間がかかります。さらに、ここに移転すると言っても「どういう町並みを作りますか」ということについて、また合意がかかります。ですから合意を得るのに時間がかかります。
で、今その計画を、気仙沼市内であれば気仙沼市と、南三陸町であれば南三陸町と、県と国も今そこに入って計画作りをしてまして、この計画ができてある程度の住民の合意ができた段階では予算はどんどんつけます。ただしその時に、あまりたとえばここ全部かさ上げしましょうと言った時にはコストがかかりますから、じゃあ土地の集約をしましょうということで、そこのコストがかからないような工夫もお願いしなければならない。そういった中での時間がかかるということであります。
それからもうひとつ、最後のあれですが、国庫、県負担、それはかかります。おっしゃる通りですね、あまりにも事業費が多く、これ以外にも瓦礫の処理もありますし、何でもありまして、1%の負担でも市町村の財政はパンクしかねないという状況の中で、県・市町村についてはできるだけ負担が生じないように、実質、国が、特別交付税という形になると思いますけれども、処理するような形を今考えております。
ただし、だからこそ、だからこそですよ、コストの意識は自治体にはしっかり持っていただかなくちゃならない。今でも持っておりますけれども、コスト意識だけはしっかり持っていただかなくちゃならない、ということを申し上げなければなりません。すみません、長くなりまして。
小野寺 あのう、平野大臣、少し多分違うんだと思います。
私は5月から実は住民の、この高台移転のための期成同盟会、そこにもう何回も何回も、しかも7箇所も8箇所も住民要望が来ています、そこに出ています。そしてそこの住民の方が皆さん同意して移転したい。しかも移転する先は、その皆さんが元々共有の土地であったりして、土地も全部もう用意できている。あとは、この移転の事業費だけあれば動けるんだと。これ5月の段階で何度も何度も、私ども地元からお話をいただいております。
総理に改めて確認をしたいんですが、今回この町と県の負担、これ無理ですよ、南三陸町に何百年分の予算を出せと言っても。是非これをですね、国の今回の三次補正でしっかり手当をする、そのひと言をお伺いしたいと思います。
野田 あの、高台移転の遅れ、色んなケースがあると思うんです。小野寺さんが御指摘したような地域に住んでいらっしゃる方のもう合意が取れているものと、それからまだ地域の中で復興計画を作っている中で、どういう形で住まい方をするかというところが、まだ検討が遅れているところと、色んな事情があると思いますけれども、いわゆる実際に事業を推進をする際に、これだけ、これだけひとつの試算が南三陸町で出ておりますが、国の負担、加えて地元の負担分は、先ほど担当大臣がお話されましたように、特別交付税等々で対応はできるように工夫をしていきたいというふうに思います。
小野寺 あの、多分話が逆になるんだと思うんです。「国がこうやって出しますよ」と、「県と市の部分を、町の部分を国が出しますよ」、そういうメッセージがあれば、実は、地方自治体、町も市も「復興計画でうちの町はこう作りたい、こう作りたい」と作れるんですよ。なんで遅くなっているかというと、国のこの方針が示されない。ですから高台移転の計画を作っても、国が出さなきゃ、絵に描いた餅じゃないですか。
話は逆なんです。始めに国が示して、方針を示していただければ、安心して町も県も、「よし、じゃあこういう町を作ろう、この事業を使ってこうやってやろう」というふうになるので、まず国から示していただく。再度お伺いします。是非お願いしたいと思います。「国が面倒を見る」そのひと言でいいんです。(会場「そうだ、町作りができない」)
平野 いずれ三次補正で制度設計、地方の負担のあり方も含めてしっかりとした制度を出します。そして、ただもうひとつ、一点だけ申し上げますけれども、制度を示す、確かに制度設計色んな詳細な詰めがあって、今日までかかってしまいました。ただ、片山総務大臣時代から私どもが申し上げてきたのは、この復興によって地方財政が破綻するようなことは絶対しないと、させないと、そういう制度設計をするから、その前提で様々な計画を作っていただきたいということは、繰り返し繰り返し申し上げてきたということだけ、ちょっと申し添えさせていただきたいというふうに思います。
小野寺 平野大臣は何度も被災地に来ていただきまして、私は直接携帯で色んな御要望を毎日のようにさせていただいております。信頼をしております。是非、今回、今後三次補正の中で、この地方負担分がない形でしっかり高台移転ができるように、もちろん自治体はコストを考えて一番いい最適な方法を提案しますから、そのことを是非、国として責任を持つということをお願いしたい、そう思っております。
さて、もうひとつ、実は今回の復興に対して、午前中の質疑でも平野大臣からも御答弁がありましたが、グループ化をした事業に対して国が支援をする、こういうありがたい支援制度があります。簡単に言いますと、水産加工場とか冷蔵庫とか、こういうところを復旧・復興する時に、その4分の3をグループ化して計画を立ててくれれば国が支援する、これは大変ありがたいんです。これでみんな、「ようし、町を再建しよう、仕事を再建しよう、もう一度魚が獲れるようにしよう」、こうやって、みんな大変期待してたんです。期待してたんです。ところがこの採択の事例を見てください。今採択されているこのグループ化事業の採択率です。
宮城県は、応募者、応募者の中で採択されたのが13%。今回大きな被災を受けた、今日安住大臣いらっしゃいます、御地元の石巻、私の地元気仙沼、採択率は3%ですよ。3%。期待がたくさんあって、みんなこんな厚い申請書を書いて、「これで何とかこの秋には秋刀魚獲れるように頑張ろう」と、「もう一回雇用できるように頑張ろう」と、そう思って期待込めて申請書を出したんですよ、みんな、5月、6月。採択してみたら、3%ですよ。なぜか聞いたら、予算がないから。(会場「予備費はどうした」)これは私は大変つらい。
今日は財務大臣がいらっしゃいます。同じ被災地の仲間でもあります。安住大臣に改めてお伺いします。お金を、このグループ化予算のお金を、希望者の、希望している事業者に、しっかりと出していただきたい。そして三次補正を待たずに、予備費でも何でも使って出していただきたい。その決意をお伺いしたいと思います。
安住 これは私も最初怒りまして、一次補正と二次補正で250億だったですよね。小野寺さんの地元の気仙沼も、私の石巻も、これは八戸なんかもそうですけど、大手企業で申請を出したところだけ採用して、地元企業ゼロという状況だったんですね。なおかつですね、これは県の裏負担が4分の1あるものですから、今度は宮城県も岩手県も、なかなかそれは出せないということで、採択をほとんど切られてしまったと。何のための制度かと。
私はそういう意味では、今回ですね、この中小企業のグループ化というのは、逆に言えば非常に人気があって、小野寺さんの地元でも、私の地元でも、グループ化をすることによってその企業再生をする切り札になるということは十分わかりましたので、逆にまあ、ここの部分についてはですね、以前から小野寺さんからも指摘がありましたように、私も予備費を使ってですね、250億ですけれども一次二次で、今回は1000億円を越える額を予備費でやれと。
その代わり裏負担分のですね、地方自治体、宮城県等について、先ほど私も村井知事にもお会いしましたけれども、それも含めて、三次を待たずにやれるものからやっていくと。今後あの、実はこれがなかなかの良い制度だということで、福島県、茨城県等でも、このことについて非常に興味を持っておられる方々が、あ、千葉県でも出てきたということでございますので、今後それは色んな本予算等も含めて考えないといけませんが、とりあえず企業再生のやはり重要なこのグループ化については、御指摘いただきましたので、予備費を使ってしっかり対応したいというふうに思っております。(拍手)
小野寺 あの、予備費だけではおそらく希望全部にも、今後対応できないんだと思います。おそらく被災県が広がっていく中で、この事業というのは大変重要で、皆さん大変高い関心を持っています。この事業が大切なのは、これで実は産業・仕事を復興するんです。仕事が復興できれば人を雇うことができるんです。(会場「そうだ!」)失業手当はそれ以上出さなくてもすむようになります。もっと大きいのは、やがて私たちはこれで復活して町を作って、産業再生して、もう一回納税者として、今回支援していただいたものを国民の皆さんにお返しすることができるんです。(会場「そうだ!」)
働かせて欲しい。その思いで、この予算をしっかり取っていただき、是非ですね、希望をするところには手当をしていただく。そしてあとで私たちは、これを使って町を再建して、働いて、納税してですね、今回支援していただいたものをお返ししたい。その決意の人がたくさんいることを、改めて知っていただきたいと思います。
そして今まで、こうしてご指摘させていただきましたが、7ヶ月経ちました。結局、かさ上げする予算も、実は1円もついていなかった。そして、グループ化して企業をこうやって再生する予算も、被災地では数パーセントしかついていなかった。仕事を再開したくても、働きたくても、実はこの地域は何も仕事がない。こういう場所になってしまったんです。だから皆、泣きの涙で失業手当をもらって、そして一日も早い事業の再開を皆願っているんです。でも、ここまで遅くなってしまいました。
ですから、今回失業給付を延ばしていただきました。二回に亘って政府が延ばしてくれました。来年の1月まで、仕事が、この給付が切れずに、とりあえずはしのぐことができます。ですから、この給付は切れるまで。切れる前に、このような仕事、そのための国としての支援をしていただきたい。仕事ができないんです。国の支援がまだ見えないから。是非このことを重く感じていただきたい。そう思っております。