一川防衛相「素人」発言、普天間、日米外交 平成23年9月28日 参議院予算委員会 猪口邦子氏 1 |
動画:http://www.youtube.com/watch?v=SVTVda_34yQ
(冒頭から16分46秒ごろまで)
委員長 これにて衛藤君の質疑は終了いたしました。次に、猪口邦子さん。
アナウンサー 続いて、自由民主党・無所属の会、猪口邦子さんの関連質問です。
猪口 ありがとうございます。私は千葉県選挙区選出、自民党、猪口邦子でございます。本日は、外交・防衛、そして統治機構について総理にお伺いしてまいります。
野田総理、千葉県から選出された国会議員として、はじめての総理大臣でいらっしゃいます。私からも心からお祝い申し上げまして、千葉県選出の総理大臣としての何かご感想があれば、まずお伺いします。
野田 あの、当然、先生も含めて、同じ郷土である千葉県の皆さんにとって、野田が総理になってよかったと思える実績を作りたいとともに、95代目の内閣総理大臣であります。歴代総理大臣、色々ご苦労があったと思いますけれども、私は今まさに原発の事故収束であるとか、震災からの復興とか、経済への対応とか、大変大きな国難を抱えている時代でありますので、歴代の先輩大臣にも負けないように全力で頑張っていきたいと思いますので、またこれからも大所高所からのアドバイスをいただければ助かります。よろしくお願いします。
猪口 それではまず最初に、大臣の言葉の重さについてお伺いします。退任されました前経産大臣については言いませんけれども、たとえば一川防衛大臣のシビリアンコントロールについての発言、「自分は安全保証は素人だが、これが本当のシビリアンコントロールだ」というこの発言について、いかがでしょうか? 文民統制、文民と素人ということは同義でないことは明らかですよね。一体この発言、どこが問題なんですか、総理?
野田 あの、ひと言で言えば、文民統制というのは、民主主義の国家における、まあ、軍事に対する政治の優先だと思います。ただ、これ、あの、まああとで御本人が説明をすれば一番いいのかとは思いますけれども、一川大臣のおっしゃった意味は、一般の国民を代表する政治家が国民の目線に立って物事を判断をしていくという趣旨をお話したかったんではないかと。
で、何が問題だったのかと言うならば、その真意が伝わらなかったところに問題があったというふうに思います。
猪口 防衛大臣というのは、国民の目線というよりも、国民を守るのがお仕事であります。そして、何が問題であったのかということについて、今総理も的確にはお答えになっていないと思いますけれども、私の考えでは、我が国の防衛力が弱い、この国はわからない、物事がわからない素人が防衛の担当をしている、このことを広く世界に発信したことなんです。
これによって我が国の安全と国益を大きく損ねたと、ここがこの発言の問題なんですけど、総理、いかがですか?
野田 あの、政治が、政治が軍事より優先をするという中でしっかり判断をする、それがシビリアンコントロールのまさに基本だと思います。で、それを一川大臣ができるか、できないのか、国際社会がどう受け取ったかだと思いますが、私は、それぞれのスペシャリストがひとつの大臣になるということもあります。でも、経験豊富な人が、判断力を持ったジェネラリストが大臣になるということもあると思います。で、その意味では、市川さんはそうした経験を踏まえたジェネラリストとして、しっかりと文民統制というその仕事、役割を果たせる人だと私は思っておりますので、間違ったメッセージがあるならばこれからの仕事を通じて信頼回復に努めていただきたいというふうに思います。
猪口 ジェネラリストであってもですね、自分が安全保障について素人であると、そういうことを就任早々発言する国防担当大臣というものがですね、世界のほかのどこにいるかということが問題です。我が国の安全保障に隙を作った、これは総理によって厳重注意していただきたい。ここでやっていただきたいんです。(会場「総理」「総理」)
委員長 防衛大臣一川保夫君。(会場「厳重注意総理にしてくれと言ってるのに、何で注意されるほうが出てくるんだ」)
一川 ええ、ちょっと私の考え方をお答えさせていただきます。まあ私は参議院議員でございますから、皆さんがたに大変お世話になってきているわけですが、私自身は国会議員になった折から、常にあらゆる政策については国民の目線に立って判断するべきだというふうに思ってまいりました。で、私自身も御案内の通り、石川県の小松基地に生まれ育ち、そして生活している人間でございますので、小松基地の周辺、基地を抱えている町の悩み、住民の悩みなり課題というのはどこにあるかというのはわかっているつもりでございますし、また防衛大臣としては何を守るべきかということも十分わかっております。
それはもう御案内の通り、防衛省に与えられた任務なり自衛隊に与えられた任務というのは、やはり国のまず平和と独立を守ると、その中で国民の安全を保つという中で、私は自衛隊をしっかりと管理をし、そしてあらゆる侵略に対してしっかりと防御していくと。併せて、今話題になっている災害対策とかですね、あるいは国際的な平和活動にしっかりと協力していくという私の仕事を、しっかりと務めてまいりたいというふうに思いますので、ひとつまたアドバイスをよろしくお願い申し上げます。(与党席から拍手)
猪口 自分の国が弱いという発言をしてはいけないということを言っているのであって、そういうことはよくなかったと素直に認めていただきたいです、総理。
野田 あの、今市川大臣が申し上げた通りの市川大臣の気持ちですので、従って、初動の記者会見の時にその真意が伝わらなかったところに問題がある、というのが私の認識でございます。(騒然)
猪口 ではですね、じゃあ、次に行きます。はい。あの、普天間飛行場の移設ですけれども、もうオバマ大統領から、結果を見出すべき時期に近づいていると、総理、このように言われたと報道されていますけれども、まあそのような趣旨として、深刻に受け止めているかどうか伺いたいです。
野田 あの、私どもの政権、原発の事故収束と、そして復興、これ最優先と言いましたけれども、震災の前から抱えている懸案が内政にも外政にもございます。その中のひとつがこの普天間の問題だと思います。日米合意に則って対応して沖縄の負担軽減という話は、きちっとオバマ大統領に申し上げました。その時にストレートにオバマ大統領から、結果が云々というお話ではなくて、その進展に期待をするというお話がございました。
いずれにしても、進展をさせるということは結果を出していくということでございますので、当然のことながら、私ももちろんでありますが、内閣を挙げて沖縄の皆様の御理解をいただいて、そして結果が出るように全力を尽くして行きたいというふうに思います。
猪口 キャンベル国務次官補は、直後の記者会見で、結果を求める時期が近づいていると、大統領はそれを明確にしたと、"as cleared by President" という言葉を使っていますけれども、キャンベル次官補のこの記者会見の内容は不正確であったということですか?
野田 あの、キャンベルさんの御認識はそういうことだったんだろうというふうに思います。で、それを踏まえて、さっき、やり取りでは、その進展を期待するというやり取りだったというふうに思います。が、受け止め方は、それはそれぞれあったのかもしれません。
で、いずれにしても、あの、しっかりと取り組んでいくことには、これは変わりがございません。
猪口 実際に結果を求める時期に来ていると、その同じような発言を、実際にその会談でされたという認識が自らないということは、アメリカ側の趣旨を取り違えていて、で、そのようなことでは、今後の普天間の解決、なかなか行かないんじゃないですか?
野田 あの、きちっと私どもの基本的な考え方、日米合意に則って、そして普天間に固定化をせずにですね、そして沖縄の負担軽減をしながらやっていくという中で、やり取りの中で、さっき申し上げた進展に期待をするという言葉がありました。
その受け止め方は色々あるかもしれませんけど、それは合意事項をお互いに推進していくということの確認はできているし、それはだらだらやっていくということではお互いにそう考えていないのは間違いないと思います。
猪口 総理大臣としてですね、どういう受け止め方を実際にしたのか、この深刻さがわかっているのかということが大事なんです。で、そもそもですね、この首脳会談は、予定時間30分、実に象徴的に我が国の地位の低さを表していると思います。ちょっと延びたとは言っても、もっとこういう大事な話があるんだから時間を確保するように、事務方に指示したんですか?
野田 あの、これはもう相応の時間だったというふうに思いますし、その時間帯の中で、普天間だけではなくて、基本的には日米の同盟の重要性を踏まえた基本的な認識を含めて、あるいは具体的な課題がどういうことがあるかについての整理はできたというふうに思いますし、ちょうどこの国連総会の時にはパレスチナの問題等があって、大統領は大変お忙しい中でありましたが、しっかりと時間を取っていただいて議論ができたというふうに思います。
猪口 つまり、日米首脳会談は30分の時間、この予定でよいと、初めから総理は降りていたんですね。そして先ほど聞きました通り、報道されているような趣旨の内容、その深刻さを総理として受け止めているかどうか、これについてもう一度きちっとお答え下さい。
野田 深刻さというか、大変重要な問題であるというふうに思いますし、特に、この2年間に亘って海外移設の可能性を検証するなどによって、結果的には沖縄の皆さんに御迷惑をかけたりしたこともありました。で、そういうものを乗り越えて改めて日米合意に則って対応するということでございます。
日米同盟が日本外交の基軸であるという中で、その信頼感を確保していくという上でも、あの、重く、大変真剣に受け止めているということでございます。
猪口 そもそもですね、こういう懸案事項への対応力の不足、これが日本の安全保障に隙を作っている。他の国のこの国への高圧的な態度への隙を作っている。何としても解決しなければならないという、重要事項であるという深刻さ、これを受け止めてもらいたいです。今からでもいいですから、しっかりとアメリカ側の主張の意味、噛み締めてもらって、動いてもらいたいんです。
なぜ沖縄にさっさと訪問してくれないんですか?
野田 あの、適切な時期に、あの、お伺いをして、知事ともしっかりと意見交換をさせていただきたいというふうに思います。
猪口 与党の中で政権を代える時というのは、前政権では早くできなかったことを一気呵成に解決するというような、そういう課題もあります。たとえば、自民党の場合、ちょっと昔ですけれども、安倍総理の時52歳で就任して、就任後13日目に訪中して、戦略的互恵関係を掲げて一気に日中関係を改善する、そういうロケットスタートもあったんです。
総理、なぜアメリカに行く前に沖縄に行ってくれなかったんですか?
野田 あの、ロケットスタートでやらなければならないことはたくさんございました。で、まずは、被災地、これは福島あるいは宮城・岩手に行ったこと、それから紀伊半島に行ったこと、それから、今の経済実態を踏まえるべく、中小企業等の視察をやったこと等があります。
で、沖縄については、ま、私ももちろん先頭に立って頑張っていかなければなりませんが、関係閣僚の皆様にも御努力をいただいているし、そのほか様々な政府のレベルで沖縄の皆さんとコミュニケーションを今やっている最中でございます。あの、沖縄についてもなるべく早く私も現地でお話をできるようにしたいというふうに思います。
猪口 ここまで申し上げておりますので、すぐ行ってください。
そして、外交においては、実質的にどのくらい深い会話をするかということのほかに、儀礼的な相互作用というのも大変大事なんです。今回首脳会議に出られまして、アメリカから公式訪問の招待は、総理は得たのですか?
野田 あの、その直接の会談の中で、あの、ワシントンにどうぞというお話はございません。ただ、あの、菅総理大臣のときの御招待は生きているという前提の中で、実務的にはスケジュール調整を今やっておりますので、その招待は生きているというふうに思います。
猪口 アメリカ側はそういう認識ではないと思いますので、お気をつけいただきたいと思います。
外交的緊密さというのは、きちっとその総理や大統領に、首脳にですね、招待が来るかどうかということがひとつの基準にもなりまして、オフィシャルビジットを、せっかく30分も会談したのに、「いや今度来てくださいよ」のひと言もなかったということを今明らかにしたんですけれども、たとえば10月13日には、李明博韓国大統領、オフィシャルビジットやりますね。今年になってサルコジ大統領、あるいはメルケルさん、胡錦濤主席、みんなやってるんです。ね、あのホワイトハウスのお庭での栄誉礼、晩餐会。
こういうことは儀礼的なことかもしれませんけれども、国家間の関係で日本が軽く見られることがあってはならないし、先ほど申し上げたように、儀礼的な相互作用というのは外交では大事なことをわかっていただきたい。オフィシャルビジットの招待状を取り付けてください。(会場「おー」)
野田 いや、あの、だから、招待状は生きているというか、あるんです。(会場ざわざわ)あるんです。(会場がやがや)だから、今、実務的な日程調整を今してるということであります。
猪口 では、いつごろ訪問する予定なんですか?
委員長 野田、いや、玄葉外務大臣。(猪口「いや、総理に聞いております。」)
玄葉 あの、先生が色々とおっしゃることを十二分に理解することができます。ただ、ただですね、いやつまりは、特にですね、日米に一時的な揺らぎがあったということを私も認めますし、日米が磐石であるということが極めて大切であるということもその通りだというふうに思います。
で、総理の訪米の時期については、まさに今調整をしているということでございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
猪口 首脳外交の時間も30分以上確保するということを指示することもない、そして儀礼的な相互作用、これについての確固たる思いもはっきりしていない、是非こういうことは今後改めていただきたいと思います。