外交カードと国益 復興債償還は平均でなく「最大」10年 10月27日 参院財金委 佐藤ゆかり氏 2 |
(26分15秒ごろから)
ブログ筆者です。あんまりしゃしゃり出ないようにしようとは思ってるんですが、この質疑の最後のほうに出てくる復興国債償還期間の話、腰が抜けそうに驚きました。
政府原案では10年というのはずっと報道されてましたが、佐藤氏が質疑の中で言っているように、平均的に10年だとばかり思ってました。
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佐藤 (承前)そこであの、実際ですね、ご指摘の通り、配布資料の2ページ目にもございます、当時の、アジア通貨危機発生前後のですね、それぞれ、特に震源となったタイ・バーツ、それから続いてインドネシア・ルピーが当時暴落しましたが、黄色い線の引いてある投資収支や外貨準備増減をご覧いただきますと、通貨危機が発生した97年のセカンドクォーター、サードクォーターあたりからですね、急激に投資収支がマイナスに転じております。これは資本が海外に逃避をし始めたと、急激な調整が起きているということで、こんなことが起きかねないわけでありますから、日本企業もアジアにたくさん取引先がありますので、これは日本にも直結する問題としてやはり早急な対処をお願い申し上げたいと思います。
そこでその今お話が出ました通貨スワップの件についてお伺いしたいと思いますが、日韓首脳会談で野田総理が通貨スワップの枠組みの拡充を合意してまいりました。これは実際には10月19日の日韓首脳会談で二つ通貨スワップの協定というのは日本は結んでいるわけでありますが、ひとつは日銀と韓国銀行の間の円・ウォン通貨スワップの協定、これを限度額を現行30億ドル相当から300億ドル相当へ増額するという合意。そして、もうひとつは、財務省がやっております外為特会を使ったドル・ウォン通貨スワップでありまして、これを現行の100億ドルから、新設、今回新設すると合意した部分も含めまして、400億ドルに拡大することを合意したということであります。
実はこの通貨スワップの拡充につきましては、私どもの自民党のこの円高対策PTで、9月の初旬の第一弾の策定中に、財務省や、金融庁、日銀とも政策の練り合わせをしていたわけであります。当然事務方で私もこの通貨スワップの、特に円高対策の一環として、円・ウォンなどのですね、通貨スワップの枠組み拡充というのは提言をさせていただいておりました。まあしかしながら、当時はですね、まだ今から1ヶ月ぐらい前な話なわけですけれども、この関係当局がですね、この通貨スワップの枠組みの拡大には大反対をされたわけであります。わずか1ヶ月経過した今ですね、日韓首脳会談でこれは合意になったと。
ま、この1ヶ月の間にですね、政府側のこの大反対から合意に至るまで、全く姿勢が反転したわけでありますけれども、これは、何が反転の理由としてあったのか、そしてまた、この、当時ですね、反対した理由に、伺いますと、外交交渉カードをですね、まあむやみに使いたくないんだと、まあそういうお話があったわけでございますが、今回日韓首脳会談でこの外交カードを使うということで、通貨スワップ拡充の合意に至ったということであるならば、どのようなこの外交カードの利用によって何を韓国政府から日本政府が取り付けたのか、その点、何を取り付けてきたのかについて、安住財務大臣、お願いいたします。
安住 確かにあの9月の時点で自民党のほうから要請があったということは私も聞いておりました。あの、どういう変化かというと、ウォン安が一段とあの時点からはかなり進んだということは事実だと思います。
それで、実はあの、何を我々として利益を得るのかということですけども、それはまああの、何か担保を取ったかと言われればですね、私はやっぱりひと言で言えばやっぱり通貨の安定であろうというふうに思っております。広い意味でですね。
あの、ご指摘がありましたように、今回のこの枠組みというのは、日銀から韓国銀行への30億ドルを300億ドル、それから、我がほうから新たに300億ドル、財務省からですね。そしてまあ、チェンマイ・イニシアチブのこの100を足すとですね、ちょうど700になるわけであります。で、これぐらいの資金をまあいわばスワップして韓国に渡せばですね、外為、まあ韓国としては十分対応できるというふうなことを私たちとしては考えておりますし、それはまあ通貨の安定になっていって、現に市場を見ていましても、韓国市場については、その後の動きは非常に安定をしております。
で、それはしかし広い意味で具体的に何か日本にどうかと言う話であることは事実そういう指摘もあるんです。しかし、たとえば統計上ですね、日本から韓国への輸出額というのは、5.5兆なんですね、2010年。で、これはですね、全体に占める我が国にとっては世界貿易の中の8%にも及んでおります。ですからそういう点ではですね、私たちにとっては非常に重要な取引先でございますので、そこの過度なウォン安について今韓国政府は非常に厳しい戦いを逆に強いられているわけでございますが、まああの、為替の安定というものは、結果的には日本の安定に資するという判断で、こういう政策決定をさせていただきました。
佐藤 あの、外為特会を使ってですね、こういう通貨スワップの枠組みを拡充するということは、日本の国民の税金を使うという話なんですね。ですから、やはり国益に適った何か取り決めをして、利益が日本にとってもあるという前提でやはり拡充をしていただくべきであると思いますし、であるからこそ私の理解では9月の段階で自民党PTとしてこの通貨スワップの拡充を一旦提言をしかけた時にですね、外交カードを使いたくないと、外交カードという意味で、極めてその外交カードのメリットというものを意識した反対であったと、そういう認識でいるわけであります。
ですから、今回あえてそれを撤回して外交カードを使ったわけでありますから、じゃあ、何を求めて、何を取り付けたのかということですね。
で、実際にこの財務省の報道発表、今回のこの通貨スワップ協定の拡充という報道発表によりますと、日韓における金融協力の強化の観点から行うものというふうに記されております。また同時に外務省のほうの報道でも、金融市場の安定のためというような表現がさされているわけでありますが、この金融市場の安定とか、そういう表現はですね、これはある意味どの国もですね、その金融市場が安定すれば便益を受ける、公共財のようなものなんですね。金融市場が安定するというのは公共財のようなもので、誰もコストを払わないけれども誰もが便益を受ける。
要するに、日本が通貨スワップでこのような直接的な便益を韓国に対して供与してもですね、その通貨スワップの合意の中に全く関わっていないほかの国々も、その結果得られる金融市場の安定には便益を受けるわけであります。そういう意味で公共財のようなものなんですね。
で、公共財に対してですね、外交カードというのは切らないんですよ。外交カードっていうのは、あくまで日本国としてどういうメリットがあるかという観点で、個別のメリットを引き出すために外交カードってのは引くんですね。公共財のためには外交カードって切らないんですよ。その点はいかがですか? もう一度お伺いします。個別の利益というのは何でしょうか?
安住 やっぱりあの、そうは言ってもですね、8%もの輸出を、まあ受けてもらってる国であるっていうことは、やっぱり非常に大きなわけで、で、今般聞くところによりますと、中国政府もですね、日韓にならって、韓中でスワップ協定を昨日までに結ぶことになったと。ま、ひと言で言えばやっぱりウォン安に歯止めをかけてですね、やはり為替レートの安定をしたい、する努力をしている韓国の中で、ま、現実にその、外貨が、どんどんともし無くなって行くということになれば、先生もご指摘のように、90年代後半のやはりアジア危機に、と同じような構図になりかねないこともあるのかもしれないので、そういう点では、本当にこれは、通貨安定のためというのは、大きな意味で申し上げてると同時に、日本にとってやはり貿易相手国として、また隣国としてですね、様々な面でこうしたスワップというものは価値のあるものであるというふうに私は認識をしております。
佐藤 あの、金融市場の安定とか為替の安定の目的、これは当然大事なことでありまして、それは進めなければいけないことです。ただ、であるからこそ、それを、それに対して協力をする上で、何を日本政府として引き出すんですかと、そこを聞いてるわけですね。何も要するに引き出してないということだと思いますが、こういうところ、こういうやり方では駄目なんですよ。外交カード、大切な国民財産ですよ、外為特会を使ってやるわけですから。それで外交カードを切るのであれば、何か韓国政府から日本に対しての協力を具体的に取り付けるとかですね、そういうことをきちっと交渉でやっていただかないといけないと思います。
そのことを厳重に申し上げておきたいと思います。
さて、時間も限られておりますが、最後にですね、これから色々復興増税や、また来年についてはですね、消費税などの雲行きもあるわけでございまして、税の話が焦点になってくると思います。
またおいおいこの財金委員会では税の議論に参加をしてまいりたいと思いますが、ひとつこの復興財源についてですね、お伺いしたいと思います。
復興財源で、まあ、復興国債を発行するわけでありまして、政府案によりますと、まあこの償還期限10年だということで伺っているわけでありますが、実はですね、これ報道発表と違いまして、中身を見てみますと、平均的に償還10年ではなくて、政府案はですね、実際は最大10年なんですね。私は驚きました。中身を見まして。報道ではあたかも10年と書かれているんですが、最大10年であって、早いものは償還1年から始まるんですね。こんなことを政府は、まあ画策をしているわけであります。
これは一体どういうことかということでありますけれども、私はですね、この、どうですか、受益と負担という観点で、大臣、誰が、この復興の受益になるのか、受益者と、受益と負担の観点で財政というのはきちっと考えていかなければいけないと思いますが、受益と負担、受益者は誰になりますか? まずお伺いしたいと思います。
安住 これはあの、やはりこの震災でダメージを受けたその地域や人々、また、まあ広く言えばやっぱり、日本の国民の中でそことたとえば御商売をしているところを含めて、広い意味での受益者というのはやっぱりあの、日本国民だと思います。
ま、負担も、ですからそういう点では、同じ国民であると言うふうに思っております。
佐藤 あの、実はですね、復興の経費の中にも、それこそ瓦礫の撤去から、あるいは高台移転に関わる費用から、あるいはこの道路や港湾の整備から、インフラに至るまで、様々なものがあるわけであります。ですから、私は、これ個人的な見解かもしれませんが、やはり肌理細やかにですね、そのいわゆる経費の受益できる期間、これに合わせて復興債の償還期限を定めるべきではないかと思います。
たとえば、道路や港湾というのはですね、通常であれば建設国債を使って60年償還をやるわけであります。当然この現役世代で、次世代にこの復興の負担を負わせないと、そういう理念はわかりますけれども、実際にこの財政上大事なこの受益と負担の観点に則って、より適切に考えるのであるならば、道路や港湾、あるいは公共施設の建設、こういった公共投資についてはですね、耐久年数が通常60年と言われているわけでありまして、その結果建設国債も60年償還になっているわけでありますから、そういう意味では、そこの部分に使われる復興国債については、60年償還にするべきではないかと思いますが、大臣、いかがですか?
安住 まああの、そうした御指摘を何人かの方にはいただきました。ただ、ま、先ほどその、先生からも、考え方としては認めると言っていただいた、この、やっぱりその次の世代にツケを残さないで何とかこの償還の財源を作っていこうというふうな考えで今回のスキームは作らせていただいたわけです。
ま、確かにですね、橋や道路というひとつずつを見れば、建設国債だっていいじゃないかと、公共投資を、機械的にこう判断すれば、たぶん充当できるものというのは、昨日も実は答弁したんですけれども、今回の予算の中にも4兆円ぐらいのものは機械的にですね、あの、建設国債の対象になるものはあるかもしれません。
ただですね、私、まあ被災者の立場で言わせてもらうと、津波で受けたその被害っていうのは、もう、面として捉えてるわけですね、地域は。ですから、復興計画でいわば使い買ってのいいお金が全く象徴ですけども、これはその建設国債、これはたとえば税負担、ま、そういうふうな考え方でその細目を分けるよりは、私は今回はやっぱりトータル復興を、やっぱりそのひとつの一定の期間の中で成し遂げるという認識に立てば、従来のやっぱりその国債の発行でやるという、細かく分けてですね、種目別にこれはこれというやり方でやるんではなくて、まあ、あの、全体として、やっぱり、復興債を使って、再建をしていくというのもひとつ、やっぱり考え方としてあってもいいんじゃないかということに基づいて、今回こうした案を作らせていただいたということでございます。
佐藤 あの、時間もう来ておりますので、ここで質疑を終わらさせていただきたいと思いますが、是非ですね、建設国債なら建設国債、やはり費目に分けて、肌理細やかな設計をしていただいて、国民負担を極力避けるということを徹していただきたいと思います。以上です。(拍手)