12月7日 参議院憲法審査会 1 足立信也氏・前川清成氏(民主)、礒崎陽輔氏(自民) |
動画:http://www.youtube.com/watch?v=JGlZQo_enEs
会長 ただいまから憲法審査会を開会いたします。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題といたします。
前回、参議院憲法調査会及び日本国憲法に関する調査特別委員会における議論の経過等について関谷勝嗣元参議院憲法調査会会長・元参議院日本国憲法に関する調査特別委員長からお話を伺い、次いで憲法審査会事務局から報告を聴取した後、各委員から御発言いただきました。
本日は、前回に引き続き、各委員から自由に御発言いただきたいと存じます。委員の御発言は五分以内にお願いすることとし、一分前に予告の紙を提示させていただきます。御発言は時間内におまとめ願います。なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、発言を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言願います。
足立信也君。
民主党・足立信也氏 衆参二院制について
足立 民主党の足立信也でございます。早速の御指名ありがとうございます。
参議院憲法調査会のこの報告を踏まえ、当憲法審査会で検討すべき論点としては、この調査会においておおむね共通の認識が得られなかったもの、例えば意見が分かれた主要なものと、あるいは憲法改正手続法附則における検討事項、いわゆる三つの宿題、並びに十八項目の附帯決議への対応、この三点であると思いますけれども、平成十七年、二〇〇五年の衆参両院の調査会報告書以降、顕在化してきた問題点がこの共通の認識とされた部分にもあると私は思います。
すなわち、議院内閣制と三権分立の関係、そして二院制と参議院の在り方についてであります。共通の認識とされたものの、この報告書では、三権分立の重要性、必要性はこれからも変わらない、衆参両院を基盤とした議院内閣制であるべき、二院制の堅持、現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当である、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきとなっております。
議論のその結果は尊重いたしますけれども、しかし報告書より後に、参議院において政権与党が過半数に達しないといういわゆるねじれの状態になりました。この状況では、議会と内閣の関係、両院不一致の場合の議決の在り方、両院の議員がどのような国民を代表するのかを憲法上明らかにしておく必要があると私は思います。
一点ずつ述べます。
日本の議院内閣制は、下院である衆議院の多数派によって選出された首相が内閣を形成し、内閣が国会に対して責任を負うことになっております。衆議院の場合、議会は内閣不信任決議権を持っておりまして、首相は内閣総辞職か衆議院の解散権を持っております。しかし、参議院と内閣の関係は憲法上不明確なままであると思います。
二点目は、国会の意思は衆参両院の合意によって決まると。したがって、両院の意思が異なる場合、国会の議決ができないということになります。衆議院優越の原則や、あるいは両院協議会における合意形成では解決できない場合はどうするか。国権の最高機関と位置付けるには不十分な部分であって、憲法上不記載であり、明記すべきだと私は考えます。
例えば、衆議院の優越については、三分の二は二〇〇五年の総選挙の後のみ。そしてまた、予算には衆議院優越がありますけれども、関連法案には働かない。両院協議会は衆参対等となっております。イギリスやフランスやドイツには下院の判断を優先するような仕組みがあるというふうに、私が調べた結果ではございます。
四十三条に「全国民を代表する選挙された議員」とありますが、両院が国民の何を代表するのか明確にする必要があると思います。佐藤栄作元総理は、参議院を制する者が政局を制するとおっしゃいました。二〇〇七年以降、参議院は政局の府とも言われております。
選挙制度が小選挙区を基本とする二大政党制を模索するならば、内閣が議会に優位する仕組み、だから議会は討議の場となるべきだと思います。比例代表を基本とする多党制ならば、内閣と議会は対等で、議会は合議形成の場と位置付けるべきだと思います。そして、選挙制度に全く意図を持たない場合は、なおさらのこと国民の何を代表するのかを憲法上明記すべきだと私は考えます。
以上です。
民主党・前川清成氏 国家権力制限手段としての憲法のレゾンデートルの重要性
会長 次に、前川清成君。
前川 民主党の前川清成です。
私も、二〇〇四年の初当選以来、一貫して憲法調査会あるいは憲法調査特別委員会に所属をし、憲法の議論に加わってまいりました。憲法調査特別委員会においては、簗瀬筆頭理事の下、理事として附帯決議に関する協議も担当させていただき、自民党の岡田直樹理事には真摯に誠実に対応していただきました。
私は、二〇〇七年の五月十四日、参議院本会議において国民投票法が採決される際、反対討論も担当させていただきましたが、それでも、これまでの議論の経緯や法文を尊重して、更に議論を積み重ねてまいりたいと思っています。
同時に、私たちは憲法の歴史も尊重する必要があります。今日、発言の機会をいただきましたので、参議院憲法審査会での議論がスタートするに当たって、議論の出発点としての憲法の歴史、すなわち法の支配、立憲主義についていま一度確認させていただきたいと思います。
一定の限定された地域、すなわち領土と、そこに暮らす人々、すなわち人に対する強制力を持った統治権、すなわち権力が確立したときに国家が成立をいたします。国家が成立したとき、その存在を基礎付けるルールを固有の意味の憲法と呼びますが、さらに国民の基本的人権を保障するために専断的な権力を制限するルールが確立したとき、そのルールは立憲的意味の憲法あるいは近代的意味の憲法と呼ばれるようになります。
一七八九年、フランス人権宣言第十六条が、権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されていない全ての社会は憲法を持つものではないと述べていますが、ここに言う憲法は立憲的意味の憲法であり、国民の自由や平等を保障するために国家権力を制限することこそ憲法が自由の基礎法と言われるゆえんであり、憲法のレーゾンデートルであることを宣言しています。現行憲法においても、第十章「最高法規」の冒頭に、基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であることを確認する九十七条を置いているのは、やはり憲法が自由の基礎法であることの確認であり、自由の基礎法であるからこそ最高法規であることの思想的表現です。
続いては、まず第一に、憲法の本質は制限規範であることを議論の再スタートに対して是非委員各位にも御確認をお願いしたいと思います。憲法は国民の心構えや国柄なるものを書き記す文章ではありません。第二に、国家権力を制限することが憲法のレーゾンデートルである以上、憲法改正の要件は当然のこととして法律の制定、改正よりも厳格な手続を要することになります。つまり、硬性憲法であることは理論的な帰結です。したがって、憲法改正の要件を緩和することに関しても慎重であるべきです。
もっとも、憲法は決して不磨の大典ではありませんし、憲法が制限規範としての機能を十分に果たすための努力も必要です。具体的には、憲法九条と自衛隊の関係、八十九条と私学助成の関係などを法制局の解釈改憲に丸投げするのではなく、九条に関していえば、例えば専守防衛やそのための必要最小限度の戦力しか保持しないことなどの限定を置いた上で、憲法あるいは基本法に自衛隊を位置付けるなどの建設的な議論も期待をしています。
いずれにせよ、さきの大戦や冤罪事件などに鑑みるとき、現在においても国民の自由や平等に対する最大のリバイアサンは国家権力であることに変わりはなく、それゆえに、専断的な国家権力の行使を禁ずるための憲法の役割をより強固なものとし、法の支配、立憲主義を社会の隅々まで至らせるための議論をここ参議院憲法審査会で尽くしてまいりたいと希望しております。
以上です。
自由民主党 礒崎陽輔氏 憲法改正こそが審査会の役割
会長 次に、礒崎陽輔君。
礒崎 ありがとうございます。自由民主党の礒崎陽輔でございます。
ここで憲法審査会が始まったわけでございます。私は憲法改正を考えるのがこの審査会の役割だと思いますが、まだ憲法改正そのものに反対という皆さんも少しいらっしゃるようでございますけれども。
今までのお話にもありましたように、戦前の憲法は欽定憲法として、そして不磨の大典だと言われておったわけであります。こういう在り方がやはり基本的に民主主義上の非常に問題があり、戦後の憲法、この戦後の憲法の制定過程に問題があったという意見も特に我が党を中心に言う人たちもいらっしゃいますが、いずれにいたしましても、私の立場は、人間の作ったものでありますから、これを百年も二百年も三百年もそのまま続けていくというわけにはいかないわけでありますから、当然、時代が変われば憲法も変遷する、これは至極当然のことでございまして、ここにそういう、もう戦後六十年余を経まして憲法の改正をやっとできるという体制になったことは私は非常にいいことではないかと思っておるわけであります。
ただ、まだ二回目でありますから、余り慌てたことを言うとお叱りを受けるかもしれませんが、一体ここに何のために集まっているのかということはもう少し明らかにしていかなければならないと思います。
すなわち、これまでの長い経緯を考えれば、やはり今私が申し上げましたように、憲法の改正を行うことを、その方向で検討しようということであろうと思います。したがって、どういう手続でそれをやっているのか、どういう枠組みでやっていくのか。もう既にお勉強会という段階はできるだけ早く脱するべきだと思うわけであります。なるべく早く、どういうふうな形で憲法の改正案というのを作っていくのかということを考えなきゃなりません。
その中で、もちろんこれは我が党の中でも考えなきゃいけませんが、本当に、じゃ全部改正を求めていくのか、それとも現行の憲法の一部改正、これもいろんな単位があるというふうに思います。多くの部分をやるのか、ごく一部でもいいのか、まずその改正規定から改正しようという人の意見もあります。こういうものが様々あるわけでありますが、意見集約を今後やっていくためには、どういう枠組み、どういう手続でこの審査会が議論を進めていくかということを、ちょっと私は焦っているのかもしれませんけれど、少し議論をして明確にしていかないと、お勉強をずっと続けていっても、もうそういう段階ではないと思います。
もう前回の憲法調査会の御報告をいただきました。相当詳細かつ公平なおまとめの仕方をしていただいておると思います。各党で大体意見の一致が見られた事項、それほどでもないけれど大多数が賛成した事項、全く賛成が得られない事項。結局、今の日本国憲法の改正規定でいけば、多くの皆さんの合意がなされないことはできないわけでありますから、そうしたときに、本当に、じゃ全部、憲法の全部改正をするのか、それともその大方の合意のあるところで大くくりの改正をしていくのか、あるいはもう少し本当に同意の得られる小さい改正をしていくのか、そういうところを入っていかなきゃなりませんし、それを一体誰がリードしてどこが決めていくのか。各政党が案を出すのか、それとも与野党協議の中、与野党というか各党協議ですね、各党協議の中で出していくのか、そういうことをできるだけ早い段階で決めていっていただきたいと思います。そうすることによって、国民に期待する方向であるんだと思います。
もういつまでも議論をしていく段階ではなくて、具体的にどのように憲法を改正するのかと、そのためには、それの枠組みを決めてから個別の事項について、各党間の合意が得られるのか得られないのか、そういうことをやりまして、いずれにしても合意があったところをやろうというところには全く多くの人は異論がないと思いますので、その方向で憲法改正を一刻も早く…(続く)