1月31日 参議院予算委員会 浜田昌良氏(公明)1 中東の非核化に向けて日本は指導的役割を果たせ |
動画:http://www.youtube.com/watch?v=ysM6ByIdwsE
石井一委員長 浜田昌良君。(拍手)
浜田 公明党の浜田昌良でございます。本日は外交についての集中審議でございますが、私からは二点質問したいと思っております。
一点は、イランの核疑惑に対する我が国の対応のあり方、もう一点は、TPPの是非を、参加の是非を判断する上で、野田総理は国益の視点と何回もおっしゃっています。何が国益の視点なのかと、この二点について今日は質問したいと思っております。
まず一点目でございますが、イランの制裁問題でございますが、これにつきましては安住大臣が1月12日、ガイトナー米国財務長官からのイラン原油輸入削減要請につきまして、イランの核開発の問題は看過できない、早い段階で継続的に削減していく行動を取っていきたいと、こう発言された。しかし、ガイトナー長官自身は、金融制裁からの、日本銀行の、日本の銀行のですね、適用の除外を明言しなかった。
安住大臣がですね、そう発言された時に、確かにイランの輸入の代金は年間約1兆円です。その8割か9割はA社がやっている、残りはB社がやっている。その金融機関のリスクは考えられたかも知れませんが、それによってホルムズ海峡が閉まってしまうかもしれない。
国民生活のリスク、どの程度考えられたんでしょうか。また、併せて、このアメリカの制裁の正当性、どういうふうに踏まえられているのか、はっきり答えて頂きたいと思います。
安住財務大臣 ガイトナー長官が1月に訪日なさった時の時点で言えば、既に欧州諸国もこの核開発について激しい、厳しい批判をして、また制裁措置に対して共同行動を取るというふうな状況でガイトナー長官も訪日をなさって私と会談なさいました。
今先生御指摘のように、我が国では約まあ10%弱のこのイランからの輸入量でございますけども、私がガイトナー長官に申し上げたのは、これまで5年間、約40%の原油削減率で来ました。今後やっぱりこれは国際的な今の核開発の懸念というものについて共有している認識を持っているということであるならば、今後削減されていく方向に我が国も行くということを私は認識として申し上げましたが、先生御指摘のように邦銀の影響というのが非原油部門では、12月時点の国防授権法は60日という期限でございましたので、非常に影響が大きゅうございます。
1兆円はイランと邦銀の決済取引でございますが、邦銀が国内で、アメリカの国内でですね、取引をしてるのは、その5倍の額にあたります。
で、そうしたことを考えれば、やはりガイトナー長官との話し合いの中では、やっぱりそうしたことについての適用除外、例外化というのを私も強く求めましたし、ホルムズ海峡含む安全環境や国際状況を十分勘案しながらも、過去のアベレージで40%削ってきた、その流れに、逆に言うといわば逆行するような方向は我が国はとり得ないということは申し上げたつもりでございます。
浜田 今安住大臣が一点おっしゃったことは、正しくないことが一点ありますね。確かに非原油部門の制裁の期限は60日です。しかし原油部門は180日ですよ。そこ間違ってますよ。そんなに急いで発言することはなかった。事務方はその日は向こうの出方を見るというのが合意だったと新聞には載ってますよ。
本来、今回もですね、全く勇み足。
確かに、核開発の拡散は国際社会が一致協力して防がなきゃならない。特に我が国は唯一の戦争被爆国ですから、先頭に立たなきゃ、分かってますよ。しかし、そもそも今回のアメリカの制裁のやり方が、国際法・国内法から見て正統性があるのか。また、本来のイランの核開発断念という目標に対して効果があるのかという問題がある訳ですよ。
それで、まず、外務大臣にお聞きしたいと思うんですが、アメリカの金融制裁は、今までの国連決議、4度されてるんですが、それとの、それに基づくものなのか。また、なぜイランは4度の国連決議を無視してきてると思ってるのか。大臣の見解をお聞きしたいと思います。
玄葉外務大臣 あの、ま、おっしゃるようにですね、えー、制裁を含む国連安保理決議は4回為されてると。確か、06、07、08、10だと思いますけれども、それでですね、これ有権解釈は、米国の、ま、法律ですから、ま、率直に言って現段階でですね、我々に出来得るという状況にありませんが、ただ、ま、CISADA(シサーダ)というですね、ご存知の米国の対イラン制裁法、これが一昨年7月大統領が署名した法律、これはですね、いわば先ほど申し上げた10年6月に採択された安保理決議等の根拠に基づくものと位置づけているというふうに承知をしています。
で、その上で、何でイランはこの安保理決議を守らないのかということでございますけれども、ま、私もイランの外相に書簡を出したりしておりますけれども、ま、イランの言い分はですよ、平和利用は認められているのであると、ま、この一点張りであると。
ただ、先ほど広田委員とのですね、質疑の中でも申し上げましたけど、事の発端は2002年にですね、18年に亘るですね、核開発、これ未申告であったというところからですね、始まってるということをやはり理解をしていかなければならないのだろうというふうに考えておるところでございます。
浜田 今外務大臣が一昨年のアメリカの制裁については国連決議の関係があるとおっしゃいましたが、今回の幅広い、これだけのいわゆる輸入禁輸の制裁については根拠はないですよ、どう見たって。
もう一点ですが、なぜ、イランがその核開発を続けるのか。これも一面はっきりしてるのは、イスラエルの存在ですね。つまり、NPT、核不拡散条約の枠外であの国は自由に開発してるじゃないかと、国際査察も受けてないじゃないかと、アメリカは一切何も言わないじゃないかと、なのに、なぜうちだけ、という、これが源流にあるという訳ですよね。
ま、この、こういう源流の問題を解決しないと、イランと米国の衝突の問題というのはなかなか解決しない。力の制裁はどうしても暴発を招くと。その暴発で一番影響を受けるのは国民なんですよ。
次の問題ですが、じゃあこの国内法としての正当性、アメリカの制裁は国防授権法、ま、権限を授けると書くんですね、国防授権法という法律、耳慣れない法律に基づくものですが、この法律はどういう法律なんでしょうか。また、今までにこのような制裁措置が盛り込まれたことがあるのか、また、なぜこのような制裁内容がこの時期に盛り込まれたと外務大臣はお考えですか。
玄葉 えー、今質問のあった国防授権法の中身ということでありますけれども、これは2012年度の国防授権法でありますけれども、イランの中央銀行等と相当な取引を行った外国の金融機関に対して制裁を課す、これがひとつ。
もうひとつは、原油取引を行う外国金融機関については、イラン以外から十分に原油を確保できる場合には制裁対象とすると、まあ主な内容はこのふたつだと思うんです。
で、その上で、過去こんなことがあったのかという問いでございますけれども、1994年国防授権法、この時は旧ユーゴの紛争だというふうに思いますが、セルビアとモンテネグロに対して資金の支出を禁じる制裁というのが含まれていると。また2007年度にはイランと取引を行っている国への制裁強化を盛り込もうとした動きがあったけれども、法律としては成立しなかったというふうに承知をしているところでございます。
イランによる核問題を巡っては、昨年11月のIAEA理事会での決議、これ広田委員の指摘にもありましたけど、あるいは在米のサウジアラビア大使の暗殺計画などがまたあってですね、これ議会がですね、えー、ま、あまり背景を私の立場で言うのはどうかと思いますけれども、基本的な事実関係を言えば、議会の意向を受けてこのような形になってるというふうに理解してます。
浜田 あの、今1994年旧ユーゴについては盛り込んだ例があるとおっしゃいましたが、この国防授権法、National Defense Authorization Actという、本来予算の、ま、権限を与えるという、それが本来の法律なんですよ。この制裁なんて、ホント薄い1ページなんですよ。ま、そういう議員立法で、かなり、かつその大統領の裁量が大きいという無理筋の法案ですよ、こんなのは。
じゃ、なぜこの時期にこういう法案が盛り込まれたのかと、これについては、元イラン大使、孫崎享さんですね、外務省の情報調査局長もされましたけども、こうおっしゃってます、ある雑誌のインタビュー。「11月の大統領選挙に資金的・動員的大きな影響力を持つイスラエルロビーの圧力を受けたものだ」と。
つまり何かと言うと、「パレスチナに資金的援助を行っているイランの資金源たる原油輸出を止めようというのが目的だ」と、こうおっしゃってるんですよ。
じゃあ、三点目も問題ですが、じゃあアメリカの制裁がイランの核開発断念という目標に本当に効果があるのかという問題。外務大臣にお聞きしますが、このような措置で、イランは核開発を断念しますか。
玄葉 あの、法律的な話だと思うんですけれども、えー、効果的な制裁という言い方を申し上げました。効果的な制裁・圧力と対話ということだと思ってます。で、効果的な制裁たり得るためにはどうすればいいのかと言ったら、やはり一番は国際協調であると。で、原油価格を安定させると。
ただ、残念ながら、もう既に表に出てますからいいと思いますけれども、インドは取引を継続すると言っていると、中国の問題もあるという中でですね、どうやって効果的にしていくのかということも含めて、私は昨年訪米した時からですね、かなり率直な意見交換をクリントン国務長官ともしていると。
従ってですね、今回の国防授権法の運用の問題についてもですね、率直な意見交換をしてきたし、今もですね、今度は事務レベルで2月2日に米国に行って、2回目の協議を行ないますけれども、やはり効果的な制裁たり得るように、こちらもですね、能動的にそちらにも関わっていくっていうことは必要だと思うんです。
で、同時にどこかのタイミングでですね、イランに対して伝統的な友好関係というのがありますから、そういった関係を活かして働きかけを行っていくと、両面必要なんだろうというふうに考えてます。
浜田 まあ、外務大臣おっしゃったように、やはり力の制裁だけじゃ駄目ですね。ま、力の制裁だけではホルムズ海峡閉鎖というリスクが高まるという副作用があってる(?)と。アメリカ自身は中東依存はほとんどないんですよ、原油の。あまりない。日本は今原発が止まってるんですよ。まさに副作用を一番受ける国なんですよ。そういう意味では、第三の道、これを探るべきなんですね。
あの、今一番国際社会がしなきゃいけないのは、イランの核開発そのものの阻止じゃないですか。そのためには実は2010年5月の核不拡散条約NPTの運用検討会議で大きなステップが踏み出された。何かと言うと、この中東非核化につきましては、95年に中東決議ってあったんですね。つまりこれは、NPTに入っていないイスラエルに対しても、いわゆる国際査察をするんだと、それで非核化をしていこうという決議がエジプトやイランの提案によって為されてるんですよ。
で、これについては、ずっと今までお蔵入りだった。しかし、これについては国際会議をいよいよ本年2012年しようという、場所もフィンランドにするというのが決まっていたんですよ。
ところが、何とこのEUが禁輸をします。フィンランドはEUの一員です。よって、この国際会議自身が今危ぶまれてるんですよ。こういうその、イラン、イスラエル、アメリカという為政者がね、角を突き合わしているという時に、日本が一体誰の声に一番耳を傾けるのか、今問われてるんですよ。
パネルを見ていただきたいと思います。これは私はそれぞれの国の国民、民の声に一番耳を傾けるべきだ。お手元に示しましたのは、昨年11月にイスラエルの世論調査、これはアメリカのメリーランド大学およびイスラエルのデハフ研究所で行ったものであります。
質問1でありますが、「結局イランは核兵器を開発するかと思うか」と言うと、イスラエルの方々は、9割はすると思ってるんですよ、もう。「じゃあ2つの選択のうちどちらがイスラエルにとって望ましいか」と、つまり、「イスラエルとイランの両国が核兵器をともに持たない」が65%、「両国がともに持つ」が19%しかないんですよ、イスラエルの人の。
また、「イスラエルおよびイランを含む全ての中東諸国が核施設の国際査察を受け入れるべきと思うか」賛成が60%。さらに、「こういう査察制度が施行されれば、イスラエルおよびイランを含む全ての中東諸国は核兵器を持たないことをコミットすべき」が53%ですよ。「このような内容の通りの中東非核条約を支持するか」これも64%。
これはイスラエルだけじゃありません。ちょっとデータ古いですが、北のイラン・米国2007年の World Public Opinion の世論調査でありますけれども、これも、「イスラム諸国・イスラエルを含む中東非核地帯を賛成しますか」という問いに対して、イランの国民は71%が賛成。アメリカ国民でさえ、71%賛成じゃないですか。
まさに、このイスラエル、イラン、またアメリカという国民の声自身は、中東非核化を望んでるんですよ。
特に我が国はイランとの長年の外交関係があります。総理、あの、「おしん」っていう番組ご存知でしょうか。30年前、ねえ、NHKの朝のドラマありました。イランではすごい人気で、3回も放送されて、毎回視聴率が8割か9割っていうんですよ。日本人を見ると、イラン人は女性見ると、おしんJapan、おしんJapanと言う。(会場笑)それは本当に苦労して、苦労して、苦労して幸せをつかんだ日本の女性に対する尊敬ですよ。
また、東洋のシンドラーと言うんでしょうか、杉原千畝さん。この方は第二次大戦の時に、外務省に反対されながらもビザを切って多くの方々の、ナチスドイツからの迫害を受けた多くの方々の命を救った。その方の今記念碑はイスラエルのエルサレムの丘にありますよ。
まさに両国からともに信頼されている国は日本なんですよ。まさにその非核化の一歩が進もうとしてるこの国際会議、今危ぶまれてます。
まさに野田総理は今回の施政方針演説で、この中東問題、平和的・外交的な解決に努力することを基本とおっしゃった。そうであるならば、この中東国際、この中東決議の第一歩としての国際会議に向け、日本自身が能動的役割を果たす、これを明言して頂けますか。具体的に開催を是非ですね、この北欧での開催が無理だったら、日本での開催も考えて欲しいんですが、いかがでしょうか。
委員長 はい、それじゃまあ、まず外務大臣。
玄葉 あの、大変ですね、あの、建設的な素晴らしいご提案を頂いているというふうに思ってます。で、今配っていただいたですね、このイスラエルでの世論調査の、「イスラエルとイラン両国が核兵器をともに持たない」65%というこの質問にはですね、非常にあの、色んなことを教えてくれるというふうに思います。
で、おっしゃったですね、中東非大量破壊兵器の地帯を作るという2012年の国際会議ですが、確かに危ぶまれてます。つまりは、まさに当事国であるイスラエルそしてイランが参加するのかという問題があると。
ですから、私として今考えているのはですね、日豪、日本とオーストラリアがイニシアティブを取っているNPDIなどでですね、この問題を取り上げて、どういうふうにしたらですね、この会議が開催できるかということについて検討したいなあと。
非常にですね、あの、浜田委員からですね、えー、軍縮、熱心に本当に国際社会全体をよくご覧になったですね、いい質問をいただいて、参考にさせていただきます。ありがとうございます。
野田 あの、イランもイスラエルも国内の政局がちょっと微妙な問題それぞれ抱えています。妙にエスカレートしていくと本当に大変なことになると思いますので、あの、外交的平和的解決を目指すと言いましたが、あの、対話と圧力がありますが、特に日本の場合はこれまでの御指摘のように長い間の関係がある中で働きかけの工夫の仕方が色々あるかと思います。それをまず全部出し切るということが必要だと思いますし、今御指摘のあった先ほどの資料も、あの、大変興味深い世論調査の結果だと思います。
あの、我が国は唯一の戦争の被爆国でございますから、非大量破壊兵器地帯設置に向けて、是非先頭になっていきたいと、今外務大臣が具体的に日豪の関係を言っておりましたけれども、2012年中にその国際会議が開催できるように指導的な役割を果たしていきたいというふうに思います。(拍手)
浜田 ありがとうございます。
「情けは人の為ならず」という言葉があるんですね。この非核地帯というものの考えが広まっていくと、実はもうひとつ懸念の地点、この朝鮮半島の問題があるわけですよ。これについても東アジアの非核地帯という考えがあります。これについていかに国際世論を作っていくのか。まさに金正日が死去したまさにこの時にどういう世論を作る重要な時に、こういう日本の役割をすれば、アラブのいくつかの国は北朝鮮とも深い仲でありますから、大きな機会になると思いますので、是非お願いしたいと思います。(続く)