2014年 08月 26日
日テレ 『深層NEWS』 慰安婦問題を考える 秦郁彦・下村満子 1 |
2014年8月19日 日テレNEWS24 『深層NEWS』 「慰安婦問題を考える」
http://www.news24.jp/articles/2014/08/20/07257555.html#
キャスター 玉井忠幸(読売新聞局次長兼編集委員)
小西美穂(日本テレビ報道局)
ゲスト 秦郁彦(現代史家)
下村満子(元アジア女性基金理事・元朝日新聞編集委員)
以下の書き起こしで、「ね」「ですね」や明らかな言い間違いなどは省略しています。
小西 先日、朝日新聞が、いわゆる従軍慰安婦問題を取り上げた一部の記事を取り消しました。これによって、改めて関心を読んでいる慰安婦問題について今日は考えます。
玉井 問題は、この誤報が韓国の反日感情を煽って、さらに日本に対する歪んだイメージを世界に広めた、その根拠になっていたというところがありますよね。今日は、日本の誤解をどう解消するか、それから日韓関係をどう改善するか、そのために慰安婦問題の本質について改めて掘り下げます。
小西 本日のゲストをご紹介します。20年以上にわたって慰安婦問題を研究されている現代史家の秦郁彦さんです。よろしくお願い致します。そしてもうお一方、元アジア女性基金理事で、元朝日新聞編集委員の下村満子さんです。よろしくお願いします。
お二人にはこのあと、じっくりお話を伺います。
<ビデオ>
ナレーション: 今月初め、朝日新聞が、いわゆる従軍慰安婦の問題について特集を組み、過去の一部の記事に誤りがあったことを認めました。
第二次大戦中、日本の統治下にあった朝鮮で、数百人の若い女性を強制連行したなどとした証言。これを元にした記事について朝日新聞は、証言は虚偽だと判断、記事の取り消しを表明。また、戦時中に女性を軍事工場などに動員した挺身隊という言葉と慰安婦を混同した記事を掲載したことについて、その誤用を認めました。
これについて菅官房長官は…
菅 客観的な事実に基づく、正しい歴史認識、これが形成されることを強く望んでおります。
ナレーション 日本は韓国をはじめ国際社会と今後どう向き合うべきなのか。今日は徹底討論します。
<スタジオに戻る>
小西 改めて本日のゲストをご紹介します。20年以上にわたって慰安婦問題を研究されている現代史家の秦郁彦さんです。よろしくお願い致します。元アジア女性基金理事で、元朝日新聞編集委員の下村満子さんです。お願い致します。
今月5日と6日、朝日新聞は、いわゆる従軍慰安婦問題に関する特集を組みました。この記事のポイントをこちらにまとめてあります。
大きく分けて四つのポイントがあるのですが、中でも、過去の記事の一部に誤りがあったことを認めたのが、この上の二点です。韓国済州島で慰安婦を強制連行したという証言、いわゆる吉田証言に関しまして、朝日新聞が済州島を再取材したところ、裏付けが得られず、虚偽と判断、記事を取り消しました。
そして、もうひとつ、過去に挺身隊と慰安婦を混同した記事を掲載したことについては、当時は研究が乏しく同一視していたとして、この誤用を認めました。
まずはお二人に、今回のこの朝日新聞の記事についてどのように受け止められているか伺っていきたいんですが、下村さんは、朝日の元編集委員というお立場でもいらっしゃって、今回の記事、どういうふうに受け止められていますか?
下村 まあ、ここに手元にあるんですけれども、まあすごい、二日にわたりましてね、特に一面トップにまずこの、それから中で。私は朝日新聞の元記者でもあり、それからたまたまアジア女性基金の理事も十数年、最初から最後まで関わっていたので、こういうテーマにはやはり興味があるのでパッと目が行きますけれど、記者としてこれだけのスペースを書くということは異例ですよね。私が記者だったときに、こんなにひとつのテーマでということは、まず私の最初、それ、印象というのは、「何で今、こんなことをやったんだろう」というね、よくわからないというか、唐突というのがまずあって、なぜ今ということと、何でこんなことを。
読んでみましても、先ほどの訂正とかありましたけどもね、あれは前から言われていたことでもあるし、新鮮、新しいことは何一つないのでね、歴史的な過去の経緯、日韓の外交交渉とかというのはうまくまとめてあるのでお勉強にもなったし、それはいいんだけど、なぜこれほどのスペースをね。何か非常に朝日の側に意図があって、それをちょっとむしろ秦先生はそれに関与していらしたというふうに伺っておりますので、聞きたいなあと今日は思って来たんですけど。そもそもの本音と、裏の。私、ほら、関与してないもんですから、むしろ逆に外から見た印象は「何で?」。
それから、ちょっと言葉を言い過ぎると、何でこんなバカなことを突然やったんだろうなっていう。ごめんなさい、朝日の方。
玉井 「バカ」っていうのはどういう意味ですか?
下村 「バカ」っていうのはわからないから。なぜ今これだけのスペースを書いて、二日にわたって、今、今日のニュースと直接関係、まあ、ずっとこの問題はあれで、さっき日韓関係が悪いということはもちろんですよ。だけども、何か突然、何の意図なのか、自己批判なのか、自己反省なのか、あるいは我々は正しいんだということが言いたいのか、何か全体を見てもわからない。
玉井 意図がよくわからないと。なるほど。
小西 秦さんは、今、関わっておられたというのはご存じない方もいらっしゃると思いますので。朝日新聞の今回のこの二日間にわたる特集についてのどういう立場で? 相談を受けたりされていたという、どういう立場で関わられたんですか?
秦 早い話がですね、二、三日前に案文を見せられて、それでどうかという感想を聞かれて。
下村 二、三日前なんですか。企画の段階ではなくてね?
秦 ええ、そうじゃないんですね。それで、気がついたことは申し上げたんですがね。そして、私のコメントというのも出ましたけれどもね。その中で私はこういう言い方をしたんです。やっぱりね、一応そういうやり取りがありましたのでね、あんまりバッシング的なことは言いにくいし、それは出たあとにね、みなさんが歯に衣着せず色々言うだろうと。
で、私としてはですね、まあ、一応、やらないよりは良かったという意味で「評価する」ということとですね。ただ、この誤報を認めたんだけれども謝罪をしていないんですよね。ですからね、これ、必ずね、謝罪をしてないのはなぜだという声が出るだろうと。それを考えたほうがいいんじゃないのということを私は申し上げたんだけれども、結果的に謝罪の言葉は出なかったですよね。
ですからね、いずれにしても、どういう意図でこの時期にああいうものを出されたのかというのは、これはおそらく朝日の一番トップのあたりの判断だと思いますのでね、そのあたりはね。
下村 ただ、私、これ全体を読んで、さっき、まとめられましたね、四つ。私の印象というのはちょっと違って、それから吉田なんですか、さんの証言というのは、これはずいぶん前から言われていて、ただそれは、もちろん朝日がかなり、私は実はその記事読んでいないので、かなり大きく扱ったとか色々あるかもしれませんけど、他の新聞もその当時はそういう記事を書いているところがほとんど、その扱いとか何とかは別としてあったというふうに、ここにもちょっと書いてありますし、そういう意味では、これが誤報であるということを盾にね、これは別にここの先生がそうだっていうんじゃなく、何となく世論が「だから従軍慰安婦はなかった」とか「すべてが間違いだった」というふうに持っていこうとする、そういう動きもちょっと感じられるんですね。
だから、その辺のところがね、私は、そんなことはわかってることなので、どうしてかっていうのが相当不思議なんですよ。
玉井 ちょっと他の新聞でもという話がありましたので、一応補足しておきますと、読売新聞でも91年8月の記事などで、慰安婦と挺身隊を混同した報道もアリましたけれども、少なくともこの15年間はその混同が誤りであるということを社説などで繰り返し指摘していると。それから、吉田証言についても、これを根拠に慰安婦狩りというものが行われたという事実があったという報じ方はしていないんですね。
つまり、メディアでもこの問題については見解が分かれ、報道ぶりも分かれていたと。
朝日報道がその後の慰安婦問題の論議、あるいは韓国内でも喧伝されて…
下村 そこがスタートラインみたいなものになった。
玉井 ええ。かなり影響を与えたというのが事実だと思うんですね。
秦 ただね、吉田証言というのはですね、かなり象徴的な意味も込めて、のちに与えた影響というのは非常に大きいんですよ。つまり非常にわかりやすい話なんですね。木刀を振るって、それで泣き叫ぶ女性たちを駆り集めた、これは吉田清治氏の創作だったわけですね。
下村 本当に創作なんですね。それは何でそういうことをしたんでしょうね。
秦 いや、そういうのがね、時々あるんですよ。
下村 何のためにしたのかという。
秦 いや、それはわからないのでね。
下村 目立ちたい?
秦 最終的にはね、愉快犯とでもしか言いようがないと。それで、吉田老人と私は何回もね、話をしましたけどね、話をしたというのは電話で話をしたんです。「あなたは敵方だからね、こんな話をする義務はないんだけど」と言いながら、一時間ぐらい延々と何でもしゃべるという非常に変な人でしたね。
下村 ちょっと目立ちたがり。
小西 この吉田証言については非常に重要なポイントですので、次のブロックで詳しくお話いただきたいんですけれどもね、朝日の記事がその後どのような影響を与えたのかというところについてちょっと検証したいんですけれども。
こちらに年表があるんですが、初報が82年の9月2日、これがもう本当の発端の先ほどおっしゃっている吉田証言というのの始まりではあるんですけれども、それ以降10年近くはあまり動きはなかったものが、91年の末、そして92年ぐらいからが、非常に実際の注目を集めた時期というのはこのあたりから政治問題化していくということなんですね。
ここで、秦さん、どうしてこのぐらいのスパンが空いていたのかという背景についてはどういうことなんでしょうか?
秦 そうですね。いろんな本が出るんですよ。それで、私も歴史家として怪しい本というのはずいぶんたくさん接してきている。その手口というのも大体わかってくる。ですからね、疑問を持ちさえすればすぐわかるわけです。
小西 手口ってどういうことですか?
秦 手口というのは色々あるんですがね、たとえば慰安婦狩りをやったというようなこういう話ですね、つまり大きな話題ですよね。これは第一作に出てこないで、一年か二年後の第二作に出てくるというケースが結構あるんです。
どういうことかというと、第一作は一応売れたと。で、第二作を出すとね、もうちょっと華々しい大きな花火を上げないとね、これは出版社もそれを望むというか、傾向があるんでしょうね。吉田氏のやつも第二作なんですよ。ですから、色々その……
下村 一作って何だったんですか?
秦 第一作というのはね、下関における朝鮮人の労務者を調達する話。
下村 ああ、じゃあ、慰安婦ではないわけですね。
秦 慰安婦じゃないわけですね。
玉井 いわゆる徴用の話?
秦 徴用でもないんですね、これがね。要するに自由労務者を調達をするというのが彼がいた機関の仕事なんですよね。何でそんなところにいたかというとね、この人、アヘンの密輸で捕まりましてね、それで二年間刑務所に入ってたんです。で、出てきた時にね、これ、昭和17年なんですがね、そうすると、あんまり仕事がもう普段だとないんだけれども、戦争中ですから、もうとにかく何でも労働力が欲しいということもあって、労務報国会というところのスタッフになったわけですね。で、自由労務者の調達をやってたんですね。
で、それを書いた本が一応売れたもんだから、第二作に。だから、第二作にああいう華々しい話が出てくるというのは他にもパターンがあるんですね。
それからね、みなさんが案外……。私はすぐ中身で疑問を持ちました。じゃあ、最初にどうやって疑問を解決するか。出版社に電話したんですよ。そうしたら担当者が出てきてね、「ああ、あれは小説ですよ」と。
玉井 出版社がそういう……?
秦 そう言うんです。でね、NHKなんかも番組を作ろうとしてね、やっぱり電話をかけた。そうしたら「あれは小説ですよ」。やめちゃったんですね。だけど、引っかかる人というのは必ずいるんですよ。ある段階からはもうね、うわあっと大河の流れのようになりましてね。もう……。
小西 じゃあちょっと一旦コマーシャルを挟んでこの吉田証言の話を詳しく、のちほどのブロックでやりましょうか。
(CM)
(つづく)
http://www.news24.jp/articles/2014/08/20/07257555.html#
キャスター 玉井忠幸(読売新聞局次長兼編集委員)
小西美穂(日本テレビ報道局)
ゲスト 秦郁彦(現代史家)
下村満子(元アジア女性基金理事・元朝日新聞編集委員)
以下の書き起こしで、「ね」「ですね」や明らかな言い間違いなどは省略しています。
小西 先日、朝日新聞が、いわゆる従軍慰安婦問題を取り上げた一部の記事を取り消しました。これによって、改めて関心を読んでいる慰安婦問題について今日は考えます。
玉井 問題は、この誤報が韓国の反日感情を煽って、さらに日本に対する歪んだイメージを世界に広めた、その根拠になっていたというところがありますよね。今日は、日本の誤解をどう解消するか、それから日韓関係をどう改善するか、そのために慰安婦問題の本質について改めて掘り下げます。
小西 本日のゲストをご紹介します。20年以上にわたって慰安婦問題を研究されている現代史家の秦郁彦さんです。よろしくお願い致します。そしてもうお一方、元アジア女性基金理事で、元朝日新聞編集委員の下村満子さんです。よろしくお願いします。
お二人にはこのあと、じっくりお話を伺います。
<ビデオ>
ナレーション: 今月初め、朝日新聞が、いわゆる従軍慰安婦の問題について特集を組み、過去の一部の記事に誤りがあったことを認めました。
第二次大戦中、日本の統治下にあった朝鮮で、数百人の若い女性を強制連行したなどとした証言。これを元にした記事について朝日新聞は、証言は虚偽だと判断、記事の取り消しを表明。また、戦時中に女性を軍事工場などに動員した挺身隊という言葉と慰安婦を混同した記事を掲載したことについて、その誤用を認めました。
これについて菅官房長官は…
菅 客観的な事実に基づく、正しい歴史認識、これが形成されることを強く望んでおります。
ナレーション 日本は韓国をはじめ国際社会と今後どう向き合うべきなのか。今日は徹底討論します。
<スタジオに戻る>
小西 改めて本日のゲストをご紹介します。20年以上にわたって慰安婦問題を研究されている現代史家の秦郁彦さんです。よろしくお願い致します。元アジア女性基金理事で、元朝日新聞編集委員の下村満子さんです。お願い致します。
今月5日と6日、朝日新聞は、いわゆる従軍慰安婦問題に関する特集を組みました。この記事のポイントをこちらにまとめてあります。
大きく分けて四つのポイントがあるのですが、中でも、過去の記事の一部に誤りがあったことを認めたのが、この上の二点です。韓国済州島で慰安婦を強制連行したという証言、いわゆる吉田証言に関しまして、朝日新聞が済州島を再取材したところ、裏付けが得られず、虚偽と判断、記事を取り消しました。
そして、もうひとつ、過去に挺身隊と慰安婦を混同した記事を掲載したことについては、当時は研究が乏しく同一視していたとして、この誤用を認めました。
まずはお二人に、今回のこの朝日新聞の記事についてどのように受け止められているか伺っていきたいんですが、下村さんは、朝日の元編集委員というお立場でもいらっしゃって、今回の記事、どういうふうに受け止められていますか?
下村 まあ、ここに手元にあるんですけれども、まあすごい、二日にわたりましてね、特に一面トップにまずこの、それから中で。私は朝日新聞の元記者でもあり、それからたまたまアジア女性基金の理事も十数年、最初から最後まで関わっていたので、こういうテーマにはやはり興味があるのでパッと目が行きますけれど、記者としてこれだけのスペースを書くということは異例ですよね。私が記者だったときに、こんなにひとつのテーマでということは、まず私の最初、それ、印象というのは、「何で今、こんなことをやったんだろう」というね、よくわからないというか、唐突というのがまずあって、なぜ今ということと、何でこんなことを。
読んでみましても、先ほどの訂正とかありましたけどもね、あれは前から言われていたことでもあるし、新鮮、新しいことは何一つないのでね、歴史的な過去の経緯、日韓の外交交渉とかというのはうまくまとめてあるのでお勉強にもなったし、それはいいんだけど、なぜこれほどのスペースをね。何か非常に朝日の側に意図があって、それをちょっとむしろ秦先生はそれに関与していらしたというふうに伺っておりますので、聞きたいなあと今日は思って来たんですけど。そもそもの本音と、裏の。私、ほら、関与してないもんですから、むしろ逆に外から見た印象は「何で?」。
それから、ちょっと言葉を言い過ぎると、何でこんなバカなことを突然やったんだろうなっていう。ごめんなさい、朝日の方。
玉井 「バカ」っていうのはどういう意味ですか?
下村 「バカ」っていうのはわからないから。なぜ今これだけのスペースを書いて、二日にわたって、今、今日のニュースと直接関係、まあ、ずっとこの問題はあれで、さっき日韓関係が悪いということはもちろんですよ。だけども、何か突然、何の意図なのか、自己批判なのか、自己反省なのか、あるいは我々は正しいんだということが言いたいのか、何か全体を見てもわからない。
玉井 意図がよくわからないと。なるほど。
小西 秦さんは、今、関わっておられたというのはご存じない方もいらっしゃると思いますので。朝日新聞の今回のこの二日間にわたる特集についてのどういう立場で? 相談を受けたりされていたという、どういう立場で関わられたんですか?
秦 早い話がですね、二、三日前に案文を見せられて、それでどうかという感想を聞かれて。
下村 二、三日前なんですか。企画の段階ではなくてね?
秦 ええ、そうじゃないんですね。それで、気がついたことは申し上げたんですがね。そして、私のコメントというのも出ましたけれどもね。その中で私はこういう言い方をしたんです。やっぱりね、一応そういうやり取りがありましたのでね、あんまりバッシング的なことは言いにくいし、それは出たあとにね、みなさんが歯に衣着せず色々言うだろうと。
で、私としてはですね、まあ、一応、やらないよりは良かったという意味で「評価する」ということとですね。ただ、この誤報を認めたんだけれども謝罪をしていないんですよね。ですからね、これ、必ずね、謝罪をしてないのはなぜだという声が出るだろうと。それを考えたほうがいいんじゃないのということを私は申し上げたんだけれども、結果的に謝罪の言葉は出なかったですよね。
ですからね、いずれにしても、どういう意図でこの時期にああいうものを出されたのかというのは、これはおそらく朝日の一番トップのあたりの判断だと思いますのでね、そのあたりはね。
下村 ただ、私、これ全体を読んで、さっき、まとめられましたね、四つ。私の印象というのはちょっと違って、それから吉田なんですか、さんの証言というのは、これはずいぶん前から言われていて、ただそれは、もちろん朝日がかなり、私は実はその記事読んでいないので、かなり大きく扱ったとか色々あるかもしれませんけど、他の新聞もその当時はそういう記事を書いているところがほとんど、その扱いとか何とかは別としてあったというふうに、ここにもちょっと書いてありますし、そういう意味では、これが誤報であるということを盾にね、これは別にここの先生がそうだっていうんじゃなく、何となく世論が「だから従軍慰安婦はなかった」とか「すべてが間違いだった」というふうに持っていこうとする、そういう動きもちょっと感じられるんですね。
だから、その辺のところがね、私は、そんなことはわかってることなので、どうしてかっていうのが相当不思議なんですよ。
玉井 ちょっと他の新聞でもという話がありましたので、一応補足しておきますと、読売新聞でも91年8月の記事などで、慰安婦と挺身隊を混同した報道もアリましたけれども、少なくともこの15年間はその混同が誤りであるということを社説などで繰り返し指摘していると。それから、吉田証言についても、これを根拠に慰安婦狩りというものが行われたという事実があったという報じ方はしていないんですね。
つまり、メディアでもこの問題については見解が分かれ、報道ぶりも分かれていたと。
朝日報道がその後の慰安婦問題の論議、あるいは韓国内でも喧伝されて…
下村 そこがスタートラインみたいなものになった。
玉井 ええ。かなり影響を与えたというのが事実だと思うんですね。
秦 ただね、吉田証言というのはですね、かなり象徴的な意味も込めて、のちに与えた影響というのは非常に大きいんですよ。つまり非常にわかりやすい話なんですね。木刀を振るって、それで泣き叫ぶ女性たちを駆り集めた、これは吉田清治氏の創作だったわけですね。
下村 本当に創作なんですね。それは何でそういうことをしたんでしょうね。
秦 いや、そういうのがね、時々あるんですよ。
下村 何のためにしたのかという。
秦 いや、それはわからないのでね。
下村 目立ちたい?
秦 最終的にはね、愉快犯とでもしか言いようがないと。それで、吉田老人と私は何回もね、話をしましたけどね、話をしたというのは電話で話をしたんです。「あなたは敵方だからね、こんな話をする義務はないんだけど」と言いながら、一時間ぐらい延々と何でもしゃべるという非常に変な人でしたね。
下村 ちょっと目立ちたがり。
小西 この吉田証言については非常に重要なポイントですので、次のブロックで詳しくお話いただきたいんですけれどもね、朝日の記事がその後どのような影響を与えたのかというところについてちょっと検証したいんですけれども。
こちらに年表があるんですが、初報が82年の9月2日、これがもう本当の発端の先ほどおっしゃっている吉田証言というのの始まりではあるんですけれども、それ以降10年近くはあまり動きはなかったものが、91年の末、そして92年ぐらいからが、非常に実際の注目を集めた時期というのはこのあたりから政治問題化していくということなんですね。
ここで、秦さん、どうしてこのぐらいのスパンが空いていたのかという背景についてはどういうことなんでしょうか?
秦 そうですね。いろんな本が出るんですよ。それで、私も歴史家として怪しい本というのはずいぶんたくさん接してきている。その手口というのも大体わかってくる。ですからね、疑問を持ちさえすればすぐわかるわけです。
小西 手口ってどういうことですか?
秦 手口というのは色々あるんですがね、たとえば慰安婦狩りをやったというようなこういう話ですね、つまり大きな話題ですよね。これは第一作に出てこないで、一年か二年後の第二作に出てくるというケースが結構あるんです。
どういうことかというと、第一作は一応売れたと。で、第二作を出すとね、もうちょっと華々しい大きな花火を上げないとね、これは出版社もそれを望むというか、傾向があるんでしょうね。吉田氏のやつも第二作なんですよ。ですから、色々その……
下村 一作って何だったんですか?
秦 第一作というのはね、下関における朝鮮人の労務者を調達する話。
下村 ああ、じゃあ、慰安婦ではないわけですね。
秦 慰安婦じゃないわけですね。
玉井 いわゆる徴用の話?
秦 徴用でもないんですね、これがね。要するに自由労務者を調達をするというのが彼がいた機関の仕事なんですよね。何でそんなところにいたかというとね、この人、アヘンの密輸で捕まりましてね、それで二年間刑務所に入ってたんです。で、出てきた時にね、これ、昭和17年なんですがね、そうすると、あんまり仕事がもう普段だとないんだけれども、戦争中ですから、もうとにかく何でも労働力が欲しいということもあって、労務報国会というところのスタッフになったわけですね。で、自由労務者の調達をやってたんですね。
で、それを書いた本が一応売れたもんだから、第二作に。だから、第二作にああいう華々しい話が出てくるというのは他にもパターンがあるんですね。
それからね、みなさんが案外……。私はすぐ中身で疑問を持ちました。じゃあ、最初にどうやって疑問を解決するか。出版社に電話したんですよ。そうしたら担当者が出てきてね、「ああ、あれは小説ですよ」と。
玉井 出版社がそういう……?
秦 そう言うんです。でね、NHKなんかも番組を作ろうとしてね、やっぱり電話をかけた。そうしたら「あれは小説ですよ」。やめちゃったんですね。だけど、引っかかる人というのは必ずいるんですよ。ある段階からはもうね、うわあっと大河の流れのようになりましてね。もう……。
小西 じゃあちょっと一旦コマーシャルを挟んでこの吉田証言の話を詳しく、のちほどのブロックでやりましょうか。
(CM)
(つづく)
by kokkai-sokuhou
| 2014-08-26 00:58