二重ローン救済法案 7月27日参議院復興特別委員会 吉田忠智氏(社民党) |
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質問 吉田忠智氏(社民党)
答弁 片山さつき氏(自民党・発議者)
西田実仁氏(公明党・発議者)
荒井広幸氏(たちあがれ日本・発議者)
吉田 社会民主党・護憲連合の吉田忠智でございます。
社民党も、二重ローン問題の解決のために、債権買取り機構を含む特別立法を求めてまいりました。その点で提案者の皆様とお気持ちは同じでございます。法案をおまとめいただきまして大変丁寧な対応をしていただきました片山さつき議員を始めとする提案者の皆様方にお礼を申し上げたいと思います。
荒井広幸議員を中心とする超党派の官民連携推進研究会が日弁連の案をベースにして検討、勉強を重ねてまいりました。私も社民党を代表して参加をさせていただきました。そうしたこともございまして、重い腰を上げて先般成立した二次補正予算の中で、産業復興相談センター及び産業復興機構による中小企業の二重ローン対策を政府としても打ち出してこられたのではないかと、そのように思っています。
政府のスキームと法案の違い
先ほど藤井議員からも質問がございましたが、政府のスキームと法案のスキームの違いですね。要は、政府は既存の法律の枠内でやるんだ、提案者の、今回の議員立法の案は買取り機構は新たな法律を作ってやるという、それはもちろん違いがあるわけですが、どうもこれまでの答弁を聞いていますと、政府は、今までの再生ファンドとは違うんですよと、しっかり踏み込んでできますよ、提案者の皆さん方は、いや、従来と余り変わらないという答弁であったと思いますが、その点についてもう少し分かりやすく違いを、先ほど荒井先生からは明快に答弁いただきましたけれども、片山先生から是非その辺の違いをお聞かせいただきたいと思いますが。
法律に基づかないと債権放棄はまずできない
片山 法律に基づかないということですと、まずいろんな債権者が出てくるこの債権債務の整理の関係の中でその機構なりファンドなりがイニシアチブを持っても、それでまとまるという可能性は非常に減ります。
預金保険機構出資の公的な会社として我々の法律は作ってありまして、回収停止のお願いができるんですが、いまだかつてこういう回収停止の法律の要請について割って入った例はほぼなくて、なぜかというと、預金保険機構の上部機関にある金融庁が銀行等金融機関を押しなべて監督しておりますので、そこに割って入るということはほとんど我が国では起きないことでございますが、そうでないと、たとえ公的な機関が一部出資しているにしても、債権者としては平等ですから、この債権回収額では不満だと思った時点でノンバンクなりなんなりが回収を掛けてくる可能性は非常に高いので、そういうことがありますので、今までの中小企業ファンドでは債権放棄で合意した例はほぼありません。繰り延べているだけです。私的ガイドラインの事業会社版がほとんど使われなかったのも同じ理由でございます。
結局、どこかの債権者が法的な要請が全くない中で自分たちがこれだけの猶予や放棄に応じていいのか、それは駄目だろうと、やはり株主に説明できないだろうということになるんですが、法的に枠組みがあれば、我が国ではほとんどその辺について、それこそ支店長が判こを押すというような長年の積み重ねがあって、実務ではそれが全く違います。
被災企業のほとんどは政府スキームで使う投資事業組合の対象にならない
そして、投資事業組合というものを使っておられる以上は、投資事業組合の対象は限定列挙されておりまして、それはあまねくどんな中小企業のどんな経営状態でもではないんですよ。そこは何らかの事業革新なり、さっき四つ私が列挙しましたけれども、それに当たるものだけです。その点をまさに民主党の事業仕分が延々と議論しておられたんですね。2千600万社を助けるものじゃなくて、一部を選ぶときにどの基準か、ああ、この四つかということで何千社なんですねと。
今回それをやったら、それに引っかかる会社はほとんどございませんし、さっきから出ている亘理町のイチゴ農家、家族が流され、ハウスが流され、そして町に3人しかいない普通の診療所、看護婦さんがいないけれども、あと自分は10年働ける、でも診療所をもう一つ建てないと、その二重ローンがないとできない、 そういった状況においては、事業再構築とか経営資源の再合理化のような概念がそもそもそのジャンルに全然ないんですよ。全く違うんですよ。ですから、私は、そこまで無理をしないでも、こういった枠組みに中小再生協議会が乗っていただければ万事うまくいくのになというふうにずっと思っているわけでございます。
これまで頑強にやらなかった税金による私有財産の回復に今回踏み込むのはなぜか
吉田 従来、政府は、私有財産の形成は自己責任によるべきであって、税金による支援は認められないとの立場を取ってきました。これは、そういう姿勢というのは私は変わっていないと、そのように思います。そうした自己責任論が阪神・淡路大震災やその他の中越、中越沖地震など多くの被災者の生活再建支援を妨げてきたと、そのように思っていますし、社民党はこの問題について一貫して公的な生活支援策を求めてまいりました。そして、政府の見解を批判してまいりました。
今回、提案者は、二重ローン問題に対する被災者支援について税金による支援にまで踏み込んだわけでありますけれども、基本的なことではありますけれども、今回なぜ公的支援がなされるのか、改めてお伺いをします。
企業数が回復した阪神淡路と今回との違い
片山 阪神大震災当時、党首で当時おられたかどうか覚えていないんですけれども、土井先生も近くの御出身でしたので、私自身も被災後2か月ぐらいで現地に入りまして、まさに地元の団体の方と延々とその議論をいたしました。
個人的にはもう本当にここまで、当時は火災も多かったんですけれども、逸失しているときに、本当になしでいいのかという議論はあったんですが、ただ、そのとき見ていたのは、やはり神戸という土地には価値があるんですね。そして、破綻した会社が阪神大震災の下でも半年、一年たって急激に増えたんですけれども、その当時大阪等から入ってきた会社も多かったので、企業数が激減することにならなかったんです。そして、何よりも、先ほど多賀城の商工会の会長が言っておられましたが、私も9回現地に入っていろんな避難所とか町を見ていますが、どの町でも一様にどんどん人が抜けていくんですよ、どんどん廃業していくんですよ。これと同じペースのことは神戸ではなかったんですね。だから、その政令市というものの町の強さ、積み重ね、商業基盤、経済基盤があるところと、元々仙台の一部を除いてはほとんど全部過疎地域であるという状況との違いが非常に大きいということがあると思います。
自民党の綱領も変わった
それから、吉田先生には怒られるんですが、我が党も野に下って以来、直ちに綱領を作り直しまして、依然として、自助自立の個人を尊重し、その条件を整えるとともに、共助、公助する仕組みを充実すると。自律と秩序ある市場経済を確立するといいながら、自助自立する個人を尊重し、共助、公助する仕組みを充実するということに加えて、家族、地域社会、和ときずな、温かい地域の人間関係をしっかりと守るというようなことを入れております。我が党の綱領には市場原理主義という言葉はかつても今も一度もありませんが、民主党さん結党のときの方針には入っております。先ほどからお話を聞いていると、どちらかというと市場原理主義的なのは今の与党かなと思っておりますが。
地元企業再生は面としての地域を守るために不可欠
我々は、地域の再生ということがない限り経済の再生はないと思っておりますので、今回のように村落やコミュニティーが完全崩壊するおそれがあるようなことは神戸では割合少なかったんですね。当時の反省として、仮設にお入れするときに町内を分かってしまった、分けてしまったことによって再生するのが非常に難しくなったということはありますが、今回の、特に原発避難地域なんかはそもそもコミュニティーに入れないわけですから。このような状況は日本だけでなくて世界的にもほとんど起きたことがございません、津波の規模としても千年に一度ということで。これは国家のこの地域を守るための緊急避難として必要であると考えております。
自民党の基本的理念が変わった?
吉田 自民党さんが政権を担われているときに、私どもの受け止めとしては、やっぱり自己責任論というのが基調にあったと思いますが、今、片山議員の答弁によりま すと、そういうところも、やっぱり基本的なそういう考え方も改めたといいますか、そういうふうに受け止めていいわけですね。
片山 前の綱領のときから入っていたことではあるんですが、家族や地域社会が近年の経済社会情勢の変化によって崩壊しつつあるということの中で、我々は政党として、温かい人間関係、和ときずなの暮らしということを明確に掲げると。ですから、自助自立がもちろん基本なんですけれども、こういう条件を整える上ではやはり共助、公助の仕組みが充実される必要があるということをはっきりと入れております。言葉の修正という意味では、確かにそういう意味で変化があったのではないかと、私は個人的には思っております。
吉田 分かりました。
過去の災害で二重ローンを負った国民もいるが
この法律の肝の部分なんですけど、過去の災害で二重ローンを負った国民もおられるわけですよね。そうした国民の皆さんにどう対処するのか、この法律を考え、議論する上でですね。その点についてはいかがでしょう。
西田 今、過去のローンについて、二重ローンを負った国民に対するお話がございましたが、今回の私どもの東日本機構法は、やはり東日本大震災という地震そのものの大変甚大な被害に加えまして、津波による事業用地等の流失、さらには原発災害と、かなりこれまでの災害とは比較にならない大変甚大な被害があるということから、過去の災害とはかなり質が異なる特異なものであるということから、今回の二重ローンの買取り機構を設けるようなことが国民の皆さんにも御理解いただけるんではないかという趣旨で作らせていただきました。
将来の災害時にも同様のスキームを用意するのか
吉田 同様に、今後の災害において今回のような立法措置に基づく二重ローンの買取りスキームが用意されるべきかどうか、その点についてもお伺いします。
西田 まさに、今後、こうした災害の状況に応じましてまた検討をしていかなければならないというふうには思っております。
個人の二重ローン対策についての見解
吉田 今回、政府案でも本法案でも、住宅ローンや自動車ローンなど事業性の希薄な個人の二重ローン対策は、買取り機構ではなく個人版私的整理ガイドラインによる処理に委ねられました。このことについては一定の前進であるわけですが、その点についての理由ですね、どういう理由からでしょうかということと、またそれぞれの扱いにどのような相違があると想定されておられるのか、また今後住宅ローンや自動車ローンについて新たな対策が必要とはならないのかどうか、お伺いします。
荒井 吉田先生、社民党の皆さんには大変お世話になっておりました。
今お話がございましたけれども、当初は住宅ローン、それから自動車ローンというところも検討しております、おりましたですね、我々も。今回は事業者という意味で、非常に幅の広い事業者、先ほど来からいろんな業種、業態がございます。今回、事業者というところに光を当てました。
いずれ個人というところでこの自動車あるいは住宅ということを、先生がお考えになっているように我々も同じ気持ちを持っておりますので、まずはこの段階、特に住宅と自動車のところは若干猶予していただいているところがあるんですが、あした借金取立てだというのがいっぱいあるんです。ですから、まずはこの事業者の方を優先させていただき、後の段階でまた与野党の先生と御相談してそういった個人のローンのところに入っていければいいなと、これは私の私見でもございますが、そういう区分けであろうというふうに思っております。
それから、先ほど個人版私的整理ガイドラインというのがありましたけれども、先ほど新里弁護士からもありましたように、結局は銀行がそうしてくれなきゃいけないというところにありますので、金融庁がきちんと目を光らせる。それから、民主党さんからも御提案がありましたが、これだけだよと開示する、まあいろんな形をしていく。それはそれなりに実効性がある程度担保される。新里弁護士は画期的であると、こういうことで評価されましたけれども、私もそう思っております。
しかし、薬と同じで、被災者の方々はそれぞれ自分に合った薬を探されます。ですから、その薬の引き出しをいっぱいつくっておくということが非常に必要で、ガイドラインというのも必要でございますし、同時に今度の議員立法の法的枠組みと、こういうものも必要だろうと思います。そのほかに、様々な社会保障制度の充実だとかインフラの整備だとかもういろんなもの、予算措置の部分もございます。そうした被災者の方々に複数の選択肢と、そして薬でいえば複数の薬と併せて飲んで調合して効き目を出していただくと、そういうことが必要ではないかと考えております。
吉田 個人の課題については、また今後とも議論をさせていただきたいと思います。
買取機構の人員と組織
一刻も早い被災地の復興につなげるため迅速な債権買取りが必要となるわけでありますが、機構の人員、組織はどのようにつくっていくおつもりですか。政府が二重ローン対策で活用する予定の産業復興相談センターと産業復興機構の両組織の人員との関係はどのようになるでしょうか。また、機構の人件費、運営費用 はどれくらいとお考えか、伺います。
西田 機構の人員につきましては約200名の体制で臨めると思っておりますが、当初5年間ほどとその後の、最長20年ですから、15年間とは異なってくると思いますが、当初の5年間につきましては特にこの役員3人、職員200人体制で進めながら、その後は、管理が主になりますので、少しずつ減らしていくことになるのではないかというふうに想定をしております。
この機構は株式会社であります。預保や貯保等を株主といたしまして、発起人といたしまして、そうした機構が発行するこの株式を全部引き受けるということになるわけであります。
また、今御質問にありました産業復興相談センターあるいは産業復興機構との関係という話がございました。このセンターも、また政府が言っている機構も、 その本質、法的な根拠というのは中小企業再生支援協議会であり、また投資有限責任組合であるところのファンド法に基づくものでございます。
こうしたところの関係は私どもの法案では法61条に定めておりますけれども、認定支援機関との協力ということが書かれておりまして、例えば中小企業再生支援協議会では、協議会スキームというものでこれまでにも、例えば事業デューデリとかあるいは財務デューデリのノウハウというものはそれなりに築かれているわけでありますから、当然そうしたところと協力関係を築き、そして迅速な再生に向けて協力体制を強めていくということが必要だというふうに思っております。
銀行間、被災者間の取り扱いの公平性
吉田 ありがとうございました。
そこで、債権者である銀行間、あるいは債務者である被災者間の取扱いの公平公正の確保が必要でありますし、課題になると思うんですが、どのような措置を考えておられるのか、お伺いします。
西田 まさに、今御指摘のとおり、それが大事なところでございますので、この支援基準や支援の手続、あるいは買取り価格などにつきまして法律上きちんと規定をしているというのが今回の東日本機構法になります。具体的には、政令及び運用基準などによって、御指摘のとおり、公平公正がしっかりと確保されるようにしてまいりたいと思います。
買取価格決定はどのように
吉田 中でも買取り価格の適正化というものは、費用が国民負担であるという理由もあって、言うまでもなく極めて重要でございます。買取り機構の価格決定は誰がどのように決定をするのか、決定に際しては、救済、買取りの迅速性と時価の適正性、透明性の両者のバランスが重要と考えますが、それぞれどのように確保していかれるのか、伺います。
西田 一番大事なところでございまして、まず、この機構は、債権の買取りの申込みに対しまして、支援基準に従いまして債権の買取りをするかどうかを決定しなければならないと、このように22条第1項で定めさせていただいております。買取り価格につきましては、詳細は省きますが、適正な時価を上回ってはならないと、このように定めているわけであります。
そして、今御指摘の時価の適正性また透明性のバランスという話でありますけれども、適正性につきましては、これは先ほど申し上げたこの債権の買取り価格、適正な時価を上回ってはならないというこの適正な時価につきましては、もちろん協議会スキームでいうところの協議会のノウハウもありましょうし、また 法律では、金融庁又は日銀に対して技術的な助言、その協力を求めることができるというふうにもされております。また、この機構が買取り決定を行ったときに は主務大臣に報告しなければならないと、こう法律で定めているわけであります。主務大臣は機構に対して監督を行うというふうにも定めておりまして、時価の適正性を担保しているということであります。
さらに、透明性につきましては、機構は買取り決定を行ったとき速やかにやはり主務大臣に報告をしなければならない、またその公表もしなければならない、こういうふうにも定めておりまして、適正性また透明性についてはしっかりと確保してまいりたいと思っております。
吉田 残された課題については、また明日質問させていただきます。
ありがとうございました。