円高と日銀の対応 9 8月9日参院財政金融委員会 中西健治氏(みんなの党) |
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円高と日銀の対応 9 8月9日参院財政金融委員会 中西健治氏(みんなの党)
佐藤氏といい、中西氏といい、聞いていて勉強になります。筆者は経済問題にはど素人なんですが、何が論点なのかとか、議論の流れは理解できる気がします。錯覚かも知れんけど。
動画:参議院インターネット中継ビデオライブラリ
http://www.webtv.sangiin.go.jp/generator/meta_generator_wmv.php?ssp=6029&mode=LIBRARY
質問 中西健治氏(みんなの党)
答弁 野田佳彦財務大臣
白川方明日本銀行総裁
金融市場緊迫の中で財相辞任はあり得ない
中西 みんなの党の中西健治です。
今日の委員会の質疑と答弁を聞きながら、まず野田財務大臣に一点確認をさせていただきたいと思います。
今朝の報道で、特例公債法案が通過した、成立した暁には野田財務大臣は辞任をするということを今日中にも発表をするということが報道をされておりました。
大臣は、そんなことは言っていないということでございましたけれども、今金融市場、まさに緊迫しているという状況の中です。そして、G7の電話会議も行われて、その後の声明では、我々は今後数週間緊密に連絡を取り適切に協力するということをうたっている中で、もし辞任を今の時期に表明するなんということになりますと、全くナンセンス、無責任だというそしりは免れないんじゃないかなというふうに思っております。
今内閣が機能していないから閣僚はどんどん辞めた方がいいという、こんなような意見もあるにはありますけれども、こういうマーケットの状況ですので、こうした辞任をすると、辞任の表明をするということは全くの誤報であり、表明はあり得ないということでよろしいでしょうか。
野田財務大臣 中西委員の御指摘のとおりで、特例公債と絡めて自分の出処進退について今日明らかにするようなことは全く考えていません。
御指摘のとおり、大変今経済情勢厳しい中、加えて特例公債についてもまだこれから引き続き審議していただくという状況の中でありますので、あくまで私は職責を果たしていくということが全てでございます。
スイスフラン高へのスイスの断固たる姿勢
中西 野田財務大臣がこのままいらっしゃるということを前提に質問をさせていただきます。
日本と同じように自国通貨が高くなって今非常に困っているのがスイスということでございます。そして、スイス中央銀行、今皆さんに資料をお配りいたしましたけれども、8月3日のヨーロッパの早朝に、スイス・フランが非常に強くなっていることを受けて、極めて強いステートメントを公表しています。
その中で、和訳しますと、スイス中央銀行は、現在のスイス・フランは極めて過大評価されていると考えている。マッシブリー・オーバーバリュードという言葉を使っています。このスイス・フラン高はスイスの経済発展を危うくし、物価下落のリスクを増大させている。スイス中央銀行は金融状況のこれ以上の逼迫を容認するつもりはなく、スイス・フラン高に対する措置をとるものであるというふうに表明をしております。
これと比べて、4日の介入後の野田財務大臣の発言というのは、直接的ではない慎重な言い回しに終始しているかなと。これ後で白川総裁にもお聞きいたしますけれども、大臣は、一方的な動きが続いていることによる判断、少なくとも投機的、無秩序な動きには断固たる対応を取らなければならないということをおっしゃっておられましたけれども、こうしますと、為替レートの水準自体は問題と考えていない、動き方が問題である、円高は問題ではないというふうにも考え取 られ得るということになっておりますけれども、大臣は為替水準を問題ではないとお考えでいるんでしょうか。
野田 スイス・フランが極めて過大に評価されているというステートメントと、円が一方的に偏っていわゆる評価されているというふうな私どもの認識は、基本的にこれ一緒だというふうに思っています。
したがって、今の根拠のない円高は問題であるという認識の下で、その上で投機的な動き、無秩序な動きについては特に対応が必要であるということで介入をさせていただいたということでございます。
円高は急激な動きだけでなく為替水準も問題
中西 そうすると、確認ですが、為替レートの水準そのものも問題であるというふうに考えているということですね。
野田 根拠のない、いわゆる思惑でのそういう評価というのは問題だということで、一定の水準を目指した介入ということではございません。
中西 私自身は一定の水準を言っていただきたいと、そういうわけではありませんが、今円高であるということをすごく問題視しているということだというふうに私は受け止めさせていただきました。
日銀はもっと円高の悪影響をアピールすべき
同じことを日銀総裁にもお伺いしたいと思いますけれども、日銀総裁も、先週の決定会合のステートメントでは、為替の変動が我が国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性がある、こんな言葉を使っています。一般論ということを出ないのではないかというふうに思っておりますし、また記者会見ではこの時点での円高にはコストがあるという言葉を使っておりますけれども、これも第三者的に過ぎるのではないかというふうに私は考えております。
スイス中央銀行のように、若しくは日銀も、人口減少や高齢化については最近言及することが非常に多いかなというふうな私は印象を持っているわけでござい ますが、それによる経済への悪影響ということについてはしばしばコメントしているわけでございますので、この円高の経済に対する、短期的なということで先ほどお答えになっていらっしゃいましたけれども、やはり大きな影響があるということはもっとアピールすべきなんではないでしょうか。
白川日銀総裁 お答えいたします。
日本銀行として、現在の円高が日本の経済にもたらす影響については、これは十分な問題意識を持っております。したがいまして、先週、日本銀行は、財務省が為替相場の安定的な形成に向けて介入を行ったそのタイミングをとらえまして、金融政策決定会合の開催、これは元々2日間の予定でございましたが、これを 2日間を1日に短縮し、かつ開始時刻も繰り上げまして、その日のうちに金融緩和措置を発表いたしました。この緩和措置の中身、もう議員十分御存じのことで はございますけれども、これはリスク性資産をも含む資産の買入れの基金です。これを10兆円、もうこれ大幅に増額をしました。
こうした措置をこういうタイミングで繰り上げて発表するということ自体が日本銀行の強い問題意識を表したものでございます。そういう意味で、議員の問題意識と日本銀行の問題意識がずれているということではこれはないというふうに認識しております。
中西 ずれているというふうに申し上げているわけではありませんが、もっともっと、まあプロアクティブという言葉は後でちょっと質問させていただきますけれども、言っておられる以上は、能動的な行為というのが、言動というのが必要になってくるのではないかというふうに問題意識を持っているということでございます。
円高介入資金は欧米ではなく国内を潤す方法で
野田財務大臣にお伺いいたします。
今回の介入の総額は4.5兆円にも上るというふうに言われております。この介入資金は、これまでのように外為特会において国庫短期証券を発行し借入れを行った国内資金が原資になっています。そして、この4.5兆円もまた、これまでの外為資金と同様にヨーロッパやアメリカなどの海外先進国の財政赤字を支えるために使うのでしょうかと。
4.5兆円といえば、必要とされる震災復興資金の5分の1にも当たるような金額になります。ドル建てであれユーロ建てであれ、復興外貨建て国債や外貨建て財投機関債を発行して、それを外為特会で引き受けることによって国内での利用を考えるべきなんではないでしょうか。
野田 4.5兆と、ちょっと明示的な御指摘ございましたけれども、正確な金額は月末に公表させていただきたいというふうに思います。
その上で、外為特会についてのお尋ねでございますが、外為特会が保有する外貨資産は、元々はこれは、外為法第7条3項に規定をしているように、本邦通貨 の外国為替相場の安定を実現をするために政府短期証券を発行して調達した円資金により介入を行った結果として得たものでございます。
これらの外貨資産については、必要な為替介入等に備えて保有しています。そのため、流動性及び安全性に最大限留意し、その制約の範囲内で可能な限り収益 性を追求する観点から、米国債を中心とした外貨証券等により運用をさせていただいております。また、IMFへの融資やアジア諸国との通貨スワップ取決め 等、為替市場の安定という外為特会の設置目的に資する場合には、外貨資産による金融危機対応等の施策を講じてきているところでもございます。
中西議員の御提案は、外為特会において日本政府やあるいは財投機関が発行したドル建て債券を購入し、為替スワップ等を通じてドル資金を円資金に替えた上で復興財源に充てるものという御提案だと承知をしていますが、この提案については、外為特会の外貨資産を復興支援に用いることは、本邦通貨の外国為替相場の安定という外為特会の目的以外の使途に用いることになるため、問題ではないかと考えられます。
加えて、ドル建て国債については、結局のところ、外為特会が政府短期証券を発行して調達した資金を復興の財源に充てることになり、財政規律上の問題もあるのではないかと思いますので、慎重に考える必要があると考えています。
米国債格下げによって、日本の円介入への米国の反対論が強まる
中西 安全性、流動性ということをおっしゃられましたけれども、今回の格下げによって、米国債も安全だリスクフリーだということは言い切れないということが再認識されたのではないかと思います。
さらには、今回の格下げによって、これは私の意見ですけれども、アメリカ政府は日本政府が介入を行うことに、より強固に反対することになるのではないかというふうに私自身は思っています。というのは、介入を行うイコール米国債の買い支えという図式になってしまっている。本来であれば、米国政府としては、市中で米国債に対する強い需要があるということを示したいということですので、これは更に日本の介入に対して反対論が強まるのではないかというふうに考えております。
日銀はもっと断固たるアクションを取るべき
基金について、日銀総裁にお伺いいたします。
4日の金融政策決定会合で総裁もおっしゃられたとおり、40兆円から50兆円に基金が増額決定されました。為替市場には一時的には影響がありましたけれども、金利市場ではほとんど反応がなかったというふうに考えております。
今週は米国でFOMCも開催されて、米国債の再投資年限の長期化も予想される、見込まれるという中で、今回の日銀の基金ということに関しますと、長期国債、買入れ金額が倍増されたとはいえ、2兆円が4兆円になった、2兆円が2兆円増えただけというやはり小さいものと言わざるを得ないのかなというふうに思っておりますし、この長期国債、長期国債とはいいますけれども年限2年までという話でございますので、本当の意味で長期というようなことは言いにくいものなのではないかというふうに考えております。
今回の政策決定会合、2日の予定を1日に繰り上げて市場に驚きを与えたということでございますけれども、こうしたことは今回一回限りしか市場には影響を与えられないだろう、サプライズを与えられないだろうというふうに思いますし、規模、内容についても、やはり小出しにカードを切っているという感が否めないというふうに思っておりますが、これが日銀の言うところのプロアクティブなアクションということなんでしょうか。亀崎審議委員もプロアクティブなアクションということをおっしゃったかと思いますけれども、これが本当にプロアクティブと言えるようなものなのか、御答弁いただきたいと思います。
白川 今回の金融緩和の強化措置は、講演でプロアクティブという言葉を使われた亀崎委員も含めまして、これは全員一致でこの措置を採用しております。
これはもう議員十分御存じのことでございますけれども、金融緩和政策の効果というのはその瞬間に出てくるというわけではございません。金融政策の効果が出てくるのは1年から2年のかなり長いタイムラグを経て実現してくる、これがほぼ一致した見方だと。したがいまして、今日のこの時点で効果があるかというその点だけではなくて、少し長い目で効果を見ていただきたいというふうに思っておりますし、それから、今御指摘のFRBの政策は、これは昨年の秋にいわゆるQE2を採用しまして、この6月にQE2をこれは終了させております。
日本銀行の金融緩和の方は、これは着実に推し進めているという段階でございます。長期国債について先ほど2兆円という数字がございました。日本銀行は、趨勢的な銀行券の需要増加に対応するという形で長期国債の買入れをこれは大量に行っております。これも、目的は銀行券の趨勢的な需要増加に対応したものでございますけれども、しかし、経済に与える影響という意味ではこれは全く同じでございます。これは、FRBは現在買っておりません。日本銀行は年間21.6兆円のペースで買っております。そうした措置を現に進めていると。加えて、先般の金融緩和措置を強化をしたということでございます。
昨年秋にこの措置を発表しました段階では、多くの方が当日の、翌日の新聞の反応もそうでございましたけれども、日本銀行が相当思い切った措置をとったということでかなりの驚きをもって迎えられておりました。
今回は、買入れの基金の規模を5兆円じゃなくて10兆円ということでこれを増やしております。だんだん、思い切った政策をやっていますと皆さんマーケットを含めてやや慣れてしまうという面があるかもしれません。しかし、日本銀行が行っている措置は、これは相当思い切った措置で、しかもそれは時間を掛けて効果が出ていくというものだというふうに認識しております。
日銀の資産買い入れ基金はどこまで増やせるか
中西 最後の質問をさせていただきます。
これは日銀総裁及び野田財務大臣、それぞれにお答えいただきたいんですが、私自身はこの基金、さらに内容も拡充する、増額もしていかなければならないというふうに考えておりますが、この現在50兆円に達した基金が今後どこまで増加させることができると考えるのか。財政との境界の観点というのもあると思います。中央銀行がリスク性資産を保有することによって資本の充実性を求められたり国庫納付金が減少するなどして国民負担を生じさせる可能性と、こういった観点もあるかと思います。財政との際どいところだと思いますので、それぞれについて、それぞれお答えいただきたいと思います。
野田 基金の増額については、私ども適時適切な対応だったと評価をしています。その上で、今後どこまでという話があると思いますが、政府としては、日銀の財務の健全性を維持する観点から、今般増額された基金の買入れ資産のうちETF、J―REITについては時価と簿価の差額を引当金として計上することを認める等の措置をとっています。また、日銀の財務の健全性の観点から、剰余金の処分について、日銀法53条により義務付けられている当期剰余金の5%相当額を超える15%相当額を法定準備金に積み立てることにつき認可をしたところでございます。
いずれにしても、緊密に連携を取っていきたいというふうに思います。
白川 議員の問題意識は、私どもとしても十分これは受け止めております。
リスク性資産の買入れは、日本銀行として個別の資源配分に関与する度合いがその分強い上、最終的に損失が発生しますと、これは納税者、国民に御負担をお掛けするという可能性があることを考えますと、中央銀行として異例の領域に踏み込んでいるという認識はこれは強く持っております。
日本銀行では、そうした措置の性格を踏まえまして、買入れに当たりましてはリスク管理上の様々な工夫を行っております。また、将来において万が一損失が発生した場合でも、引き当て等の処理を適切に行っていくことを通じまして財務の健全性を確保していく方針でございます。この点につきましては、ただいま大臣からも御答弁がございましたけれども、日本銀行の考え方につきまして政府からも十分な御理解をいただいているというふうに思っております。
日本銀行としては、この長引く低成長の下でデフレ脱却という大きな政策目的のために中央銀行としてどのような対応が望ましいのかということにつきましては、これはしっかりと考えて、中央銀行として適切に対応していきたいというふうに思っております。
中西 ありがとうございました。