特例公債法案 8月22日参院本会議 桜内文城氏(みんなの党)の質問 |
ブログ筆者です。
ヒトラーは、総統に独裁権を与える法律を作った上で、一応法にのっとって独裁者になりましたが、総理大臣が、そういう(曲がりなりにも)法的手続きなしで、なんとなーく法律を踏み越えてしまう場合ってのは、もしかしてヒトラーよりたちが悪いんでしょうかね、法手続き的に言って。
つまり、わざわざ独裁権を自分に与える法律を作ったということは、一応法的正当性というものをわかっていて、で、その上でそれを利用してアクロバチックなことをやったわけだけど、そういうことを何も気にせず法律を踏み越えて勝手なことをどんどんやってしまうというのは、法による統治ということをそもそもわかってないか、根っから軽視しているかのどちらかなわけですよね。まあそのへんはあの党の場合総理ひとりに限られるわけではなく(以下省略)。
…てなことをしばらく前から何となく考えていたけど、さすがにヒトラーと比べるのはやりすぎかなあ、とちょっと気が引けてあまり人には言ってなかったので、桜内議員の質問に、おお!と思いました。私ひとりじゃなかったんだ。
(もちろん、筆者は総理が実際にやってることがヒトラー並みだとかヒトラーより悪いとか言っているわけではありません。民族浄化とか起こってないし、武装SSに誰彼かまわず引っ張られるなんていう事態でもないし。あくまでも、菅さんや民主党が法治国理念の重要性ってもんをわかってるのかなあ、という問題です。念のため。)
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特例公債法案 8月22日参院本会議 桜内文城氏(みんなの党)の質問
みんなの党の桜内文城です。
特例公債法案の趣旨説明に関し、民主党マニフェストの主要項目の見直しについて質すとともに、世代間格差の是正という観点から、以下番号を付して質問いたします。
質問第一。政権交代とは、結局何だったのか。
本来、政権交代の意義は、政府の意志決定の仕組みを根本から変えることにあったはずです。官僚の利益のためでもなく、労働組合の利益でもなく、既得権益でがんじがらめにされた日本を変えてほしいと多くの国民が望んだ結果、2年前の夏に政権交代が実現しました。
しかし、今なお既得権益を守ろうとする組織・団体が日本を覆い尽くしています。
民主党政権はマニフェストの大きな柱としていた天下りの根絶どころか、渡りを繰り返してきた元大蔵次官を日本郵政社長に、元エネ庁長官を東電副社長に天下りさせた上、現役出向解禁により、天下りのバケツの底が抜けた状態になりました。先月総務省が公表した資料によれば、同一府省退職者が三代以上連続して天下っている独立行政法人等の数は1285法人、1594ポストにのぼります。これのどこが天下り根絶なのでしょうか。
この二年間で民主党マニフェストのほぼ全てが出鱈目だったことが明らかになり、政権交代の期待は失望に変わりました。たとえば、暫定税率を廃止せず、子ども手当・子ども手当法の廃止、児童手当法の復活・拡充へ、高速道路無料化は来年度予算へも計上せず、高校無償化、農業戸別所得補償ともに見直し、そして国の総予算207兆円を全面的に組み替えるという公約も、結局一般会計のわずか3割にも満たない総予算組替え対象経費25兆円にまで消えてなくなる。二年前の衆議院総選挙とその際の民主党マニフェストは一体何だったのか、菅総理にお尋ねします。
質問第二。政治主導とは何か。
はっきりと申し上げます。民主党政権の政治主導は間違っています。法律による行政の原理を踏みにじり、国会が定めた法律を無視することが政治主導だと勘違いしているのです。たとえば、原発事故への対応を見ても、合同対策協議会の設置に関する原子力災害特別措置法23条違反など、法律の明文規定に違反し、大勢の避難住民を被爆させました。また、対策本部等の乱立、浜岡原発の停止要請、再稼動に関するストレステストなど、法律の根拠なき恣意的な行政が繰り返されました。確かに、自民党政権時代には官僚主導の政治がまかり通っていました。本来公平中立な立場で法の忠実な執行のみを担当すべき官僚が、内閣の法案提出権と予算編成権を通じて、官僚共同体の利益を最大化していました。これに対し、選挙で選ばれた国会議員が憲法上与えられた権限である立法権と財政処理権限を官僚から取り戻し、主権者である国民の利益を最大化しようとしたのが政権交代であり、政治主導であったはずです。
従って、本来政治主導とは、全国民を代表する国会議員が立法権を行使し、その法律を、内閣総理大臣をはじめとする行政権が忠実に執行すると言う、法律による行政の原理を徹底する、法の支配を意味します。残念ながら、民主党政権による政治主導は、菅総理の個人的な思い付きによる人の支配、あるいは単なる多数決による党の支配に堕してしまったのではありませんか。菅総理にお尋ねします。
質問第三。内閣総理大臣とは何か。
菅総理は、憲法上内閣総理大臣の権限と責任が行政権、すなわち法の執行権に限定されていることをわきまえていらっしゃいますか。逆に言えば、内閣が既存の法律や予算を乗り越えようとする場合、民主主義のプロセスに従い、内閣から法案または予算案を国会に提出しなければならない。そのことを理解していないからこそ、法律を無視する行政が繰り返されているのではないでしょうか。
ピーター・ドラッカー氏は、1939年に出版された処女作の中で、ナチズムの特徴を、権力は自らを正当化するという点に求めています。これは、国民が選挙を通じてナチスとヒトラーに権力を与えた以上、ヒトラーの行うことは全て正しいという倒錯したロジックを意味します。憲法の定める三権分立を無視し、国会の定める法律を無視する内閣総理大臣は、ヒトラーと同じ過ちに陥っているのではないでしょうか。菅総理にお尋ねします。
質問第四。世代間格差の是正をいかにして図るのか。
特例公債法案は、憲法11条後段に言う、現在および将来の国民、このふたつの世代の間での資源配分、負担の分担をどうするかという問いを我々に突きつけています。内閣府の平成17年度年次経済財政報告における世代会計の推計によれば、60歳以上の世代と将来世代、すなわち20歳未満の世代やまだ生まれていない世代との間には、約9500万円もの世代間格差があることが明らかにされています。
世代間格差の是正のため、早期に社会保障目的の消費税増税を主張する向きもありますが、我々は断固として増税に反対します。先週公表された今年第二四半期GDP速報によれば、名目で年率マイナス5.7%、このような大幅なマイナス成長は震災前の昨年第三四半期から続いており、このような時期に増税というデフレ政策を実施するのは、正気の沙汰ではありません。
お年寄り向けの社会保障関係費の総額は、国・地方合わせて年間60兆円を超えております。毎年若者世代から徴収した社会保険料をそのままお年寄りに移転してもなお足りず、税や国債を財源とする一般会計から、さらに年間28兆円を移転し続けることは、もはや不可能です。社会保障関係費の圧縮は、あらゆる政党にとってタブーとされていますが、全国民の理解と協力の下、ここにメスを入れない限り、世代間格差の是正は絵に描いた餅となります。
そこで、お年寄り向けの社会保障関係費の圧縮とともに、その代替措置として、たとえば年金給付の一部を介護施設での終身居住権や介護サービス受給権等に振り替えることにより、これら現物給付の拡大と現金給付額の抑制とをセットで進めることを提案します。また、公的年金制度に世代別の勘定区分を設けることにより、世代ごとの受益と負担を一致させると同時に、世代間の財源の移転を明確化します。
社会保障の重圧と消費税増税によって、日本の未来を押しつぶしてしまうのか、あるいは我々の提案のように、社会保障関係費の現金給付自体を圧縮し、世代間格差の是正を図る工夫を考えるのか、財務大臣、厚生労働大臣、そして経済財政担当大臣の所見をお伺いします。
質問第五。最後の質問です。震災からの復興や財政再建の名の下に、法人税、所得税の大増税を目指すべきか否か。
我々は、全ては日本の未来のためにを基本理念とし、増税ではなく、財政金融一体のマクロ経済政策で、新たな経済成長を目指します。
我々が開発した国家財政ナビゲーションシステム、国ナビの自動仕分け機能により、政府予算案や野党の修正動議に基づく予定財務書類を作成し、経済全体へのインパクトを測定するシミュレーション等が可能となりました。公会計制度改革によって、日本政府の財務状況を正確に把握した上で、一般会計、特別会計合わせて220兆円を文字通り総組替えする財務マネジメントを実現します。
具体的には、第一に、金融政策として、日銀および金融機関全体を対象とする一国経済全体の信用需給の調整を行い、デフレからの脱却を目指します。ゼロ金利で流動性の罠に陥っている中、金利政策は効きません。むしろ、財政政策的な金融政策として、市中に流出するマネーストックを増加させ、予想インフレ率を上昇させる、非伝統的な量的緩和策を実施すべきです。
第二に、財政政策としては、政府が日銀に100兆円規模の経済復興基金を設置し、同基金に政府保証を付した上で、新たな経済成長に資する未来への投資、たとえば再生エネルギーの研究・開発等を財政政策として実施します。加えて、子育て世代、勤労世代の税負担、社会保険料負担を軽減するとともに、世界中から資本を呼び込むために、法人税率を20%程度に半減すべきです。
復興のため、財政再建のためと称する大増税によって日本経済を破壊するのか、あるいは我々とともに増税なき復興、未来への投資、そして財政・金融一体のマクロ経済政策による国家経営を目指すのか、財務大臣の所見をお伺いして、私の質問を終わります。