子ども手当の消費性向 0.7という数字の真相 2010年8月4日 参議院予算委員会 |
乗数効果の一連の関連エントリ、これが一応最後です。ここまでの連続4つのエントリは、実際の審議から時間が経ってますので、国会会議録に出ているデータです。なので、私が書き起こしたものではありません。
で、実はさっきも書いたんですが、すでにだいぶ画面の下のほうに行ってしまったので繰り返します。何でここに古い審議録から引っ張ってきたエントリを4つも出してきたかと言いますと、今週火曜日23日の参議院財政金融委員会、最後の質問に立った、たちあがれ日本の中山恭子氏が、たぶん今国会最後の菅総理への質問の中で「乗数効果」という言葉を使っていらっしゃいまして、その瞬間に、委員会室の多くの議員が微妙に反応するんですね。で、それには実はこれまでの参議院での議論の経緯、ぶっちゃけて言えば菅総理が財務大臣だったころの前代未聞の審議ストップがありまして、もうついでなのでそこから始まる一連の審議をご紹介してしまおう、というわけです。
ですので、今月23日の中山恭子氏の質問のエントリ、「菅総理最後の答弁『責任を取って辞めるわけではない』」から順に、このエントリまでの5つ、追って見ていただくと、流れがわかりやすいと思います。
二本松藩「戒石銘碑」 「爾俸爾禄 民膏民脂 下民易虐 上天難欺(爾の俸、爾の禄は 民の膏 民の脂なり 下民は虐げ易きも 上天は欺き難し)」
「上天は欺き難し」 全くだ。
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子ども手当の消費性向 0.7という数字の理由 2010年8月4日 参議院予算委員会 林芳正氏の質疑より
動画:ふたつにまたがります。
http://www.youtube.com/watch?v=88aiY9mYqSM
(0:30から終わりまで)
http://www.youtube.com/watch?v=u3_C2G974LQ
質問 林芳正氏(自民党)
答弁 菅直人内閣総理大臣
長妻昭厚生労働大臣(肩書きは当時)
荒井聰消費者および食品安全、経済財政政策担当大臣(肩書きは当時)
野田佳彦財務大臣
林 パネルの7を出していただきたいと思いますが、これは菅総理、余り思い出すのは嫌かもしれませんが、消費性向と乗数効果の御議論をさせていただいたときに、子ども手当の効果ということを私がお尋ねして、結局あのときは、いろいろありましたけれども、消費性向が0.7だというふうな御答弁がありましたが、これ、内閣府のインターネット調査の数字を円グラフにうちでやりましたけれども、子ども手当を何にお使いになりますかと、こう聞いたら、貯蓄をするという方が48.2%、生活費に回したいという方が11.4、子育て関係に使いたいという人が37ということですから、これ単純に言うと、48%貯蓄ということ は消費性向0.5ということになるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
菅 今お示しになったこのデータからすればそういう意味になると思います。この経済財政担当、私もいたしましたし、私の前任者は林さん御自身ですが、いろいろなデータがありますので、それが最終的なものなのかどうかちょっと私確認できませんが、今言われたという意味ではそういう意味を持っていると、それはよく 分かります。
林 それであれば、これは最新の調査だと思いますが、その前に0.7というふうにおっしゃった根拠を改めてお聞かせいただきたいと思います。
長妻 たしか前回も同様の質問をいただいて0.7というのが議論になりましたけれども、これについては、過去、勤労者世帯の平均消費性向73.4%という総務省の家計調査がございまして、それ等も参考にして0.7という数値を出させていただいたと承知をしております。
林 今聞いて驚きましたけれども、勤労者の平均の消費性向というのは全収入をどう使うかということだと思うんですよ。ですから、それと新たにこういう手当をもらったときのものが全く一緒だというような、そんな根拠であれだけ議論しておっしゃっていたのかなと。私はあのときたしか、例えば麻生内閣のときにやった給付金の消費性向は大体0.3とか0.4でしたよ、アディショナルに来るものについてどういうふうにやるのかというのをあのときお聞きをしていたわけで、全体のその勤労の所得の消費性向だけで0.7とおっしゃっていたというのはちょっと驚きですが、総理、そういうことでよろしいんですね。
菅 このことについて、いずれにしても、この子ども手当の消費増加効果については、検証がこの後必要になるというふうに思っております。
考え方としては、先ほど厚労大臣からもお話がありましたように、家計の平均消費性向が7割程度であることを踏まえて、子供さんがいる世帯でありますのでその程度の消費性向になるのではないかという認識の下で、当時、答弁といいましょうか、考え方を申し上げたということだと思います。
林 御担当の方にお聞きしたいんですが、これは経済財政担当大臣か何かだと、内閣府だと思いますが、この調査は私が御質問を差し上げた以前に行われていたというふうに聞いておりますが、発表は4月の連休前だったと思いますけれども、当時、生数字はお分かりになっていたんじゃないかというふうにも思うんですが、いかがでございましょうか。
荒井 お答えいたします。
この調査は昨年の11月の時点で調査をしておりまして、実際に子ども手当を受け取る方が受け取った後の調査ではございません。
そのために、仮の調査として、仮の質問として子育て費用に関する調査という形で調査をしたものでございまして、子ども手当そのものに対する調査ということではなくて、現在調査をすれば恐らくもっと高くなっているのではないかというふうに考えられます。
林 正直にお答えいただきましてありがとうございました。調査は11月に行われているということであります。菅総理から財務大臣として御答弁をいただいたのは年が明けてからだったと、こういうふうに思います。
長妻大臣、御指名をしておりませんでしたが、さっき答えていただいたので。今の調査は御存じの上で0.7という御答弁をされましたか。
長妻 これはインターネットの調査、内閣府でありますし、様々なこれ民間の調査等でも、私が承知しているだけでも四つか五つの調査でもそれぞれ数値が異なるわけでございますし、そもそも、所管官庁の責任者として申し上げれば、この子ども手当というのは景気対策でそもそも始めたわけではないということで、少子化の流れを変えると、こういう趣旨でもある制度でございますので……(発言する者あり)
委員長 御静粛に。
長妻 この点について、0.7というのは従来からの家計等の統計によって消費性向をそれで推計をしたというふうに私は聞いているところであります。
林 もう一度聞きます。この11月の調査をこの間答弁されたときに知っていましたかと聞いています、長妻大臣。
長妻 私は承知をしておりません。
林 それであればすぐ済んだんですが、まさに長妻大臣がお嫌いな縦割りの弊害に陥っていらっしゃるということを申し上げざるを得ません。お隣に座っていらっしゃるんですから、よくお話をしておいていただきたいと思いますが。
そういうことを始めとして、マニフェストでお約束された中にもいろいろ議論があります。やってみたらこうだったという議論もあります。ですから、そこはこの1割削減の外にするという考え方自体が私は非常におかしいように思うんですが、予算過程の中でそれをやるということですが、なぜこの1割削減のあの中にこれも入れなかったのか、もう一度野田大臣にお伺いします。
野田 子ども手当については、初年度1万3千円でスタートを…
(ここから2番目の動画)
野田 …して、翌年度以降は、いわゆる今回の参議院のマニフェストでは上乗せをどう図っていくかということで、現金とそして現物の支給、バランス取っていくというような内容でございますので、そのマニフェストを踏まえての対応でございます。
当然のことながら、子ども手当のみならず、そのほかのマニフェストの主要項目についても、要求やあるいは編成の段階でよく、十分その効果を検証しながら額を確定をしていきたいというふうに思います。
林 もう一度お聞きしますが、最初の要求基準のときに一緒に1割減の中に入れなかった理由は何ですかと聞いています。
野田 1万3千円分はこれはもうベースラインと、(発言する者あり)ほかのマニフェスト、戸別所得補償とか、ええ、基本的には当初予算分はスタート段階で付けた予算です。そこは検証をしていきながら増やすのかどうかを今後検討するという基本姿勢でございます。
林 ですから、いろんな議論があることなんで、こういう選挙結果もあったんで、マニフェストでお約束したこともゼロからほかのものと同様に見直すという姿勢が、私は少なくとも財務相としては、財務大臣としてはやはりあるべき姿ではないかと思いますが、どうもあのさっきの表は触りたくないと、こういうことが根底にあるような気がいたします。
そこで、薄皮一枚で、1兆円ぐらいの特別枠ということで、めり張りというふうに大臣おっしゃっているんですが、それをやるときにちょっと気になりますのは、何かコンテストをおやりになると、政策の。これ、どうやっておやりになるんですか。
野田 今回、概算要求の組替え基準を作る際には、当初の骨子を仙谷官房長官、それから玄葉大臣、私で作って、その上で閣僚懇談会等々開きながら皆さんの意見をお伺いしながら最終案まとめましたが、その過程で党の政調からも御提言をいただきました。その御提言の中で、予算編成の透明化を図るためにこの特別枠については政策コンテストを導入しながらというような文書もございましたので、それを踏まえて対応したわけでございますが、その制度設計をどうするかについては、関係閣僚やあるいは党とも調整をしながらこれから決めていきたいというふうに思います。
林 本来、いろんな外部の方の意見を聞くとかも書いてありますが、そういう政府・与党そして外部の方の意見も聞いてやらなきゃいけないことは、何度も言うようですけれども、全体の、90兆なり80兆なりの大枠を一体どうしていくのか。政治家の仕事です。それを5年間やっていってプライマリーバランスが達成すると。
大きなところはもう決めてしまって、そして予算編成の過程の中で検討しますということに閉じ込めて、その最後のたった80分の、90分の幾つかのところをいかにも大勢が見ているところでやるというようなコンテストをやっても、それはパンとサーカスでしかあり得ないと。
本当に大きな枠をきちっと示して、中期の財政フレームを、5年間なら5年間きちっと示して、これだけのことはどうしてもやらなければいけませんと、お願いしますということで中期財政フレームを作るのが本来の政治の仕事であろうと。
で、参議院選挙が始まる前に、菅総理はそういう思いに立たれて我々と一緒に消費税を議論しようとおっしゃった。あの時点にやはり戻っていただいて、失意泰然でやっていただきたいということを最後に申し上げて、同僚に譲りたいと思います。
ありがとうございました。