自民党古川禎久氏の代表質問 2 平成23年9月14日 衆議院本会議 |
(長さ12分49秒)
古川 (承前)との誤ったメッセージを与え、また諸外国の対北朝鮮政策にも好ましからぬ影響を与えかねません。野田総理にお尋ねいたします。総理は、菅氏による正常な手続きを無視したこの決定を踏襲されるおつもりですか。それともただちに撤回をされますか。日本の外交政策は関係国との連携もなく、恣意的に如何様にでも変わってしまうものなのですか。この点、先ほど谷垣総裁からの質問に対して誠意あるご答弁をいただいておりませんので、通告はしておりませんが、ここで質問させていただいております。
自主防衛にかける決意はあるか
続いて、領土・領海問題について伺います。
近年、東シナ海のガス田、尖閣諸島、竹島、北方領土と、我が国の領土・領海、すなわち国家主権が、露骨に脅かされております。これまでの長きにわたって、我が国は、領土問題を争点化、顕在化させないように、相手国とともに、ことなかれの棚上げ方式で対処してまいりました。それは戦後の基本方針でもありました。しかし、もはや時代は変わり、周辺各国ともに姿勢を変え、極めて強い行動を取るようになってきております。
特に一昨年の政権交代以降、我が国は、腰の弱さを見すかされてか、諸国からいいようにつけいれられ、その度ごとに取り返しのつかない大失態を重ねる有様です。もはや棚上げ方式は過去のものと相手方から言ってきているのであり、当然ながら我が国も国策を転換し、毅然として主張すべきは主張するという主権国家としての原理原則に立たなければなりません。
足を踏まれても黙っていることで得られる平和は、真の平和ではあり得ません。昨年の尖閣漁船事件で我が国自身が突きつけられた問いかけの最大のものは、日本に自主防衛の気概があるかどうかということでした。日本領内で何かあった場合、米軍が自動的に出動するわけではありません。日米安保条約とはそういう条約であります。少なくとも自分の国を自分で守るという気概と行動がなければ、どうにもならないのであります。自主防衛にかける強い意志と戦略がなければ、祖国は守れません。殉国者への感謝と敬意を表することもできずして、自主防衛の覚悟が持てるものでしょうか。自主防衛にかける野田総理の決意のほどを伺います。
武器輸出三原則についての見解は?
また、前原政調会長が武器輸出三原則について発言されましたが、閣内では意見が不一致のようです。総理はどのように考えておられますか。昨年12月、防衛計画大綱の策定にあたって、三原則見直しが検討されたにも関わらず、社民党の協力を取り付ける方便として菅前総理の判断で見送られた経緯がありました。国家の安全保障上の重要案件を政党間の取引材料に利用するなど、政権党として恥ずべきことであります。よもや野田総理はそのようなことはなさるまいと思いますが、いかがでしょうか。お尋ねいたします。
水源林と地下水を守るべきだと思うか
近年、外国資本による水源林買収がささやかれ、国民の間に不安が広がっております。水源林や地下水は、私たちの世代のみならず、私たちの子孫まで永劫に手渡していくべき大事な資源であり、いわば我が国の主権の一部を構成するものであり、従って、必要な規制を行いこれを守っていくことは当然であります。
我々自由民主党では、高市早苗衆議院議員が先頭に立って、水源林や地下水を守るための立法に努力を続けておりますが、残念ながら未だ道半ばであります。そして、私は今、民主党政権下、蓮大臣が指揮する規制制度改革分科会において、森林の買収や開発ができるよう、強力に規制緩和が推進されようとしておりますことに強い危機感を抱いております。木材価格が低迷し、森林所有者にとって苦しい状況が続く中で、規制緩和などをすれば、日本の山林は到底守れないでしょう。野田総理にお伺いします。総理は、我が国の森林や地下水を守るべきだと考えますか。それとも、これまでの民主党内閣の方針を踏襲し、森林買収や開発を推進すべきだと考えていますか。国家の主権に関わってくる重大な問題ですから、明確な答弁を求めます。
人を守るコンクリートの必要性
豪雪、豪雨、火山噴火、地震、津波、台風と、自然災害が続いております。釜石市長は、国道45号が津波で壊滅したが、併走する三陸縦貫道が救助・救援活動において、決定的に重要な機能を果たしたと報告されております。また、相馬市長は、復興に不可欠なものは、人々の高い士気とタフな道路であると、災害対策インフラとしての道路の重要性を力説しておられます。そして、台風12号で被災し孤立した地域からは、救助はヘリコプターでよかったが、生活再建・地域復興には何としても道路の復旧が必要との強い声が寄せられています。
民主党は、先の参議院選挙まで、コンクリートから人へをスローガンに、徹底的に公共事業悪玉論を展開し、地方に道路は必要ないとばかりに事業費を削減してきました。しかし、ここにきて、命の道をはじめとする公共事業の大事さについて、ようやく落ち着いた議論ができる雰囲気になったと感じております。
東海、東南海、南海、日向灘の連動地震への備えは、もはや待ったなしであります。人を守るコンクリートの必要性について野田総理はどのようにお考えでしょうか。必要な事業を確実に実施する意思があるか否かについて明快な答弁を求めます。
災害に強い国土作りにかける熱意は?
台風12号は、紀伊半島を中心に甚大な被害をもたらしました。ヘリコプターからの映像を見ますと、山が膨大な雨量に耐えられなくなっている様子がわかります。7割を山林が占める日本列島を守るためには、間伐にせよ、広葉樹との混成林化にせよ、山に手を入れることが不可欠であります。限られた予算であっても、人家や交通インフラが存在する側の斜面を優先的、重点的に整備するなど、災害に備え、国土を守るための工夫が必要です。豪雨は、必ず、必ず、また降ります。災害に強い国土作りにかける総理の熱意をお聞かせ下さい。
TPP交渉参加を拙速に判断してはならない
次に、TPP、環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加問題についてお伺いします。総理は所信表明演説において「TPPへの交渉参加についてしっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出す」と述べられましたが、ことは、我が国の国柄、日本社会のありようにもかかわってくる重大事でありますから、ゆめゆめ、国民的議論を伴わない拙速な判断とならぬよう、ここで厳重に申し入れます。
これまで、TPPは、農業は壊滅的ダメージを受けるが、輸出産業には有利であるといった産業間での損得関係でのみ語られることが多かったように思いますが、実際には、農業のみならず医療、労働、投資分野に及ぶ広範な内容を持ち、社会のありようまで変えてしまいかねないという意味では、国民生活全般、そして、子孫の将来にも関わる大問題であります。だからこそ、きちんと説明がなされた上での国民的論議が必要であり、その上での結論ということでなければ、時の為政者として到底責任を取り得ないものだと確信しております。
英国の保守政治家であり哲学者であるエドマンド・バークは、国家は同世代だけのものではなく、過去を生きた先人、将来を生きる子孫のものでもあると言っております。日本の国柄、あるいは日本らしさというものに対して、謙虚な心を持っていただくよう、切に願います。
台湾への感謝表明を
終わりに、ひとつお願いを申し上げます。総理は所信の中で、日本人の気高き精神、あるいは危機の中で公に尽くす覚悟、互いに助け合いながら寡黙に困難に耐える日本人として生きていく誇り、という言葉を使っておられます。日本の美徳を的確に表現されていると思います。また、「被災地には世界各国から温かい支援が数限りなく寄せられました。これは戦後の我が国による国際社会への貢献と信頼の大きな果実とも言えるものです」ともおっしゃいました。私もまた総理のお考えに深く同意するものであります。
であるならば、総理、東日本大震災に対しての中華民国、台湾から寄せられた真心あふれる破格のご支援に対して、日本国として礼を尽くし、心からなる謝意を伝えるべきではないでしょうか。(拍手)外交案件として申しているのではありません。人としての道、物の道理を申し上げております。台湾とは国交がございません。しかし、私たち日本人が苦しみ、嘆き、悲しんでいる時に、最も親身になってくれた友人であります。それなのに政府は、卑屈にも、第三者の顔色を窺うことに汲々とし、友人の真心に気づかないふりをしているのではありませんか。真心には真心をもって答えることこそ、気高き日本精神と言うべきであります。(拍手)
総理、あなたが、心の底から本当に日本を信じ、日本人の誇りを語るのであれば、全てに優先して我が日本の名誉を守っていただきたいのです。日本人は恩知らずの弱虫などではありません。日本の名誉のためにも、日本の真心を示し、礼を尽くしていただくことを切に願います。
以上、私の質問を終わります。(拍手)