宮崎哲弥大論争 4 野田内閣採点―4 |
林 (承前)それから政治とカネ、色々あります。それから何よりも、政策調査会ですか、党の意思決定機構っていうのが毎年変わってますね。で、これがガバナンスが非常に悪いんで、総理がおっしゃることと、党が言ってること、それから党が一回決めたっていうふうに報道されてることが、また違うことが署名集めなんか出てくるっていうのはね、総理ひとりじゃなかなかやりにくいと思うんで。
宮崎 でもね、3ヶ月前の野田政権が発足時のガバナンスっていうのは、確かに、おっしゃるように、ある種のこう、自民党的なね、政策、政調の構成になっていったような気がするんだけど、今また何かこう、政府と党っていうのがものすごく乖離が深くなってませんか。
林 だいぶ与党らしくなってきたなと思ってたんです。政調が廃止したところから提言機関になって、で、3年目は一応決定機関になって、政調が認めないと出さないってとこまで行ってたんでね。政調会長が絶対駄目だって言ってた八ッ場がですね、結局通ってしまうというのは、一体ガバナンスがどうなってるのかなあというのは不思議ですね。
宮崎 これは、閣法に関しては、事前承認権というのはあるんですか、政調に? どうなの?
原口 事前審査制を…
宮崎 事前審査権はあるの?
原口 事前審査権をなくして、政府と党のダブルスタンダードをやめようっていうのが、私たちが政権交代の選挙の時に申し上げたことで。
宮崎 もともとの意味で。でも、あの、認めたんじゃなかったっけ、事前審査権を?
原口 政調の一定の役割を復帰させるっていうことを言ったんです。
宮崎 大塚さん、どう?
大塚 あの、その、政策提言ができるようにし、かつ、やっぱりこの同意がなければならないというような方向に舵を切ったのが今回の前原政調ですよね。
宮崎 そうすると、たとえば消費税関連法案に関しては、政調は事前審査権を持つの?
大塚 それを事前審査と言うか、政府与党一体なので与党側の判断にも重きを置いてくれという言い方をするかなんですが、まあ自民党さんの時代の事前審査とはちょっと違いますね、我々はね。
宮崎 なんかそこらへんのガバナンスがね、相変わらずよく分からないんだよね、民主党って。
大塚 そこはおっしゃるとおりです。
林 ガバナンスが明文化されてなくてね、うちは政調会はこういうものですと、その後総務会でこういう議決をしますと、全部党則に書いてあるんです。で、党則は党大会でしか変えられないと。だから、このことがきちっとしてないからね、言う人によって変わるし、その場面場面によって変わっちゃうんですね。
宮崎 じゃあ相変わらず曖昧模糊として、誰に話をしていいのか分からないと言う状況は続いてるんじゃないですか。
林 たぶんこの税調でもそういうことがあったんじゃないかと思いますし、今の…
宮崎 曾我さんはどう?
曽我 つまり自民党のその、僕はまあ、結論で言うとやっぱり今の民主党は人もすなる(?)成長をやってるわけですよ、自民党の真似とは言いませんけどね。僕はまあ、自民党のやり方ってのは歴史があるわけで、悪いとこもいっぱい出てたと思うんですよ、最後は、あの政権末期には。ただ、何が言いたいかっていうと、単にあの、林さんがおっしゃるとおり党則に書いてある以上に、その制度を基に人材も育成してきたわけですよ。つまり、部会長やって、全体を見て、委員長に持ってって。で、その負の面っていうのが政権末期に出たわけですから、族議員の批判は批判で分かってるつもりですけど、ただその歴史があって、一種の権力の作法として、人材育成、キャリアパスも含めて政党人を作ってきた自民党のやり方を、形だけ真似てもそれは人材が追いつかないわけだから、もうひとつはだから何が起きるかって言うと、結局僕はやっぱり人だなあと思ってるんですね、今回民主党を見ていて。どういうことかって言うと、それは自民党だってよく官邸と党が喧嘩すると、政高、えー、関係だってよく言われるわけですけど…
宮崎 小泉内閣の時なんてものすごく対立が強くなりましたね。
曽我 僕はあの、ここは是非大塚さんと原口さんに意見聞きたいんですけど、実は今の民主党の問題は官邸と党の距離感じゃなくて、党の中が割れちゃってるわけですよ。つまり今回の消費増税で言えば、税調と政調の関係が僕は全く取材していても記事を読んでても意味がわからない。どっちが上なのかっていうよりも、誰が最後決めるのかっていうのが全く見えてない状況っていうのは、我々から見ても見えないんだから、おそらく民主党の皆さんも分からないんじゃないですか。
宮崎 これは基本的には前原さんと藤井さんが話し合うってことで決めるんじゃないの?
曽我 おそらく昔の自民党だとそのパターンが読めるから、そこに収斂してくわけですよ。だから一点すごく言いたいのは、結局政党の仕事ってのはやっぱり世論の統合だと思うんですよ。議論すればするほど国論が二分されていた問題がどっちかに結論を出してくってのが僕は政党の仕事だと思ってるんですね。ところが、TPPにしても、今度の消費増税にしても、民主党は議論をすればするほど国論が二分されてるんですよ。
宮崎 うん、うん。
曽我 この状況について民主党がどう思ってるかっていうのは是非お伺いしたいんですけれども。
穀田 まずね、すぐね、そういうふうにガバナンスとか党内のどうのこうのとか言うんだけどね、今言ってた、曾我さんが言ってたTPPにしてもね、それから消費増税にしてもね、自分たちが決めた出発点は何だったのかっていうことをやらないとね、途中にたとえば去年の2010年の6月ぐらいにね、経団連の副会長からポコッと言われて、当時経産省は真島さんか?
大塚 経産省ですか? 直嶋さん。
穀田 直嶋さんか。あの時頓珍漢な話しててさ、で、10月ぐらいになって突然やっぱりあの、菅さんがね、TPPの話するわけでしょ。だから元々ね、無いわけなんですよ、考え方は。で、それをね、ガバナンスのせいにしてね、どうのこうのっていうのは駄目なんですよ。だからね、そういう機構だとか、今までの経過だとかっていうような問題にするんじゃなくって、たとえばTPPの問題にしても消費税の問題にしてもね、どういう経過だったかってことを良く見ないと。まず最初に政策が無かったと。そういう約束してなかったと。だから、国民に対する裏切りだという話が先ほどありましたけど、そういう問題があると。で、同時に、何がきっかけだったかというと、オバマさんの発言があってですね、普天間についても、それからTPPについても、前に進めさせろと、こういう話があると。それから経団連行ってそう言われると。そういうことから動き出してるっていう経過を見ないとね、単なる党内におけるガバナンスの問題や人材の問題っていう話じゃないね、大枠のところを見ないとね、ちょっとね、ちょいとね、そんなセコセコした話じゃないんですよ。
宮崎 いや、それは分かる。それは分かる。
原口 それはね、すごく大事で、僕らは自民党政権の族議員化、それから、ガバナンスが明確でないところを選挙によって国民と契約することによって、それを4年間やりますよと言って来た。で、そこは残念ながら穀田さんのおっしゃる批判はその通りで…
宮崎 でもさ。
原口 外側から来てる。
宮崎 原口さん、原口さんさ、国民との契約って言うんだったら、たとえば歳入庁を作るって言うのは国民との契約だったんじゃないの? でもこの検討課題だか何だかにされてしまってるじゃないですか。それなのに、国民との契約ではない増税はやろうとするっていうのは…
原口 だから、今の民主党に対する、その低い数字になっていて、たとえば僕も税調、政府税調のトップだったわけです。あの時に僕ら何をやったかというと、公的歳出の3分の2は地方なんです。だけど、今までの政府税調っていうのは財務大臣がトップで、それから総務大臣っていうのはずっと下なんです。それを横並びにしたんです。そして、しっかりと地域から日本を変えられる仕組みを作るんだってやったんだけど、今度の党税調の中には、まあ誤解を恐れずに言うと、もう次選挙しない人たちがやっているんで、もう下はたまらないと(宮崎 笑)いう話まで出てる。
宮崎 はっきり分かった、今ので。(と笑う)
原口 それは藤井さんであり、峰崎さんですが。それは実名を挙げて悪いけども、藤井さんは元はああは言ってなかったわけだから。だからあの、逆に言うとね、藤井さんの名誉のために言うと、それだけ財政に対する危機感が強いのかも分かんないけど。
宮崎 まあでも、元財務官僚という、大蔵官僚ということもあるのかもしれないということです。
林 だからマニフェストを作った時にね、多分原口さんは入っておられなかったんじゃないか…
原口 入ってます、次の内閣の。ネクスト総務大臣で。
林 入ってますか。だからそれを作ったときに本当にチェックしてね、お金が足りるのかとか、実現性があるのかとか、経済効果がどうなのかとか、もう少しチェックして、あれをパブリックコメントにかけておけばね、こんなことにはなってなかったと思うんですよ。だから、それに気がついてたんなら、党として、さっきのスタートの話が穀田さんからありましたけど、スタートがもし間違ってるんだったら党内手続きを取って直すと、間違ってないんだったらそのまんまでやると、どっちかしかないので。
宮崎 私はね、民主党が政権を取った時に、民主党はまあ、原口さん反論されるかもしれないけど、とにかく大風呂敷広げるだけ広げてる。これをどうやって適正なね、ものにしていくかというプロセスになるだろうというふうにずーーーっと言って来たんだけど、今分かってきたことは、適正なプロセスにするっていうのは、何か原理原則なきゃ、やりたいことがなきゃいけない、それがどうも無かったんじゃないかというふうなところまで疑われ始めている。
林 曾我さんが言ってた、撤回じゃなくて総崩れってのはそこですよね。
宮崎 そういうことです。
原口 だから、だから…
宮崎 ちょっと待って。藤原さんにお願いします。藤原さん、採点お願いします。
藤原 えーっと、(40点のパネルを出す)まあ40点が30点でも50点でも大して違いないんですけど、言ってることは全く同じで、また駄目だ、ということですね。これで3人目の総理大臣で…
宮崎 4人目とかっていう話も出始めている。
藤原 4人目になるのか、政権が代わるのか、次の与党が誰になるのか分からないような結果になるのか、これが一番結果として可能性が高いと私思ってるんですけど、政治の流動化が全く止まってない。で、外交からしますとね、野田政権に対する不信感が外国で高かったっていうことありません。それで言えば、菅政権に対する不信感も高かったってのは、これは嘘です。前から繰り返し言ってるんですけれども、嘘ですね。で、それはただ、信頼してるってことじゃなくて、日本が動揺したら困るからなんですよ。中国も含めてです。韓国、台湾、そしてアメリカ、さらに中国も含めて、日本の政治がコロコロコロコロ変わってくようじゃしょうがないから、今度こそ持ってくれっていう気持ちで見てるわけですね。で、私は自民党のファンとか民主党のファンとかいうことじゃなくて、何とかまともに安定した政権ができてもらいたいというふうに、これはずっと願ってきました。
宮崎 あのね。
藤原 ええ。
宮崎 藤原さんにずっと伺いたいことがあったんだけれど、私の理解する限りでは、あなたと色々な番組をやったりする限りでは、民主党政権が出来る前に、藤原さんは普天間問題に関してかなり楽観的だったと。
藤原 はい。
宮崎 ですよね。で、こんなに大問題になるというふうには、まあ、私も予想してなかったけど、藤原さん予想してなかったですよね。
藤原 予想しませんでしたし、なんと馬鹿なことをしたものかと思いますよ。まず第一に普天間問題は、そう簡単に動かないということを僕はずっと言ってきたんです。これは、現状の通りに解決できるということを言ったことは、これ、一回もない。というのは、沖縄の反応と、それと政府の方針の間の乖離が大きすぎるから。で、この状況がある限り、打開できないんですね。で、最初にこの問題で大きな失策をしたのは、実はアメリカ側でした。で、日本に新政権ができた。これは、何か社会党とか、アカがたくさん入ってる政権だ、大変なこうリアクションが激しかったわけで、で、結局ゲイツ国防相の日本訪問というものを押し切る事になりました。ものすごく速かった。で、この時に、これはもう大変な失策だったんですね。というのは、圧力をかけることによって、日本本土ではそこまでの反発はなかったけど、沖縄が寝ちゃったから。もう絶対にこのことじゃ動かないという状況を作っちゃったんですね。ただ、その後に、「トラスト・ミー」という信じられない発言も含めて(笑)鳩山政権の失策が重なって、で、しかも、期限を切って問題を解決すると言ったから、賛成派・反対派両方ともこの話でまあ対立するという構図を作っちゃった。で、普天間問題は実は現在もまだ解決が難しい状況ですし、鳩山政権が出来た時よりもっと難しい状況になってると思います。で、この状況はね、最初のゲイツ訪日の仕掛けが間違っていたとして、その後にオバマは少し引いてるんですね。日本に訪問した時に態度を変えてるんです。で、ここの時に筋書きを全部組みなおすべきだったんだけれども、その受け方を失敗します。で、そのおかげで傷を深くしちゃったんですね。で、今のところアメリカが普天間問題の解決を急ぐという状況でははっきり言ってないです。国防総省の中では、それはもちろん急ぎたい、予算問題がありますからね。しかし、大統領官邸の問題じゃないです。
宮崎 もう今は大統領選挙が一色になってますから、そういう課題として頭に上ってきてないんだろうと思うんだけど、でも、東アジア、アジア全体のアメリカの戦略って、急激にいますよね。
藤原 変わってますね、ええ。
宮崎 こういう時に乗じてこの問題を解決するチャンスじゃないの、日本にとっては?
藤原 えーと、そうでもないと思いますよ。というのはこれは自治体との関係が入ってくる問題だから。で、あの、この問題は、この場を借りて申し上げてしまえば、大変な反発が出てくる議論だと思いますが、そもそも沖縄の負担が非常に高いということが基礎にある話で…
宮崎 もちろん。
藤原 で、これに対して、社民党のようにですね、あるいは共産党のように、米軍基地を日本本土に置く必要はないんだっていう形になると、米軍は日本の防衛のために使うけれども、負担は一切しませんよということになる。これは全く動かない政策になる。で、出口として私は、日本の本土の基地を、これを、どの基地がということではなくて、日米共同利用にしていくというのが本来の道筋だというふうに思ってます。これは前から私の持論です。
宮崎 なるほど。
藤原 で、ただ、そのような選択をするという問題よりもね、野田政権に戻っちゃうけど、結果的には、鳩山、菅、野田と来て、野田政権を40パーと書いたのは、一月に大体10%下がっていくという政権だからっていうことですね、支持率がね。で、このままで行くと野田さんも持たないだろう、で、ということは、やっぱり日本と安定した関係は作ることができませんね、という状況がこれから続くと思います。
宮崎 国際的な評価というのはそういうふうになっていくと?
藤原 東日本震災よりも、むしろ政権の不安定のために日本が沈没している状況だと思います。
宮崎 日本のレピュテーションは下がっていくということになりますね。
藤原 レピュテーションというか、要するに、交渉の中に入れてもあんまり意味がないわけですね。
宮崎 ああ、じゃあもう、ジャパンパッシングがもっと…
藤原 パッシングと言ってもね、やはり大きな経済大国ですからね、ここが発信できないということは他の国にとっても大変困った問題なんですよね。
宮崎 それね、最後のこの番組のパートで話しますんで、よろしく。さて、ええと、大体おおまかな野田政権の評価というのが出てきたと思うんですが、いよいよじゃあ野田政権、100日の、3ヶ月あまり、100日の評は、何をやったのか、何をやらなければならなかったか、何ができなかったのかというのを議論して行きたいと思いますが、一旦ここでコマーシャルです。
♪CM
宮崎 東日本大震災、特に原発問題に関しては、冷温停止とか収束とかという言葉が政権首脳から出てきたんですけど、世の中の受け止め方というのは、あれは謂わば政治的…(続く)