宮崎哲弥大論争 8 ISD条項について答弁できなかった野田総理 |
先週後半から大風邪を引き込みまして、更新が滞っていました。ご訪問くださった皆様、申し訳ございませんでした。
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田村 あの、日本、ま、見方は色々あるでしょうけどね、日本はだからここまで被害に遭ったからこそ、その対策を知ってる、だからそのテクノロジーもあるんだと、だからその輸出しても、日本こそだからその原発の先進国としてテクノロジーをですね、輸出しなきゃいけない、輸出する資格があるんだって、こういう逆転の発想で今やってるわけですよ。
宮崎 やや、こう、納得の出来ない発想だなあ。
田村 しかし日本がやらなくてもですね、どうせどこかがやるに決まってるわけですね。特に、フランスなんかはもう大変な自分たちの何か国家プロジェクトで、大変な勢いで全て核燃料サイクルも再処理の末端まで、下北のあの再処理工場もその技術ですからね。だからそういう意味では原子力商戦っていうところで、結局日本がやらなくても誰かにやられちゃうということになりますね。だから国際的な取り決めで、もうとにかく原発は駄目だからもうやらないっていう一種のグローバルな取り決めでもない限り、それは無理でしょうね。だから、日本だけ輸出するなっていうのは…
宮崎 分かるんだけれど、これから日本が自然エネルギー、代替エネルギーを開発していくとすれば、こちらの方が福島の経験から見ても安全ですよというふうな形で、一種の脱原発を輸出するというような戦略というのもあり得るかもしれないと思うんですが。
原口 彼(?)に賛成だな。というのは、これご覧になれますか。総務省のこの、こればっかり使って悪いけど、NICTっていうものを持ってて、これサイバーアタックの今の状況です(とiPadを示す)。NICTERっていうのでサイバーアタックをビジュアル化したやつです。
(上記画像はNICT、独立行政法人情報通信研究機構のHPのページにあったものを使用しました。原口氏が番組中でiPadで示しているものと同一です。)
これが僕らの現実なんです。(一語程度聞き取り不能)原発サイバーアタックされたらどうなりますか?
宮崎 石油精製施設がサイバーアタックされた話がありました。
原口 で、今ね、原発はコストが安いって林さんは、今までの常識はそうだったけれども、今本当にそうかと。北欧で今作ってる原発はキャッチャー型の原発、つまりメルトスルーが起きても、それでもこんなふうにならない原発。今までのコストの何倍ですか? もうそのコストという面から見ても、安全保障という面から見ても、将来は続けられないという答えが世界で出てきてるんじゃないかと。
大塚 いやだからね、そういうキャッチャー型のまで作ると、おっしゃるように他のエネルギーの方が安いので、そっちに収斂させていくことはできますが、もしそこまでやらない原発をフランスとかがどんどん輸出するとすると、宮崎さんがおっしゃる方向に実現性を持たせるためには、自然エネルギーとか他のエネルギーを開発し…
宮崎 コストが、コストが安くないと。
大塚 かつ、安いものを日本が提供できるようになったら、ほっといても原発は無くなりますよね。だから、それをやんなきゃいけないんですよ。
宮崎 それに対して穀田さんがおっしゃったようにもっと国家予算を、今まで原発に使っていたものを振り向けるっていう政策転換はやらないの?
大塚 いや、それはやってかなきゃいけないですよ。
原口 それでも残るのは、寺島さんと僕はよく勉強会やってるけど、原発の技術の維持ってのは絶対残るんです。穀田さんの説だって10年は原発と付き合わなきゃいけないわけだから。
宮崎 しかも処理まで、使用済み核燃料の処理まで…
原口 何十年でしょ。
宮崎 処理を考えれば、技術と言うか…
原口 人員も含めて。
宮崎 そう、そういうことは確保していく必要性はあるけれども、それと原発を維持するっていう話とは直接結びつかないですよね。
穀田 ですから先ほど再稼動の問題についてもね、色んな意見があって、大体まだ三橋さんもね、これはいかがなものかって言ってるじゃないですか。
宮崎 推進派の三橋さんも。
穀田 推進派の三橋さんだって言ってるじゃないですか。再稼動でさえノーって言ってるのにね、原発輸出は結構、結構と。そらないでと。私はね、ちょっと今の政治でね、再稼動みんな不安に思ってる時にね、いくら先ほど田村さんがまあ、田村さんご存じないですけど、政府の言ってる、テクノロジーあるんだから大丈夫だってね、試験結果受けたからって、あれ、克服したわけじゃないんですよ。克服もしてないのにね、みんなでヨルダンへ行きましょう、行きましょうって手打ってると。そりゃないよとね。
宮崎 この福島第一原発事故と歴史的な経験を踏まえて、私はやっぱり日本は積極的に、原発輸出じゃなくて、脱原発を輸出していくという姿勢を取らないといけないと思ってるんですけどね。
田村 そこはね、もっとはっきり方針を海外に向かっても説明をすべきだと思いますね。私はどっちがいいとか悪いとかは特に判断しませんが、ただこの間やはり米軍関係者と、かなり上級の人ですけど、話をした時に、一番彼たちが日本の原子力に関心持ってるのはね、日本は原発輸出をこのままずっと続けるのかと、これがアメリカの最大の関心だと思います。
宮崎 ちょっと原発の話はここらへんにして、財政の話に進めていきたいと思います。ま、一応大まかなコンセンサスは取れたかなという気もします。ここで一旦コマーシャルに行きますが、コマーシャルの明けは財政の問題、特に増税の問題を中心に、あとTPPの問題も少し触れますが、そういう話をしていきます。
♪CM
字幕 復興増税 その内容は
社会保障は
消費増税
時期は
増税で
暮らしは
宮崎 はい、えー、このパートでは、増税問題というのを、まあ社会保障と税の一体改革、税制の抜本改革の問題を話し合いますけれども、その前にね、ちょっとね、原発の話が非常に盛り上がりすぎて、積み残した話がTPPなんですね。で、まあ、野田政権の成果とも言えるし、賛成派は成果と言うだろうし、反対派は野田政権の最大の失策だというふうに言うかもしれませんけど、TPPっていうのは大きな議論になった。国民的な議論になったというのは間違いないですね。で、TPPってそもそも何ですか?
飯田 もともとはですね、自由貿易または国際取引の環境って、WTOで全世界的に決めて行きましょうというルールだったはずなんですけれども、これですと、関係各国、国の数が大きすぎて何も決まらない。その中で二国間でEPA、FTAという形で二国間協定で自由貿易または国際取引のルールを決めていこうというのがまあ、しばらくの流れで、その中でやはり二国間だとさすがに少ないと、そうすると数カ国間でそういった経済連携の協定を結んでいくという動き、たとえば典型的なものはNAFTAですけれども、北米の自由貿易協定。で、こういった流れの中で、TPPは当初はですね、ニュージーランドであるとかチリであるとか、それほど大きな国参加しない中で始まったんですが、これにアメリカが、そして菅内閣の時に日本が参加を、ま、参加を、えー、ま、日本の場合決めたわけではないですけれども、参加に意欲を示したと。これによって、もしかしたら環太平洋地域全体での多国間協定が出来るかもしれない。それに日本が参加するのかしないのかで大きな議論になったわけなんですけれども、今までのたとえば日本って、すでに10数カ国とFTA、EPA協定結んでいますが、これまでのものと違うのはですね、当初関税に関しては基本的にゼロを前提にして議論をする、これが多分大きな波紋を呼びかけたんじゃないかと思うんですけれども、僕自身はまあ、先に言ってしまうと、TPPは賛成なんですけれども、それの出し方がですね、ちょっと菅内閣の時にあまりにも唐突だった。そして野田内閣に入っても、非常にまあ、中身も分からない。実際に国会答弁でずいぶんやり込められる中、中身分からないけれどもとりあえず賛成してくださいという形で出されてしまったので、まあ僕はここまで揉めてしまってるっていう印象なんですよ。
宮崎 うん。手続きが、国民に対する提示の仕方、手続きがまずかったということなんですけど、TPPっていうのは経済効果ってどのくらい考えられる?
飯田 しばしばですね、TPPの議論をする時に、輸出が増える、いや輸入は増えるとかって議論になるんですが、実は国際貿易協定って、別に輸出の量が増えるであるとか額が増えるというのがメリットではないんですね。国際間でより多くの取引が行われる、だから輸入がその結果、僕はTPPを結んだら輸入の方がより多く増えると思ってるんですけれども、それもまたメリットだと。海外から安価な商品が入ってくる。で、これ、何て言いますか、メディアとかですと、じゃあこれで牛丼はいくら安くなるんですかみたいな話が…
宮崎 おにぎりがいくら安くなるとかそういう話になってしまう。
飯田 実を言うと、それ以上にですね、原材料が安くなると、たとえば、まあ直接的なものとしては、食品加工業界、日本の食品加工業界はどうしても海外に出れない理由として、サトウキビと小麦が高い。で、そうしますと、食品加工業、やはり小麦大量に使いますので、日本国内を生産拠点にできないといった問題ですね。で、こういうまあ輸出輸入がひとつの問題。もうひとつがですね、実は材(財?)の貿易ではなくて、人の立地の問題なんです。たとえば、日本国内で人を雇うのか、それとももうシンガポールで人を雇うのかという問題になったときに、国際的な共通ルールというのの中に入ってるところに、やはり会社とか雇用を持ってこうとする。そうすると、輸出輸入ではなくて、立地点として東京ではなくてシンガポールが選ばれるようになってしまうと、輸出輸入なんかよりももっと大きな雇用の流出が起きるんじゃないかと。
宮崎 流出?
飯田 流出ですね、つまり現在日本で雇ってる企業もそれをやめて、日本での雇用を縮小してシンガポールに持っていく。
宮崎 じゃあ、日本の失業率は高くなっちゃうでしょ。
飯田 高くなるということですね。ですから、共通ルール、もしまあ、TPPが実効性ある形で発効すると、TPP参加国またはそれに準じる同じフォーマットで取引をしてるところに雇用が移されてしまうかもしれない。
宮崎 それは日本にとってはマイナスなんじゃないですか?
飯田 非常にマイナスだと。で、あ、あの…
宮崎 でも賛成されるんですか?
飯田 あ、あの、逆です。TPPが発効して日本が入っていない場合。
宮崎 いない場合にはそうなると。はあ。西岡さん、どうですか?
西岡 基本的に私もTPPに関しては賛成派です。で、おっしゃった通り、輸出入両方の影響があるわけなんですけれども、私の雑感としては、日本ってここまで成熟している国で所得水準が高い割には、非常に製造業のウェイトが高い国ですので、どうしても産業転換っていうことを考える時に一気に製造業から非製造業にシフトするってことはやはり限界があるんだと思います。その意味でそうしたFTAなりTPPっていう枠組みを通じる形で、製造業なり産業を保全する、育成することも含めて保全するってことはある程度必要なのかなというふうに考えてます。
宮崎 おふたりに伺いたいんだけどね、関税を10年間でゼロにする、原則ゼロにするという話だけれど、そうするとね、たとえば日本の企業が海外に生産拠点を作って、それを部品であれ、何かの部材であれ、あるいは完成品であれ、それを日本に輸入するということだと、関税ゼロになるわけですよね。それって雇用の流出にならないんですか?
飯田 実際日本の場合は、そういう形で輸入してるのと輸出してるのどちらが多いかといったら、まだやっぱり輸出してる方が多い国なんですね。で、それであれば、えー、ま、国内の企業、国内に産業立地をして日本から輸出していくっていう形にする、それを目指すってのはひとつ解決策っていうかまあ、雇用を保つための方法だと思うんですよ。で、何よりも、日本は製造業の比率が高いので産業転換が必要ですというふうにおっしゃられたんですけれども、ま、場合によっては製造業が日本で生き残るってことも十分考えられると思うんですね。もっとハイエンドなもの、または製造の段階で言うと、もっと技術水準が高いところであれば、十分に日本はまだ製造業でやれるんじゃないかと。で…
宮崎 でもね、農業に関してもそういう話、同様の話が出てくるんだけど、そんなにエコノミストや経済学者が考えるほどうまくいくのか。三橋さん、どう思う?
三橋 その、ま、製造業はね、分かるんですけども、農業は、土地は持っていけないんですよ、外国に。で、資本の移動が自由化されているとは言え、確かに工場は外国に出て行くあるいは入ってくるというのができますけども、土地は無理ですよということで、特に農業の中、さらに農業の中でも穀物とかコメとかですね、そういうものと、嗜好品である果物とか贅沢品を一緒に考えていいのかとか、色々言いたいことはあるんですけれども、私はとにかくTPPに今ふたつの点で反対です。自由貿易に反対してるわけじゃないですよ。一つ目はデフレであること。で、大体今飯田さんおっしゃったように、今日本から工場が外に出てってる。これは別にTPPに入らないからじゃなくて、円高でデフレだからですよね。だからまずデフレを止めましょうと。そして、実質金利を下げて円安にすれば、日本の国内で製造するメリットも出てきます。そのためにはデフレ対策しなければなりませんけれども、TPPは明らかにデフレを促進しますよね。国内の物価を押し下げるという形で、これはまず反対であると。もうひとつはですね、自由貿易協定、たとえば私はアメリカと日本がFTA結ぶっていうんだったら反対しません、しませんけども、今回のTPPはあまりにも質が悪い。いつもこの図使ってるんですけど、項目がですね、24もあるわけですね。
で、政府の資料だと、ここの「市場アクセス(工業)」と「繊維」と「農業」が、これが一緒になってまして、21になってるんですけど、あとこれ(「主席交渉官協議」)が省かれてるんですけどね、日本のマスコミって、工業の話と農業の話しかしてませんでしたけど、他にこんなにあるわけですよ。で、たとえばその、サービス、クロスボーダーサービス、国境を越えたサービスとかというのは、これははっきり言うと全部のサービスが入りますよと。で、さらにその中には医療もありますと。あるいは投資とかですね、普通の貿易協定では入ってこないようなものも入ってきますと。で、さらに、投資に絡めて、ISDというですね、私は主権侵害条項だと思ってるんですが、そういうのも先進国同士で何で結ぶの?っていうのも入ってきてるということで…
宮崎 その先進国同士ってのはとても重要なポイントで…
三橋 そうですね。
宮崎 今ね、日本では色々な経済協定とか経済連携協定とかを結んでますが、ほとんどにISD条項入っている。入ってるんだけど、これはどちらかと言うと、どちらかと言うとというか、開発途上国、つまり司法が発達していない開発途上国が相手にした場合に日本の投資家や企業というものを守る必要があるから、そういう意味で入ってるわけですよね。対アメリカのものってのはひとつもないよね、現状で。
三橋 はい。
宮崎 で、果たして先進国同士でそういうことが必要なのか。むしろたとえばNAFTAの経験を見てみれば、カナダやメキシコがISD条項でかなりむちゃくちゃな提訴、賠償請求が行われたのを見ると、これはやっぱり厳しい認識で臨む、少なくとも交渉するとしても厳しい認識で臨まなければいけないのに、林さんと佐藤ゆかりさんが国会で質問したように、野田首相はISD条項に関して十分な認識を持っていらっしゃらなかった。
林 私はね、本当にあれびっくりしたんですね。ちょうど目の前で答弁されてて、何をおっしゃってるのか一瞬分からなくて(笑)、ISDのことを聞くっていうことはあらかじめお伝えしてあるわけです。それなのに総理が、ちょっと私は寡聞にして知らないと言っちゃったんで、みんなもう予算委員会じゅうズッコケたような感じでしたけどね。
宮崎 ちなみにISD条項というのは、ご存じない方のために言っておくと、貿易協定を結んだ国の間で、たとえば日本が、日本に進出した企業や日本に投資した投資家に対して、それに不利益をもたらすような政策や立法措置を行なった場合、それを国際機関に対して提訴することが、賠償請求をすることができるという条項ですね。
林 これ、さっきの話のようにね、シンガポールとうち、それからたとえばメキシコとうち、あります。だけども、今の段階でそれぞれどれぐらいの人が投資をしてるかって見ると、アメリカが圧倒的に日本に対する投資、確か30から40%ですから。しかもロイヤーがあれだけたくさんいてね、ワシントンは、まあ桜内さんも一緒に行ったけども、石を投げればロイヤーに当たるって言うぐらい、もう探してるわけです。
宮崎 ネタを探しているという意味。
林 ネタを探してるんですね。いっぱいいます。でも多勢に無勢でそういうことになり得る。
宮崎 しかもこれはね、やや陰謀論的になるんだけれども、その仲裁機関というのはやっぱりアメリカ、世銀の機関なのでアメリカ中心に出来ているということも懸念材料として言われているんだけど。田村さん、どうですか?(続く)