2月28日 福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)記者会見 2 |
動画:http://www.youtube.com/watch?v=gQ0KPqw6CMw
北澤 (承前)注ぐことでありますけれども、そういう重要な作業というのをまあ彼らは続けて、結果的には、あの、その後は収拾方向に向かったということが言えるかと思います。
まあ、その意味で申しますと、その、フクシマ50が残留したということは、ある意味では、菅首相の実は最大の功績であったかもしれないというふうにも我々は思うところもあるわけであります。
しかしながら、今回の危機に対応するに当たりまして、官邸主導による非常に目立った現場への過剰介入とでも言いますか、そういう意味での介入があったわけでありますけれども、そのほとんどは、私たちの検証では、あまり評価することができなかったというようなことが、ここにも書かれているかと思います。それで、官邸の過剰介入がなぜ起こったかということに関しましては、あの、原子力安全・保安院や、原子力安全委員会の存在感が官邸において非常に希薄で、情報が伝わってこなくて、官邸の中の情報流通が疎なために疑心暗鬼状態が起こっていたというようなことが、この報告書に書かれております。
それで、今回の事故による放射能被害を大きくした直接的な原因というのは、何と言いましても、過酷事故への備えを怠った東電と、それから、監督をすべき立場にあった原子力安全・保安院など、国の責任感の欠如、そして組織的な怠慢にあったということがこの報告書で述べられております。
スリーマイルアイランドとか、チェルノブイリ、あるいは9.11のテロ事件を経験しまして、欧米の国々は、安全への対策を種々講じてきたわけでありますが、日本では残念ながらそれが為されて来ませんでした。細かい点を挙げるならば、その水位計などのセンサーから始まって、ベントのフィルターがきちんとついていたかどうかとかですね、あるいは沿革操作用のベントのハンドルをつけたかどうか、そういったことも含めまして、その危機の上での改善、そして、組織の上でも、アメリカからも、日本の組織はあまりうまくないのではないかといったような勧告もございましたが、東電や国はそれらの海外からのサジェスチョンを無視してきたというようなことが起こっていたことも分かりました。
そして、私たちの調査では、その原因として大きいのは、安全神話による自縄自縛状態が発生したということでありました。そのことが、その、ま、中身としましては、あん、安全神話による自縄自縛状態というのは、100%安全なものになぜこれ以上安全策が必要なのかという、そういう論理であります。それで、このことが、日本の原子力安全のこれまでの努力を妨げていたというふうに言うことができるかと思います。そのために安全規制が完全に日本ではガラパゴス化してしまっていた。他の国が改善するのに、日本が取り残されるというようなことがずっと起こってきたということが言えるかと思います。
メーカーと電力会社の間でも、安全性向上といったような言葉を使ってはならないという形でのですね、タブーな、そういう言葉という、そういう範疇に入っていたということであります。また、安全規制にこれまで関わってこられた政府の高官たちも、この自縄自縛状態に陥っていて、ひとりひとりが、私も問題であるとは思っていた、しかしながら、自分ひとりが何か言い出してもどうしようもない、みんなが空気を読みあって、惰性でそのまま続いていたというような、そういう、あの、供述をしておられるということがあるかと思います。
そのような意味で、その空気を読み会うという、そういう惰性で動く状態を続けるような日本の風潮というのが今後も続けるようであれば、原子力の安全性というものは望むべくもないという、その意味で、非常に大きなこれは警告を発する、そういう調査ではないかというふうに、あの、思います。
それで、今回はあの、事故の危機対応が非常に日本ではできていないということが分かったわけでありますけれども、これに関しましては、今後色々な、あの、ご意見が出されるかと思います。
それから、更に、SPEEDIとか、それから、放射能の分布状態、それから、最悪なシナリオなどの検討された情報、こういったものが全て国民がパニックに陥るかもしれないというような、そういう理由に基づいてですね、情報が隠匿され、それが、後になってぽろぽろと小出しで出されるというような、そういうことが起こったために、国民の政府に対する不信感というのが非常に増幅されたような面があります。その意味で、あの、この報告書の中にも色々な、こう、隠匿された情報といったような記述があちこちに出てくるかと思いますけれども、こういう危機に陥った時に、情報をどのように国民に伝えるのかということは、これからの日本にとって非常に大きな問題であるというふうに、あの、感じるところであります。
今回の事故の対応は、まあ、官邸も現場も、それぞれに、泥縄的な危機管理をせざるを得なかったわけでありますけれども、にも関わらず、まあ関連の人たちは、必死になって現場で戦っていたということも確かでございまして、その意味で、あの、評価しなければならないこともたくさんあるわけでありますけれども、しかしながら、その努力のほとんどは、あまり有効な努力ではなかったと現在になってみれば言わざるを得ません。その意味で、あの、最悪の事態を迎えずに済んだということは、まあ、不幸な事件ではありましたけれども、その中で、最悪の日を迎えずに済んでいたということは日本にとっては非常にラッキーなことであったと言わざるを得ない面があります。
しかしながら、こんなラッキーな状態というのが今後も続くということは、とても保証できないわけでありまして、これから私たちとしては、日本の将来の安全性に向けて、これを、から、学んでいかなければならないわけでありますけれども、その一助として本調査が是非役立ってほしいと願っているものであります。
以上でございます。
川村 ありがとうございました。それでは次に、あの、遠藤委員の方から、まあ、今回の検証において他にも浮かび上がった課題や教訓についてもご指摘いただければと思います。よろしくお願いします。
遠藤 遠藤でございます。私から、あの、今回の事故に、あの、事故の処理に当たっての、いわゆるこの国際的な側面と言うか、対外的な側面に焦点を当てて、二、三、私の気づきの点を申し上げたいと思います。
で、あの、まず最初に、これはあの、委員長も言われた通りのことなんですけれども、この日本のですね、あの、原子力の平和利用、つまり、安全、あるいは核不拡散、あるいは核テロ対策つまり核セキュリティ、そういった面に対する態度というのがどうもですね、あの、ガラパゴス、ガラパゴス化しているんではないかということを非常に、あの、感じたわけでございます。
つまりその、人の言うことをあまり聞かない。つまり、自分がやってることはもう一番いいんだと、こういうことですね。で、このこと自身は、実は私はあの、かつてウィーンのIAEAに関係したことがあるもの、ある時にでもですね、当時から、日本と、それから当時のソ連ですね、この二カ国っていうのは人の言うことを聞かない、態度が傲慢であると、まあ、こういうことを囁かれていたわけです。つまりあの、日本ではですね、安全についてはたとえば日本はもう優等生だということが枕詞のように言われてたわけなんですけれども、私は当時からですね、自分が優等生、優等生なんて言う人間に限ってですね、優等生なんかいやしないんだと、優等生ってのは人が言ってくれるもんだと、こういうことであって、思ってたわけですけど、まさにあの、日本のその態度というのはですね、一カ国主義という態度、これがあの、今回はしなくもこのような不幸な形で現れたということ、つまりあの、外国からの警告、あるいは、助言等々に対して、あまり、あの、耳を貸さないと、こういうことが表れたということが致します。
それから、第二がですね、あの、あの、最近のあの昨今の、原子力を巡っての一部非常に大きな関心である、核セキュリティ、核テロですね、について、今回のあの福島事故を通じて、この日本の弱点というか、欠点がはしなくも露呈してたということが指摘できるんではないかと思うわけです。
たとえばですね、あの、日本の原子力、設備、施設でどういうとこが弱いかというとですね、結局今回の場合も、電気系統、冷却装置等々で非常に弱点が現れたわけで、テロリストにしてみれば、最も狙いやすいところであるわけなんです。それから、あの、その、事故の処理の過程において、えー、インサイダー問題、つまりあの、自分、雇用者、被雇用者ですね、あの、労働者等々の実態がはっきりしないままに終わってしまったと、全部と言いません、あの、数十人の労働者については、労働者の実態がはっきりつかめないままに終わってしまったと。こういったことも、これはあの、まさに、あの、核テロにとっては、非常にあの、何ていうかあの、狙いやすい点であるわけで、ま、そういうようなところが現れてきたと。
それから、もうひとつ本件について申しますとですね、あの、実はあの、アメリカから、あの、例のあの、9.11以降、アメリカのNRC、原子力規制委員会は、アメリカの原子力に対…事業者に対してですね、こういうことを注意しろと、あの、テロに遭って電源が切れた場合、つまり、ステーションブラックアウトが起こったような場合、あるいはですね、あの、電気系統がやられた時、あるいは冷却系等がやられる時、ま、そういうことに特に注意しなくちゃいけないということを、アメリカの原子力業者に言うとともに、日本にもそれを教えてくれたわけです。
で、日本もこういうことに気をつけたらいいぞということを、アメリカから指摘を受けたわけですけれども、日本はそういった指摘について、どっかの役所に入ってしまって、誰にも、あの、知られずに、全く、あの、それがあの、注意されないままに終わってしまったと。で、現にこのステーションブラックアウト、それから冷却装置の、あの、あの、それからの、電気系統ですね、こんなの全部が起こっているわけです。
だから、もしアメリカの言ってたことを、言って来たこ、言ったことを少しでも聞いてりゃ、少しでもよくなったんじゃないかというふうに私は今、残念に、非常に残念に思うわけで、これなんかは人の言うことを聞かないという日本の原子力の体質ではなかったかと思うわけです。
それから、三番目に、えー、情報の発信、これあの、対外情報の発信ですけども、これは以前に比べてば相当よくなってきたと思います。以前というのは、たとえば、1999年のJCOの事故の時には、あの、相当に酷かったわけですけども、それに比べればかなり改善されたとは思うんですけれども、しかしながら、依然として、あの、まだまだであるし、特に、4月4日の低レベルではあったわけですけども、汚染水の海洋投棄については、国際関係なんて全く、あの、考慮もしなかったというような、その、国際的な配慮を含めた情報発信というものについて、まだまだ、あの、改善すべきところがあるようなふうに思います。
それから、最後に、あの、日米関係なんですけれども、最初はあの、この多くの国から、まあ、大変なこと支援をいただいたわけですけども、特にアメリカからは非常に大きな支援を得たわけですが、どうも最初はあの、必ずしも日米関係、うまく噛み合わずに、ギクシャクしちゃったことがあったわけですけども、ある時点、つまり、4号機のプールが、あの、水が無くなった、無くならない云々のプールの事故のあたりから、日米関係は非常にうまく進むようになり、アメリカからの協力が得られた、非常に実質的な協力が得られたわけであって、これはあの、非常にあの、私自身、あの、評価をしております。
で、あの、いずれにしましてもですね、あの、私はあの、冒頭に申し上げたように、日本のこのこういった姿勢ですね、原子力の安全、あるいは核不拡散、あるいは核テロに対する規制、あの、姿勢というものが、どうももう一カ国主義じゃもうやれないようなグローバルな社会になってるわけですし、もう少し人の言うことに耳を傾けですね(続く)